ボスは数で圧倒する
ブラストシェルが放った水を中華鍋の底を利用して上に跳ね返し、開いた貝の口に放電する出刃包丁を差し込み横に割いて倒す。
シールドタートルには、小さな突起がたくさん付いたハンマーで甲羅を叩き続け粉砕している。
イソギンチャクは風を纏った剣で職種を切り続け、ソードフィッシュは光を放つ槍を回転させて弾き、空中で無防備になった顔から尻尾にかけて突いて倒した。
後は合体した岬の守護者を倒すだけなんだけど、このパーティで勝てるんだろうか。
戦闘が見れる場所まで列が進み、ミヤビちゃん達はずっと観戦している。
どう戦うかは並んでいる間に話したし、エリアボスがどういうモンスターなのかも伝えている。
なので、最初の6匹は問題なく対処できると思うんだけど、問題は合体してからだ。
前のパーティがことごとく合体した岬の守護者にやられているので、見ている分にはすごく強そうだ。
実際は僕としのぶさんとセインの3人で倒せるぐらいなんだけどね。
大抵のパーティは魔道具で属性付与を行なって戦うんだけど、触手によって伸びる剣やハンマーに翻弄されて負けている。
しかも、僕達が戦った時には使っていない技もあった。
ブラストシェルの貝殻が前面についているので水は吐かないと思っていたんだけど、足裏から勢いよく出して一気に距離を詰めたり、左腕に付けたシールドタートルの甲羅から魔法を放っていた。
僕達の時は接近戦で触手の伸びを封じていたので、知らないうちに水にも対処していたのかな。
距離を開けたり縮めたりする時に使っているけど、前後をしのぶさんとハピネス達で塞いでいたからね。
盾はセインのショットで釘付けにしていたし、属性も弱点を責めるように切り替えながらだったから魔法を使うタイミングがなかったんだと思う。
普通だったら魔法でも詠唱のせいで間が空くし、精霊魔法使いだったら精霊の切り替えが必要になるからね。
そんなことを考えながら戦闘を見ていたんだけど、戦っていたパーティは全滅して消えてしまった。
剣やハンマーではなく伸ばした触手で叩かれた中華鍋の人が麻痺したことで一気に戦況が傾いた。
あの触手は麻痺するみたいだから気をつけないとダメだね。
全滅までの流れは、痺れた人に触手が伸びて剣とハンマーで倒され、それに動揺した回復役がそのまま横に振られたハンマーで吹き飛び、追撃の魔法で戦闘不能に。
応戦しようとした魔法使いに水を噴射した勢いで接近しながら触手を縮め、着地と同時にハンマーで吹っ飛ばして剣を突き刺して倒す。
怒った剣、槍、ハンマーの人が後ろから迫ったんだけど、飛ばれて逃げられる。
アイテムを使って回復しようとすれば邪魔され、回復できたとしてもすぐに倒されるという流れだった。
距離を開けたのが間違いだと思う。
「それじゃあさっき決めた通り頑張ろう」
「はい!」
「お願いします」
次は僕達の番だったのでドーム状の空間に進む。
人魂に触れるのはミヤビちゃんに任せることになっているので、僕とセインは後ろで戦う準備をする。
「人形の館、ハピネス、クローバー、アザレア、ラナンキュラス来い。繰り糸」
「精霊召喚らいちゃん。属性付与!精霊召喚ひかりん。属性付与!精霊召喚やみみん。属性付与!精霊召喚もくちゃん!精霊召喚ふぅちゃん!」
僕はハピネス達を出し、セインはらいちゃんをミヤビちゃんの槍へ、ひかりんをしのぶさんの忍刀へ、やみみんをここまで出しっぱなしだった騎士人形の剣に付与し、自分の攻撃手段としてもくちゃんとふぅちゃんを呼び出した。
ミヤビちゃんのシロツキとトバリを入れたら凄い数になっているせいで、順番を待っている人たちが騒いでいる。
僕と人形だけで1パーティ分だし、ミヤビちゃんは3人分だからね。
セインに至っては全精霊を召喚したら10人分になる。
本人は制御できないんだろうけどね。
「触ります!」
「きゅ!」
「キュー!」
「ストーム!」
「火遁・旋風」
「もくちゃんショット!ふぅちゃんショット!」
ミヤビちゃんが人魂に触れると岬の守護者が6つに分かれる。
そこにアザレアのスパークストームが放たれ、ミヤビちゃんの上を飛んでいたシロツキとトバリがブレスを吐く。
そこにしのぶさんの出した火と精霊が放ったショットが飛んで行く。
竜巻の放電する音とブレスの轟音が混ざり合い凄い音が鳴り、水が蒸発して煙が発生した。
そのせいでモンスターが何も見えなくなったんだけど、シロツキ達が羽ばたいて晴らしてくれた。
そこにはしっかりと口を閉じたブラストシェルと手足と首を甲羅に収めたシールドタートルに、縮こまったハンマークラブしかいなかった。
ソードフィッシュ、イソギンチャク、虫はさっき攻撃で倒せたようだ。
しかもブラストシェルとシールドタートルはHPは4割ほどで、ハンマークラブに至っては2割を切っていた。
しかも、3匹とも水に入ろうとしなかったので、ミヤビちゃんとシロツキ達が一掃してくれた。
そして現れる合体した岬の守護者。
盾を構えたミヤビちゃんが正面に立ち、左右にしのぶさんとラナンキュラス。
背後にハピネスを配置して、頭上にはシロツキとトバリ
ラナンキュラスの背後からアザレアが魔法を、斜め上からセインの精霊によるショットを放つよ。
岬の守護者は剣とハンマー振り回すけど、ミヤビちゃんに抑え込まれたり、しのぶさんに避けられる。
その隙にラナンキュラスの突き抜ける槍で攻撃したり、シロツキ達が飛びかかる。
できるだけ距離を開けないように攻撃し続けたけど、さすがに触手を振り回された時はしのぶさんは大きく下がる。
ミヤビちゃんは全身盾の後ろに隠れるように縮こまったんだけど、盾に当たって撓った触手が当たって麻痺してしまった。
ラナンキュラスで守りながらクローバーで回復したのですぐに復帰できたけど、次からは防がず距離を取ることになった。
油断していたわけじゃないんだけど、対応がまずかった。
触手を振り回さない時を狙って囲むことですぐにHPが半分を切った。
すると背中の羽を使って飛び上がったんだけど、それを追うようにミヤビちゃんが大きくなったシロツキに飛び乗る。
シロツキとトバリによって狩りが行われ、すぐに地面へ叩き落される岬の守護者。
逃げる時に足から水を出し、時にはこっちを狙って出してきたんだけど、シロツキ達はその隙を突いた。
水を出すことによって変則的な動きだったんだけど、攻撃しようとしたのが間違いだ。
叩き落された岬の守護者を全員で攻撃する。
倒れた状態から触手を振り回して弾き飛ばされたのには焦ったけど、その後はまた飛び上がったので、今度はうららさんの糸を足場にしたしのぶさんも交えて叩き落とした。
しかも、しのぶさんは天井を蹴った勢いを利用して忍刀を岬の守護者に突き入れた。
これがトドメとなり岬の守護者倒すことができた。
「僕は出ました」
「出なかったよー!」
「私も出てません!」
「私もです……」
「同じく出ていません」
今回スキルオーブが出たのは僕だけだったので、もう一度挑戦するため列に並んだ。
僕達の戦い方を参考にしたのか、列が進んだ時に見えた戦闘は合体後の岬の守護者を袋叩きにするものが多かった。
しかも、この戦法で複数のパーティが岬の守護者を倒すことができたので、さらに広まりそうだ。
2回目は誰も出ず、3回目でしのぶさんが出た。
これでミヤビちゃんとうららさんの分は確保できたんだけど、僕もできれば欲しいと言っているので受け取ってくれなかった。
なのでさらに挑戦した。
4回目から6回目は誰も出なかった。
この時には他のパーティも負けることはほとんどなくなっていたので、挑戦まで少し時間がかかるようになった。
その分僕達の戦い方も良くなったおかげで早く倒せるようになったんだけどね。
そして、7回目でうららさん以外の全員にスキルオーブが出た。
全部で6個になったので、とりあえずしのぶさんも使った。
これでパーティメンバー全員が泡を出せるようになった。
どうせなら一斉に使ってみようということになったので……。
「「「「「バブルシャワー!」」」」」
外に出ると空に向けてシャボン玉をたくさん飛ばした。
海風に巻き上げられたたくさんのシャボン玉が空へと登り、離れた場所で弾けて消えた光景はすごく良かった。
並んでいる人達も思わず拍手するほどだった。