精霊レベルアップ
投擲リスとの戦闘の後街へ向かって進んでいると、また投擲リスに遭遇した。
だけど、今回は仲間を呼ぶための石を取り出した瞬間にうららさんが複数の糸で縛ったことで、呼ばれる前に倒すことができた。
投げられる前に攻撃して音させたり、やろうと思えば他の方法でも対処できそうだ。
「あ。火精霊召喚スキルがレベルアップした」
今回の戦闘でセインの火精霊スキルがレベルアップしたらしい。
レベルアップした瞬間にひーちゃんが消えたので、召喚し直す必要があるみたいだ。
「次の戦闘で使ってみる?」
「だねー。増えたのはショットとラッシュで、後は指示を出した時の消費MPが減ったから回数が増えたのと、召喚時の消費MPが増えたね。召喚した時の消費MPの分指示が出せるからレベル1の技が消費しなくなったのと合わせてたくさん属性付与できるようになった!」
「へー。ショットはその属性の何かを飛ばしそうだけど、ラッシュは何だろう。連続で体当たりをするのかな?」
「かなー?まぁ、使ってみたらわかるでしょ〜」
というわけでモンスターを探しながら歩いていたんだけど、背の高い木のエリアでは遭遇することなくハニーベアが生息するエリアに入った。
入って早々少し大きなぬいぐるみサイズのハニーベアを見つけたので、試してみることになった。
「精霊召喚、ひーちゃん」
いつものようにセインが呼び出したひーちゃんは、いつもと違う形をしていた。
体自体は赤くて丸いままなんだけど、左右から細い腕が生えていた。
もしかしてラッシュってこの腕で殴るんだろうか。
体の大きさ自体は変わってないから威力は低そうなんだけど。
「手が生えてる!」
セインがひーちゃんを見てビックリしてるんだけど、当のひーちゃんはそんなセインに手を振っている。
挨拶なのかな。
「このままレベルが上がっていくと人型になるんですか?」
「うーん、どうだろう。師匠がメルカトリア王国所属の精霊使いなんだけど、その人は動物の形だったよ。火が猿で水がペンギン、土がモグラで風が鳥だったよ」
「ペンギン!可愛いですか?」
「うーん。可愛いというより格好良いって感じかな。精霊は精霊使いの精神によって形が変わるとか言われてるんだけど、この感じだとひーちゃんは人型になりそうだね〜」
セインがミヤビちゃんと話しながらひーちゃんを観察している。
確かに、ひーちゃんに生えた腕は猿の腕というより人間の腕だ。
セインがひーちゃんに向けてピースをすると、ひーちゃんがダブルピースで返すぐらいには意思疎通もできているみたいだし、成長してどんな姿になるのか僕も気になってきた。
「それじゃあセインさん。先制攻撃をお願いします」
「任せてしのぶさん!ひーちゃん、ショット!」
セインが指示を出すと、ひーちゃんが両手を前に出した。
すると、小さな太陽のような玉が現れ、それが高速で射出された。
ファイアボールより小さいのに威力が高そうだ。
「はにぃ?!」
ハニーベアの背後から強襲したので、小さな火の玉が背中に直撃し、ハニーベアが驚いて声を出す。
ダメージはなかなかのもので、ハニーベアのHPが3割ほど減った。
「もういっちょひーちゃんショット!」
「はにぃ!」
振り返ったハニーベアの顔にひーちゃんのショットが直撃する。
クリティカルエフェクトを撒き散らしながら仰け反ったハニーベアは気を失ったようで、人が目を回しているバッドステータスのアイコンが表示されている。
残りHPも3割を切っているので後もう一発で倒せるね。
「せっかくだからもう一個の方も使ってみるね〜。ひーちゃんラッシュ!」
セインが言うとひーちゃんが気を失ったハニーベアに向かって移動した。
動きがいつもより素早く、通った場所に小さな火が後を引いていたんだけど、普通に動いているときは出ていないから、ラッシュの時限定なんだと思う。
ハニーベア元にたどり着いたひーちゃんが腕を振りかぶると、拳部分が大きくなった。
ひーちゃんの体と同じぐらいの大きさになった拳は、僕の拳と同じぐらいだから普通に殴ることになりそうで、下手したら後衛職の僕より強いかもしれない。
その予想は正しく、大きくした拳を交互に連打することであっという間にHPを削り切った。
殴るたびに火が飛び散って拳が小さくなるんだけど、その度に毎回大きくしなおしてるし、一撃一撃が結構なダメージだったので結構早く倒せた。
だけど、ラッシュが終わったひーちゃんは、拳が萎むと同時に体も萎ませて消えてしまった。
まだそこまで命令してなかったと思うけどどうしたんだろう。
「んー。新技は使うたびに命令した分以外に消費しているみたい。ショットなら火の玉の分。ラッシュなら拳の分だね〜」
「なるほど。ラッシュで殴るたびに拳が小さくなっていたけど、それを何度も大きくしたから一気に減ったんだ」
「うん。だから、使いどころには注意が必要だねー。連続で使うとすぐにMPが尽きるよ」
マナポーションの消費は僕が1番だけど、このままいけばセインも結構消費するかもしれない。
僕と違って最大MPは500程度で、精霊召喚で30使うらしい。
マナポーションは割合回復なので、1個あたりの回復量に差がでる。
セインが積極的に攻撃し始めたらマナポーションの消費が一気に増えそうだから、街に戻ったらパーティ共有とは別でマナポーションをいくつか買っておこう。
空き瓶への補充もあるし。
次に見つけたハニーベアはしのぶさんが攻撃してワイルドベアを呼ばせた。
そして、やってきたワイルドベアを倒したら光精霊召喚のスキルもレベルが上がった。
ひかりんを召喚してもらうとひーちゃん同様に両腕が生えていたんだけど、これにはセインも予想外だったらしく驚いていた。
さっきの話だと属性ごとに姿が違うみたいだし、セインもそういうものだと思ってたんだろうね。
精霊使いの精神によって姿が変わるらしいけど、セインの師匠が動物型ということは動物が好きなのかな。
だとしたら、人型になりそうなセインは人が好きってことになるけど……。
ひかりんの攻撃方法はひーちゃんと同じだったので、軽く戦った後ヌシ釣りの森へ戻ってきた。
戻ってくる途中から他の精霊を中心に戦ったんだけどレベルアップはなかったので、今後はひーちゃんとひかりん以外をスキルレベル2になりように頑張るらしい。
ヌシ釣りの森ではしのぶさんが状況確認したぐらいで何も起きず、マサムネちゃん達もいなかったのですぐに街へ向けて出発した。
街へ戻る道では恒例となったシロツキとトバリによるブラウンラビット狩りがあったんだけど、全員の目は狩られたブラウンラビットの額に注がれた。
それだけブラウンホーンラビットの印象が強かったからなんだけどね。
「この後はどうしますか?」
「私は夕食をとった後はログインしないと思います」
「私は宿題をします。なので、お姉ちゃんと同じようにログインできないと思います」
うららさんとミヤビちゃんは今日はこれで終わりらしい。
宿題をしないとゲームを取り上げられるミヤビちゃんには頑張ってほしい。
宿題のデータを取り込んだらこっちでもできるらしいので、言ってくれれば教えると伝えたら喜んでくれた。
「私は夕飯後にログインしますよ」
「私も〜」
しのぶさんとセインはログインするらしい。
なら、レベル上げか素材集めをしたほうがいいのかな。
でも、3人だとワイルドベアは厳しいから、ゴーレムか敢えて西に挑戦してみるのもいいね。
「明日も今日と同じくお昼からでいいですか?」
うららさんの問いかけに全員が肯定で返したので、明日も今日と同じく13時集合になった。
場所は冒険者協会前に変更したけど。
「それでは、また明日よろしくお願いします」
「お願いします」
うららさんに続いてミヤビちゃんも頭を下げ、ログアウトした。
残った3人で夕飯後どうするか話し合った結果、とりあえず西に行くことになった。
夜の海岸は属性攻撃がないと倒せないモンスターもいるので、それを相手に精霊召喚スキルのレベル上げをする。
しのぶさんは、あわよくばエリアを解放したいらしいけどね。
球体に腕があると石ツブテさんですよね……