VS岬の守護者(分裂したモンスター)
話し合った結果しのぶさんが人魂に触れることになった。
僕とセインは水たまりのないところで全人形、全精霊を出して待機。
しのぶさんの忍刀にらいちゃんを付与。
騎士人形にひかりんを付与することになった。
ハピネスに持たせていた剣はアイテムバッグに収納して、今回は両手を外して戦うことにした。
糸は1本だけだから大丈夫なはずだ……。
以前剣を持たせて戦わせたけど上手く扱えているとは言えなかったのと、火属性とはいえ手数が2つある方がダメージを与えられると思ったからだ。
慣れない武器に属性を付与するより操作しやすい方がいい。
「それでは触れますね」
「はい!」
「お願いします」
諸々の準備を終えたのでしのぶさんに岬の守護者へ触れてもらった。
僕が人形を出して動かしたり、セインが一斉に精霊を召喚した時に後ろがざわめいた。
3人から一気に数が増えたんだから気になるよね。
「分裂しました!オキナさん!」
「ストーム!」
しのぶさんが人魂に触れたと同時にバトルエリアが展開され、モンスターが分裂する。
最初の配置は毎回同じで、丁度ストームが当たる位置なので、事前に雷の魔石に切り替えていたアザレアでストームを放つ。
これは、魔法使いがいるパーティが行なった戦法で、そのパーティはスパークストームの詠唱を始めてすぐに人魂に触れて戦闘を開始。
詠唱が問題だったのか、分かれたモンスターは待ち構えずに向かってきた。
そのせいでせっかく詠唱したスパークストームは一部のモンスターにしか当たらなかった。
だけど、アザレアなら即座に放てるから全部に当てることができ、当たったモンスターは吹っ飛ばされた。
魔法が増えない分出が早い特性が役に立ったよ。
「手筈通り私は虫を!」
アザレアのスパークストームで共通して3割近くダメージを与えれた。
そこに船虫とムカデみたいな節足の虫を足して2で割った後、羽を生やしたモンスターを狙ってしのぶさんが突っ込む。
色々話し合ったんだけど、虫の速さに対応できそうなのはしのぶさんだけだったのでお願いすることにした結果なんだけど、よく突っ込めるなと思う外見だ。
イソギンチャクはアザレア、魚はラナンキュラス、貝はハピネス、亀はセインで、蟹は近くのを待ってから騎士人形が相手をする手筈になっている。
亀をセインにお願いしたのは戦ったことがあるタイプなのと、弱点属性で攻撃をするたびに強い属性、つまり耐性を得る習性があったからだ。
そのせいで魔法使いの使用できる属性では対処できなくなってやられていた。
その点セインと僕なら精霊とアザレアで対処できるからね。
「ランス!ランス!ランス!|突き抜ける槍!」
「ちーちゃんショット!ふぅちゃんショット!もくちゃんショット!」
「せやぁ!はぁ!えぇい!」
イソギンチャクにスパークランスを、魚を盾で弾いたところに雷を纏ったラナンキュラスの槍を突き入れる。
ランスはイソギンチャクの振り回す触手に当たったせいでそこまで大きなダメージじゃなかったけど、物理攻撃より確実にダメージを与えられている。
ハピネスは貝を火であぶりながら距離を取り反撃の挟み込み攻撃に備え、クローバーは蟹を引きつけるためにパチンコで鉄球を放っている。
戦闘開始前に駆け抜ける翼は使っているし、ハピネスの両手は切り離し済みなので問題なく戦えている。
セインは指示を出す精霊を切り替えて亀にショットを放ち続けているし、しのぶさんは虫を的確に切っている。
やっぱりしのぶさんは近接戦闘の方が得意みたいだ。
「オキナさん!イソギンチャクが!」
「あ!ランス!ランス!ダメだ!間に合わない!」
ハピネスやラナンキュラスに意識を向けている間に、ランスでHPの減ったイソギンチャクが水溜りに向かって動き出していた。
しのぶさんの言われてすぐにランスを放ったんだけど、直線で飛ぶせいで避けられた。
焦って狙いがずれてしまったせいだ。
ストームは竜巻が発生するまでに時間がかかるからランスにしたんだけど、今考えると進む先に放ってばよかったかもしれない。
それでも避けて進まれるかもしれないから、目を離したのが間違いなんだろうけど、こうも広範囲に散って戦うと把握するのが難しい。
「私がいきます!地走り!……はぁ!」
水溜りの向こうで戦っていたしのぶさんが水の上を走ってイソギンチャクに向かう。
飛び込もうとしていたイソギンチャクはしのぶさんに向けて触手を伸ばしたけど、それを切り飛ばしながら進み、イソギンチャクを全力で切った。
しのぶさんは切るために足を止めたせいか少し水に沈んだけど、再度走り出すことで問題なく水溜りを渡りきった。
そして、ランスで減ったHPにしのぶさんの斬撃がトドメとなってイソギンチャクは光になって消えた。
しのぶさんは渡り切った先で追いかけてきた虫と戦い始める。
「ありがとうございます!ランス!ランス!」
しのぶさんのおかげでアザレアが空いたので、いつの間にか騎士人形と戦っていた蟹に向けてランスを放つ。
盾で防いで剣で切るという堅実な攻撃をしてくれるのでランスで狙いやすい。
さっきのミスがのせいでいつもより集中しているのもあるんだろうけど。
「うー。やっと半分だよー」
「耐性を強化して弱点属性で攻撃すればどう?」
「それいい!やってみるね!」
横でセインがボヤいていたので亀を確認すると、HPが半分を切ったところだった。
1匹だけストームで2割程度しかダメージがなかったので、HPが多いのかもしれない。
なので、攻撃を受けた属性に対する耐性をさらに強化してから、耐性の弱点属性で攻撃することを勧めた。
雷属性が必要な時はしのぶさんに声をかけて一時的に属性付与解除しているし、騎士人形に付与しているひかりんは使うことがないので気にせず戦えている。
光属性と闇属性は互いに弱点同士だから、そもそも亀がこの属性が弱点になることはない。
最初に光属性で攻撃した魔法使いもいたんだけど、それを受けた亀は闇属性にならなかった。
自分で攻撃してきた属性の弱点属性になるのもおかしいから当然だけど。
「蟹も倒しました!次は貝を倒します!ランス!」
「私も虫を倒しました!魚に向かいます!」
「亀はもう少し!」
騎士人形とアザレアで攻撃したおかげで蟹もすぐに倒すことができたので、アザレアでハピネスが攻撃していた貝を狙う。
ハピネスの攻撃は火属性なのでそこまで大きなダメージじゃないけど、それでも継続して攻撃していたおかげでHPは半分を切っていた。
左手に炎をを継続して当てていたのが大きいと思う。
右手に剣をは飛びかかられた時に払うためにしか使ってない。
しのぶさんも虫のモンスターを倒したので、ラナンキュラスが戦っている魚に向かってくれた。
空中を泳ぐせいで盾も槍もうまく当てることができなかったので、しのぶさんの援護は助かる。
駆けつけたしのぶさんは即座に魚を切って怯ませてくれたから槍を突き入れることがでた。
そのせいでHPが減って水溜りに逃げようとしたけど、2人がかりなので逃すことなく戦えている。
セインが戦っている亀は残りHPが2割ほどなので、もうすぐ倒せるはずだ。
亀の属性を強化するために属性付与の回数が増えたせいで、指示がすごいことになっていたし、召喚の回数も増えているのでマナポーションの消費も増えた。
余裕があれば乾杯をしてもいいぐらいマナポーションを使ったよ。
「よし!貝を倒しました!」
「魚もです!」
「亀もオッケー!」
これで全部倒すことができたけど、これで終わりなんだろうか。
これが鉄の守護者でいうHPバー1本目だった場合、2本目がありそうなんだけど。
「リザルトが出ませんね」
「ですね」
「どういうこと?これで終わりじゃないの?」
「うん。まだあると思うよ」
後ろを見ると後ろに待機していた人たちが食い入るように見ていた。
バトルエリアも解除されていないので、まだ続きがあるはずだ。
「あ!何か集まってきてる!」
セインが指差した先は最初に人魂があった場所で、そこに6つの小さな魂が集まっていた。
倒したモンスターの魂だと思うけど、1つになったらどうなるんだろう。
それぞれの特徴を継いだモンスターか、全く別のモンスターの可能性もある。
念のためハピネス達を手元に寄せるとセインも精霊を寄せた。
あとは光が落ち着くまで待つだけなんだけど……徐々に形作られていくのは人型だった。
岬で身を投げた人じゃないよね?




