シャボン玉は意外と戦闘向き?
騎士人形とシロツキ達がブラウンラビットを倒してくれるので、セインとミヤビちゃんがシャボン玉を撒き散らしながら街へと進む。
使ってみてわかったんだけど、ミヤビちゃんは泡のスキルに向いていなかった。
気泡と水泡は指先から出せるので盾と槍を持っていても問題なく使えた。
だけど、バブルシャワーとバブルウォールとウォッシュは手のひらを使いたい方向に向けないと使えなかった。
なので、槍を持った状態でバブルシャワーを使うと、持ち手の部分から前後に勢いよく泡が飛び出した。
バブルウォールだと槍を包み込むように泡が出るし、ウォッシュは槍が綺麗になっただけだ。
まぁウォッシュはありかもしれないけど……。
バブルウォールは魔法の威力を削ることができるから使えるかと思ったけど、ミヤビちゃんの盾は魔法を跳ね返すから使う必要はない。
バブルシャワーを鍔迫り合いしている時に使うぐらいしか思いつかなかったんだけど、結局使う時は槍を一旦地面に刺してから使うことになった。
つまり、この3つはほとんど使わないということだ。
でも、気泡と水泡は指先から出るので、盾と槍を持っていても緊急時に使える。
そのおかげでミヤビちゃんにとって不要なスキルにはならなかった。
しのぶさんは戦闘時に片手が空いているので積極的に使うことになった。
セインとうららさんは後方にいるため基本的にはバブルウォールを使うことになったけど、モンスターが近づいて来たらバブルシャワーで地面を滑りやすくするらしい。
それは僕も同じなので、前衛で使うとしたら腕を作って能力入力を使う必要がある。
あとは、泡に繰り糸が使えたんだけど、気泡か水泡で包んでから泡ごとどこかへぶつけるのに使えるくらいかな。
気泡だったら風船、水泡だったらお祭りのヨーヨーみたいになった。
うららさんがやると針のせいで泡が割れたので、今のところは僕だけが使えるんだけど、使い道はあるのかな……。
「いいクエストがあったら全員で受けましょう」
「そうですね」
町に戻ったので冒険者ギルドへ向かい、入り口で一旦別れた。
セインとミヤビちゃんはシャボン玉でMPを使いすぎたのか魔力水に直行して、しのぶさんはアイテムを預けに窓口へ向かった。
僕も後で魔力水を飲むつもりだけど、まずはうららさんと手分けしてクエストを見ることにした。
僕達は工房にアイテムボックスがあるから、冒険者ギルドで預ける必要はないし、魔力水はすぐに飲めるからね。
「オキナさん。これを見てください」
「どうしました?」
いつもあるステップボアやパラライビーの討伐や、キノコや木の実の採集クエストを見ていたらうららさんに呼ばれた。
うららさんが指差していたクエストはハニーベアの素材集めと痺れハチミツの納品だった。
さすがにワイルドベア系のクエストは増えてないけど、これがあるだけでも全然違う。
モンスターが強くなっている分報酬も増えているし、痺れハチミツに関しては納品した個数に対して報酬が出るものなので全員で受けられる。
ハニーベアに関しては1人しか受けられないし、素材もすでに持っているのでうららさんが手早くクリアした。
「一応これとこれも受けておきましょう」
「そうですね。行き帰りでクリアできそうです」
ステップボア10頭とパラライビー20匹の討伐も受けることにした。
ついでに僕だけ伐採した木の納品クエストを受けた。
ラナンキュラスの羽で切るつもりだ。
「それじゃあ東の森へ行きましょう。目標は蜂の巣です」
「ハチミツとクイーンパラライビーがターゲットです!」
「頑張りましょうしのぶさん!」
「はい!」
全員が木の伐採クエスト以外のクエストを受けたので東の森へ向かう。
なぜかしのぶさんとセインのテンションが高いんだけど、理由を聞いたらコートを褒められたそうだ。
僕は前のコートとあまり変わっていないけど、セインはガラッと変わっている。
今指摘されたのは岬の守護者への行き帰りは泡のスキルオーブで盛り上がっていたせいで、落ち着いたので聞いたらしい。
「あのー……オキナさん。この刺繍ですけど、私の装備にも入れていいですか?」
「僕はいいですけどセインとうららさんにも聞いてください。ワンポイント入れたいと言ったのはセインですし、刺繍したのはうららさんなので」
「わかりました!」
しのぶさんは刺繍を気に入ったみたいで、早速セインとうららさんに確認した。
うららさんはクイーンパラライビーの素材が手に入ったらしのぶさんの装備を作る予定なので、その時に入れると返事をした。
だけど、セインは眉間にしわを寄せて何かを考えている。
どうしたんだろう。
「刺繍を入れるのはいいんですけど、エレメントドールだとしのぶさんらしさがありません!エレメントを苦無に変えるのはどうでしょう?」
「なるほど……いいですね!うららさん。お願いできますか?」
「はい。大丈夫ですよ」
悩んでいたのはデザインだったようだ。
結局人形の周りに苦無を並べるのではなく、人形が苦無を投げている構図になった。
そして、このやりとりを見ていたミヤビちゃんも何か刺繍そして欲しいと言ってきたので、何か小物を作る時に人形と竜の絵を刺繍することに決まった。
どうやら人形は必須らしい。
歩き始めた時にうららさんがボソッと「私なら糸以外の何かですね」と呟いたのは聞き逃さなかった。
みんなが納得しているなら何でもいいけどね。
騎士人形とシロツキ達に守られながらヌシ釣りの森へ向かう。
森の中では満足に飛べないので、今のうちに思いっきり飛ばすらしく、西野岬らへんからの帰りよりも速く飛び回っていた。
ヌシ釣りの森に入るとシロツキ達は定位置につき、大人しくなった。
湖までの道はモンスターが出ないから退屈なのかな。
そして、湖に着いたけど特に親しい人はいなかったのでそのまま森へ入る。
するとセインが声をかけてきた。
「爺。バブルシャワーを使ってみたいんだけど、いい?」
「ここで?どのモンスターに使うの?」
「ステップボアとパラライビー!」
「ステップボアはわかるけどパラライビーも?」
「うん。飛行の邪魔ができないか試してみたいんだー」
「僕はいいけど」
他のみんなもいいみたいで、僕と目が合うと頷かれた。
なので、今回はしのぶさんの横にセインが付いていくことになった。
防具も新しくしたのでステップボアの突進を受けても問題はないから1人だけで前に出てもいいんだけど、パラライビーの麻痺は厄介なので守ってもらうためだ。
しのぶさんならセインを抱えて飛び回れるだろうし。
「パラライビーです」
「いくよー。バブルシャワー!」
雑草魂を無視して進むとパラライビーと遭遇した。
すかさずセインがバブルシャワーを両手で放つ。
初めて戦闘で使うから念のため両手で使ったんだろうけど、避けられることを前提に手を広げたせいで、左手から出た泡は見当違いの方向に放っていた。
だけど、もう右手で放った泡はパラライビーの近くに飛んでいった。
パラライビーはその泡に戸惑っているのか、動きを止めてこちらに来ようとしない。
その内に周囲を泡で囲まれて、様子見の時の動きであるホバリングしながらの左右移動もできなくなった。
そして、しのぶさんに切り捨てられた。
「おぉー。なんで突っ込んでこなかったのかはわからないけど牽制にはなったねー」
「そうだね。次は泡を当てたらどうなるか確かめたいかな」
「わかった!がんばるよ!」
しばらく進むとパラライビー6匹の集団に遭遇した。
セインは両手でバブルシャワーを使ったんだけど、外側から内側に動かしながらだったので、逃げ場を失ったパラライビーに泡が付着した。
体に付くとバランスが保てなくなったのかフラフラと飛び、羽に付いた場合は羽が動かせなくなったみたいで地面に落ちた。
少量の泡だと問題ないみたいだけど、一定量付着すると阻害できるみたいだ。
たぶんだけどパラライビーみたいな軽くて体の小さいモンスターに付着した場合こうなるんだと思う。
これがワイルドベアだったら、体に泡が付いたところで気にせず攻撃してくると思う。
口や目に入れば別だろうけどね。
パラライビーにトドメを刺して奥に進む。
するとしのぶさんが手を上げて僕達を止めた。
「ステップボアです」
「任せて!バブルシャワー!」
ステップボアはこっちに気づいていなかったけど、セインの声を聞いて振り返ると突進してきた。
だけど、進路状に撒かれた泡を踏んだ瞬間ズルッと滑り、横倒しになったまま泡の上をまましのぶさんの近くまで移動した。
しのぶさんは忍刀をステップボアに突き刺して倒した。
もう少しいろいろ試さないと判断しづらいけど、バブルシャワーって使えるスキルなのかな。




