暗殺術
クイーンの出現条件を話しながら次の巣を探すことにした。
以前出現した時は僕達がビーたくさんのビーと戦っている間にハニーベアが巣を壊してハチミツを食べ始めたんだ。
それでHPを回復し始めたから、とりあえずビー達が増えないように先に巣を壊したんだよね。
そうしたらクイーンパラライビーが来たんだ。
でも、掲示板にはハニーベアがいない時に巣を壊してもクイーンパラライビーが来たって書き込みがある。
確率だったら数をこなすしかないんだけど、それでも色々試してみたい。
例えば壊す時に燃やしたり凍らせたりするとか。
「ねぇ爺」
「ん?どうしたの?」
「ハニーベアって攻撃したら絶対親のワイルドベアを呼ぼうとするんだよね?」
「うん。中断させることはできるけど、基本的に叫んで呼ぼうとするよ。親が来るまでに倒して逃げれば襲われることもないね」
「うーん。それってビーも同じなんじゃない?」
「親を呼ぶってところ?」
「うん。それ」
なるほど。
巣が壊れそうなことを察知してクイーンパラライビーが来たんじゃなくて、ビー達が呼びに行ったから来たってことかな。
確かに自分たちの家が壊されそうだと言われたなら向かって来てもおかしくない。
だとしたらさっきは周囲のビーを全て倒してから巣を壊したので、誰もクイーンパラライビーを呼びに行けなかったってことになる。
つまりビーがいる時に巣を攻撃しないとダメで、いつ報告に行くかわからないからある程度残した状態で戦う必要がある。
確かに前の時は巣を壊した時にパラライビーは残っていたから、可能性としては0じゃないと思う。
問題はどれだけ残す必要があるのかだ。
数が多いと麻痺する確率が上がるし、武器を持ったビー達の攻撃は結構ダメージを受ける。
麻痺した時に集中攻撃を受けたら倒されると思う。
「とりあえず一度やってみましょう!」
「そうですね。ダメだったら別のことを試してみればいいと思います」
「バブルシャワーをたくさん使えばいいんじゃないでしょうか?」
「ミヤビちゃんのいう通りだね!私達の周りを泡で囲めば向こうは攻撃をためらうはず!触れたら飛べなくなるからね!」
「わかりました。次に巣を見つけた時は泡で牽制しつつ巣を壊しましょう。ビー達は1/3いればいいんじゃないでしょうか?」
「そうですね。それだけいれば十分だと思います」
セインの指摘を元に僕の考えを伝えたら試すことになった。
残すビーの数も1/3だったらなんとかなると思う。
バブルシャワーもあるし。
さらに話し合って、武器持ちのビーから倒すことになった。
シャボン玉はビーの体に付けば動きを阻害できるけど、武器で攻撃されると簡単に割られるからね。
不意打ちで泡をかけれたら簡単なんだけど、時間をかけると対処されてしまう。
「ハニーベアです」
巣の壊し方が決まったので早く実践したかったけど、見つけたのはハニーベアだった。
サイズはさっきと同じか少し大きいぐらいで、近くにワイルドベアはいなかった。
周囲の匂いを嗅ぎながら進んでいるので蜂の巣を探しているのかもしれないから、尾行すれば巣までたどり着くかもしれないけど、その場合はビー達に攻撃されてワイルドベアを呼ばれるかもしれない。
そうなるとまたワイルドベアvsクイーンパラライビーになってしまう。
それは面倒なのでワイルドベアを呼ばれないように倒した方がいいと思う。
放置して巣を壊しているところに出て来られるのも嫌だし。
「今回もワイルドベアを呼ばれないようにサクッと倒しましょう。放置して混戦になると面倒です」
「では、私に任せてください。やってみたいこともあるので1人でいいです」
「僕はいいですよ」
他のみんなもいいみたいで、しのぶさんに頷き返した。
それを確認したしのぶさんが飛び上がって木に登り、枝から枝へ飛び移ってハニーベアに近づいて行く。
やりたいことってなんだろう。
今度は自分の意思で口に泡を入れようとしているのかもしれない。
そのために口を開かせる技を試すとか。
「はにぃ……」
ハニーベアはしのぶさんがワザと鳴らした葉の擦れる音を聞いてキョロキョロしている。
そのうちにハニーベアの背後の木に移動したしのぶさん。
枝を蹴って勢いよく落下して、左腕でハニーベアの顔を抱えるように抱きつき、左手で口をしっかりと掴む。
そして無理矢理上を向かせて首に忍刀を突き立てて横に引く。
刺した時にクリティカルエフェクトが出て、横に動かした時にも出た。
ハニーベアはいきなりのことで対処できず、口を押さえられているので声も出せない。
暴れたらしのぶさんにダメージを与えられるはずだけど、少し手足をバタつかせただけで抵抗が少ない。
2度のクリティカルを受けてHPが2割りまで減ったハニーベアの背中に忍刀突き刺してトドメを刺した。
これもクリティカルエフェクトが出たので、全ての攻撃が急所に当たったんだと思う。
想像していた戦い方じゃなかったけど、忍者っぽくていいんじゃないかな。
「しのぶさんすごーい!」
「格好良かったです!」
「まさに忍者ですね」
他のみんなもしのぶさんの戦い方を絶賛している。
ミヤビちゃんに至ってはシロツキに乗っている時に相手の頭上から飛び降りて相手に槍を突き刺してみようかと考え始めた。
「ありがとうございます。実は暗殺術というスキルを昨日の内に取ったんです。さっきのは首刈りという技です」
「暗殺術……」
「はい。職業クエストを担当してくれている先輩忍者から投擲スキルを取らないならと勧められたんです。別の忍者が投擲に特化しているので、それならと取りました」
昨日というと岬の守護者を倒した後かな。
しのぶさんがどんどん近接特化になってるけど、別の忍者が投擲特化ということでバランスが取れているのかな。
ミヤビちゃんが竜騎士団として行動することがあるみたいに、忍者だけで行動することがあるかもしれないし、自分だけの特色があるのはいいと思う。
「これからは暗殺術のスキルも戦闘に使っていくんですね?」
「はい。まぁ、さっきのビーと戦っている時も少し使っていましたけどね」
「そうなんですか?」
「急所突きというクリティカルが発生しやすくなるスキルです。攻撃の軌道が急所に向かって吸い寄せられるんです」
「なるほど。一撃で倒す技もあるんですか?」
「スキルレベルが上がれば習得できるそうです」
暗殺なんだからあるよね。
他にも毒や麻痺などの状態異常系の成功率が上がったり、逆に毒物に敏感になる技もあるらしい。
食事に仕込まれた毒を見つけるのに役立つそうだ。
「それでは巣を探しましょう」
話がひと段落したので巣の探索に戻る。
ハニーベアが匂いを嗅ぎながら進んでいた方向に進んだけど、すぐに巣が見つかるということはなかった。
それどころか小さなハニーベアとそれを見守るワイルドベアの親子に遭遇した。
ハニーベアをしのぶさんに任せてもう一頭ワイルドベアを呼ばせないように倒してもらい、残りのメンバーでワイルドベアを攻撃した。
ワイルドベアがそこまで大柄ではないことと、防具を作る素材のために何度か戦ったこともあって余裕を持って戦える。
ある程度糸を張り巡らせたうららさんが少し近づいてバブルシャワーを使うぐらいには慣れてきている。
シャボン玉がワイルドベアの体に付いても、特に何も反応せずそのまま攻撃を続けてきたけど、足元に放つと少しバランスを崩した。
それでも転けることはなかく、むしろ滑ることを利用してこっちに近づいてくることもあった。
ハニーベアを倒したしのぶさんが合流して、うららさんが張った糸を使って高速で飛び回りながらクリティカルを連発してくれたおかげで、すぐに倒すことができた。
セインが属性付与すると更にダメージが増えたせいで、ワイルドベアが弱くなったんじゃないかと思うほどだった。
調子に乗ってしまうとワイルドベアに倒されるかもしれないから気を引き締めないと。
毎回急所突きを使用していれば消費MPが多くなります。
また、ある程度攻撃の軌道が急所に近くないと軌道修正されずただの攻撃になります。




