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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン4日目)-
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シュート!

シュートスネークの残りHPは半分を切ったぐらい。

対してこっちはうららさんが時間を稼いでくれたので立て直すことができた。

もう一度同じように攻撃できればいいんだけど、できるかな。


「うららさん!」

「はい!糸縛り・雁字搦め(がんじがらめ)!」

「シャシャシャー」


うららさんに声をかけてもう一度糸を投げてもらったけど、さすがに2連続だから警戒されていたみたいで避けられた。

しかも、あざ笑うかのように鳴かれた。


「いきます!」

「合わせます!」


しのぶさんが一気に距離を詰めて切り掛かる。

合わせてミヤビちゃんが槍を突き入れたけど、これも体を曲げて避けられた。


「やぁ!」


だけど、ミヤビちゃんは槍を払うことで曲がったところに当てる。

そして、シュートスネークの体が硬直したところにしのぶさんとハピネスの斬撃、ラナンキュラスの槍が当たる。

シロツキとトバリに加え、セインの呼び出した空色の玉こと氷属性のひょうちゃんも攻撃の隙間を縫って体当たりしている。


「シュー!」


堪らず跳び下がったシュートスネークは、こっちを向いて威嚇してきた。

そして、しのぶさんが距離を詰めたところで下腹部が膨らみ、それが口に向かってせり上がっていく。


「しのぶさん!気をつけてください!」

「はい!」


ミヤビちゃんの声に合わせて、直線ではなく左右に跳びながら近づくしのぶさん。

注意したミヤビちゃんは少し前に出て盾を構える。

僕とうららさんとセインは、ミヤビちゃんの後ろに入って守ってもらう。

一応鏡写しの盾(ミラーシールド)を使ったラナンキュラスをミヤビちゃんの横に移動しておく。

魔法やスキルを跳ね返すはずだけど、シュートスネークが吐こうとしている何かは跳ね返せるのかな。


「シュッ!」


喉元までせり上がった何かを、気合の鳴き声とともに吐き出したシュートスネーク。

動き回るしのぶさんではなく、盾をどっしりと構えるミヤビちゃん狙ってきたので弾かれた。

ガンッという音を立ててぶつかってきた何かは、手のひらサイズの青い楕円形の石みたいなものだった。


「気をつけてください!まだ来ます!」


しのぶさんの声を聞いてシュートスネークに視線を戻すと、まだ喉元が膨らんでいた。

確かに手のひらサイズの石程度では、ミヤビちゃんの胴ぐらいある体が膨らむことはない。

複数の石を一気にせり上がらせたんだ。


「シュ!シュ!シュ!」


シュートスネークが連続で石を吐き出す。

ラナンキュラスの盾で防いでみたけど跳ね返ることはなかった。

どうやらこれはスキルではないらしい。


そして、吐き出され続ける石で僕達を釘付けにしている間に、尻尾を使ってしのぶさんを攻撃し始めた。

しのぶさんは石を吐いている隙をついて攻撃しようとしていたので、かろうじて忍刀(しのびがたな)で防ぐことができたけど、また遠くに離された。


「オキナさん!ラナンキュラスちゃんで攻撃してください!合わせます!」

「わかりました!」


ミヤビちゃんが防いでくれているおかげで後ろに石は飛んで来ていないし、ジリジリと減るHPはクローバーで回復しているから問題ない。

なので、ラナンキュラスを大きく迂回させてしのぶさんと反対側に移動させる。

しのぶさんがポーションを飲もうとしているので、回復したら攻撃するつもりだ。


「お待たせしました!いつでもどうぞ!」

「はい!ストーム!突き抜ける槍(ライトニングスピア)!」


いつでも飛び出せるように体勢を変えたしのぶさん。

許可が出たのでアザレアでストームを放ってからラナンキュラスを突っ込ませる。


石を吐くのに集中していたシュートスネークは、足元から広がる竜巻に気づくのが遅れて呑み込まれる。

体がズレたことで見当違いの方向に飛んでいく楕円形の石。


そして、左右から挟み込むように迫る赤く輝く忍刀(しのびがたな)を持ったしのぶさんと、バチバチ放電する槍を構えたラナンキュラス。

シュートスネークは気付いていたみたいだけど、体を曲げる前に攻撃が当たる。


「シュ〜〜……」


攻撃を受けたことで喉元に貯めていた石が一気に吐き出される。

勢いなく口からボロボロとこぼれ落ちる楕円形の石。

シュートスネークのHPは残り2割ほどだ。


「シャー!」

「あ!ラナンキュラス!」


シュートスネークが尻尾を大きく振り回す。

薙ぎ払う時の勢いのある振り方ではなく逃さないように捕まえるような振り方で、しのぶさんはギリギリ避け切ったんだけど、ラナンキュラスは絡みとられた。


攻撃した後すぐに下げたんだけど、地面を蹴って距離を開けたしのぶさんと違ってラナンキュラスは飛んでいるため一気に距離が稼げない。

突き入れた槍がシュートスネークに絡んでいたのも影響している。


「どうしよう……」


今糸を切れば手元に戻ってくる距離なんだけど、光の粒子になって消えるまでに締め付けられたら壊れてしまうかもしれない。

今はまだ力をそこまで込めていない状態なので、やるなら今しかないんだろうけど躊躇ってしまう。

いざとなったらハピネスの腹部機巧(ギミック)で切り裂いてでも助けださないと!


「下手の攻撃すると中のラナンキュラスちゃんが危なくなりそうです……」

「何かで注意を引いてる間に助けられないかな?」

「糸で無理やり引っ張れればいいんですけど、鱗で阻まれます」


ミヤビちゃん達もどうすればいいかわからないみたいだ。

これがパーティメンバーだったらHP減り具合で急ぐかどうか判断できるんだけど、ラナンキュラスだとどういう状況かわからない。

しのぶさんも攻めあぐねていて、シュートスネークの周りをうららさんの張った糸を使って飛び回るだけだ。

それでもシュートスネークの注意は引けていて、しのぶさんを追うように首が動いている。


「ラナンキュラスちゃんを食べる気です!」

「食べられたらさらに攻撃しづらくなるよ!」


しのぶさんを追うのをやめたシュートスネークは、とぐろの中に入れたラナンキュラスに対して、口を開いて近づいていった。

ミヤビちゃんの言う通り食べるつもりなんだろうけど、それなら強く締め付けられることもないだろうから糸を切れる。


「しのぶさん!ミヤビちゃん!締め付けられないのなら切ってもダメージは少ないはずなので、食べられる前に糸を切ってアイテムバッグに戻します!糸を切ったら攻撃してください!」

「わ、わかりました!」

「了解です!」


ラナンキュラスに向かってゆっくりと口を近づけるシュートスネーク。

もしも人形じゃなかったら迫る口に恐怖したかもしれないけど、あいにくラナンキュラスには通じない。

なので、もうすぐ噛まれそうというところで糸を切った。


「シュ?!」


光になったラナンキュラスを見て慌てて口を閉じたシュートスネークだったけど、閉じた口の中には何も入っていない。

そして、食べられなかったことに驚いたのか、戦闘中にもかかわらず周囲を見回しだした。

チャンスだ!


繰り糸(マリオネット)!ランス!ランス!ランス!」


ラナンキュラスを出す余裕はないので、ハピネスとアザレアに糸を追加して2本にした。

そして、ハピネスを投げつつランスを3連射。

空中でハピネスの左手を切り離して銃口をシュートスネークに向ける。


ランスが直撃し、ハピネスが火を放ったと同時にしのぶさんの斬撃とミヤビちゃんの槍がシュートスネークに迫る。

上空からはシロツキとトバリのスカーフによってランスが放たれる。


「シュ……」


僕たちの猛攻になすすべもなくHPバーを砕け散らせたシュートスネークは、小さく鳴くと光になって消えた。


誰も倒されなかったけど、結構戦いづらいしHPも多かった。

ワイルドベアは一撃の威力がすごいから下手に近づけないけど、シュートスネークスネークは離れていても石を放ってくるから面倒だ。

近づけば絡みつかれる上に、食べられることもあるみたいだし。


食べられたらどうなるんだろう。

中にいる間はHPが減り続けて、いって時間経てば石のように吐き出されるのかな。

まさか戦闘終了まで中に入ったままとかはないよね。

いつか物好きな人がチャレンジして、掲示板に書き込んでくれることを願っておこう。

さすがに僕はやりたくないし、ハピネス達を使って実験するのも嫌だ。


でも、これのために小さな人形を作って、わざと食べられるのはありかもしれない。

それに、そういった調査用の実験や調査用の人形があると色々便利かもしれない。

まだまだ全身作るのには時間がかかるけど。

できればイベント開始までに作れるようになりたいけど厳しそうだ。


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