目や口に入るとすごい
214話「新コートと加工できない鱗」のコートについた特性を『貫通耐性(小)』から『HP上昇(小)』に変更しています。
貫通耐性はクイーンの特性でした。
申し訳ありません。
バブルシャワーの効果は凄かった。
パラライビーだと体に付着させれば飛べなくなるし、走ってくるステップボアの足元に巻けば転ぶ。
雑草魂にかけると慌てて逃げていき、痺れキノコは胞子が出せなくなってただのキノコになった。
泡自体にダメージはないんだけどね。
しかもこの泡は僕達が触れても特に影響がないので、無数のシャボン玉の中で戦うこともできる。
さすがに目の前に浮かばれると邪魔だけどね。
あと、戦闘中に僕の口に入ったんだけどほんのり甘かった。
時間が経っても何も起きないから、口に入っても問題ないものなんだと思う。
それをみんなに伝えると恐る恐る漂っている泡を口にした。
結果、誰が出しても控えめの綿菓子のような、砂糖菓子を食べた後の余韻のような甘さだった。
これで空腹が満たされるかはわからないけど、さすがにないよね。
できたらMPが続く限り満腹のまま戦えることになるし。
あと、目に入っても特に何もなかった。
一時的に遠くが見えるようになるといった効果を求めていたわけじゃないけど、口に入れて楽しめたから何か起きるんじゃないかと期待してしまった。
そう思っていたんだけど……。
「え?!爺どうしたの?!」
「え?何かあった?」
「目がすごいキラキラしてるんだけど!」
「え?!」
どうやら見た目が変わったらしい。
セインとミヤビちゃんにもやってもらったんだけど、目の中に星があるんじゃないかと思うほどキラキラしていた。
しのぶさんがやると、唯一見えている目の存在感が増した。
しかも、その目のままいろいろとポーズを取るので、みんなで笑ってしまった。
「なかなか変わったスキルですね」
「そうですね。まさか口に入れても目に入れても大丈夫な上に楽しめるとは思っていませんでした」
しのぶさんがキラキラした目で同意してきた。
これの効果は長くて、一度この状態になると3分ほど続いてしまう。
そのせいでしのぶさんの目を見れなくなってしまった。
ミヤビちゃんとセインは大丈夫なんだけど、しのぶさんとうららさんはダメだ。
しのぶさんは存在感が原因だけど、うららさんは違和感が凄すぎてまともに見れない。
似合っていない仮装をしたような違和感があって、少し怖く感じるくらいだ。
ふんわりとした雰囲気の人には似合わないよ。
バブルシャワーは一通り試したので、とりあえずハニーベアが出現する所までは使わずに進むことになった。
普通に戦っても勝てる相手に、わざわざMPを消費する必要はないからね。
モンスターが変われば試すけど。
ステップボアは足元に撒かれた泡で転んだけど、体に付着させても効果はなかった。
これは、体が大きい上に体に付着しても動きを阻害しないからだと思う。
動きを阻害できるのは飛んでいるモンスターや体が小さかったり軽いモンスターが対象みたいなので、ハニーベアにも効果は無いと思う。
なので、ワイルドベアも阻害することはできないだろうけど、目の前にはなって目眩しに使ったり、足元に撒いて滑るのを狙うだけだ。
その点クイーンパラライビーは、羽を狙うことに決まった。
これは周囲を守るパラライスピアビー達も同じで、必要な量は変わりそうだけど効果があると思う。
バブルシャワーの使い方について話をしながらステップボアやパラライビーを倒す。
途中でバブルウォールだとどうなるか気になったので、突進してきたステップボアに対して使ってみた。
手のひらからシャボン玉ではなくモコモコとした泡が放たれ、地面に当たった瞬間一気に増えて白い壁になる。
そこにステップボアが突っ込んできたんだけど、滑ることなく壁を壊して泡をぶちまけた。
慌てて避けた後確認してみると、ステップボアの体に泡はほとんど付いていなくて、わずかに残っていた泡は滑るように地面に落ちて消えた。
同じことをパラライビーにもやってみたんだど、少し速度と飛んでいる高さが下がったぐらいですぐに復帰した。
これの効果も個体差があるようだ。
触ってみるとモコモコしているわりにはサラッとしていて、少し手を傾けただけで滑り落ちていく。
念のため口に含んだり目に当ててみたんだけど、こっちの効果はバブルシャワーと同じだった。
急遽バブルウォールでできることを探すことにして色々試してみた。
すると、モンスターとの距離が空いている時に使うと、バブルウォールを避けるように移動することがわかった。
突進してくるステップボアも横に避けるように飛び退いたので、相手の進路を変えるのに使えそうだ。
この使い方をすればモンスターの行動範囲を制限できそうなので、余裕があったら練習することになった。
バブルウォールは手のひらから出すので1人2枚まで作れるんだけど、放った方向を塞ぐように壁になる。
なので、L字にして道を制限するには移動して使うか、2人で協力するしかない。
他にも全員で同じ場所に使ったらすごく分厚くて高いバブルウォールができたけど、物理攻撃に弱いのは変わらなかった。
ミヤビちゃんが槍を一振りすると簡単に散ってしまったからね。
その光景は結構見応えがあったから、森じゃない開けた場所でもう一度見たいな。
「ハニーベアがいます。手に付いたハチミツを舐めているので隙だらけですね」
バブルウォールの練習がひと段落したので、ハニーベアが出てくるところまで進むとすぐに遭遇した。
そのハニーベアは少し大きなぬいぐるみサイズで、手に付いたハチミツを舐めているところだった。
もしかしたら近くに蜂の巣があるのかもしれないけど、ハニーベアの素材も集めておきたいので探索を後にして、できるかえワイルドベアを呼ばせないように戦うことになった。
「私が行きます!」
「援護します!」
ミヤビちゃんが槍を構えて走り出し、それしのぶさんが追った。
ハニーベアはハチミツを舐めるのに必死で気付かず、ミヤビちゃんの槍をもろに受けてしまう。
「はにぃ?!」
「呼ばれる前に!バブルシャワー!」
「はぼぼぼぼぼぼぼ?!」
ミヤビちゃんが吹っ飛ばしたハニーベアがワイルドベアを呼ぼうと口を開いた瞬間、吹っ飛んだのを追いかけたしのぶさんがバブルシャワーを使った。
親指と人差し指で輪を作り、残りの指を握った状態で使ったバブルシャワーは泡じゃなくて液体で出た。
勢いがあるわけじゃないけど花に水を巻くときのジョウロのように継続して出ている。
それが鳴く寸前の口に入ったのでハニーベアは鳴くことができなくなり、それどころか口に入った液体が泡になって出てきた。
驚き戸惑っているうちにハニーベアを倒し、ワイルドベアが来ないか警戒したけど、近くに寄ってくるモンスターはいないようだ。
それにしても、ワイルドベアを呼ばせないためとはいえ、なかなか思い切ったことをするね。
「まさかあんなことになるとは思ってませんでした……」
「どうするつもりだったんですか?」
「目の前が泡で包まれたら叫ぶのをやめると思ったの使ったんですけど、力が入りすぎていたみたいで、手を握ってしまったんです」
「そうなんですか」
力を入れすぎて予想外のことなったらしく、しのぶさんが肩を落としていた。
相手がハニーベアだったから酷い絵になったけど、これがワイルドベアとかだったら使える手だね。
積極的にやりたいかと言われたら別だし、僕の場合は接近することが少ない。
それでもモンスターが迫ってきた時には使えるかもしれない。
上手くできなくてやられてしまいそうだけど。
「バブルシャワー!うわっ!これすごく滑る!」
「ぶぶぶぶぶ……ぷはっ」
「ミヤビちゃん……口に入れたのね……」
「うん!甘かったよお姉ちゃん!」
早速みんなで色々試し始めた。
ミヤビちゃんが槍の柄を握っていた時は普通に泡が出ていたから、何も持っていない状態で手を握ると液体になるようだ。
セインは地面に撒いた液体を踏んで滑り具合を確かめ、ミヤビちゃんは……口から泡を吹いていた。
ハニーベアと同じ状態だね。
うららさんはそれを困ったようにみているけど、ミヤビちゃんは楽しそうだからいいんじゃないかな。
しのぶさんもみんなの様子を見て元気が出たようだしね。
シャボン玉が出せるならシャボン液も出せます。




