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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン1日目)-
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ゼロワンの趣味と生物操作

「それでは最後の訓練として生き物に繰り糸(マリオネット)を使用してみましょう」

「生き物にですか?糸をつけて振り回すのではないんですよね?」

「その戦い方ではありませんね。ですが一度拝見したいので、実演をお願いします」

「わかりました。ですが、練習用人形は生物じゃないですけど、何に繰り糸(マリオネット)をすればいいんですか?」


ゼロワンさんも自動人形(オートマタ)だから生物じゃないよね。

もしかして人格があるから生物扱いになるのかな?

例えそうでも、ゼロワンさん相手に振り回しはやりたくない。

できるかどうかわからないけど。


「相手は今から呼んできます。しばらくお待ちください」

「え?」


ゼロワンさんはハピネスを取りに行った選手入場口とは逆の、左側の選手入場口に消えていった。

呼んでくるって言ってたから生物を連れてくるんだろうけど、何が出てくるんだろう。

というかどこに生き物がいるんだろう。

あの選手入場口の先で飼われてるとか?


「とりあえずやることもないし片付けておこう」


練習用人形をトランクケースに入れるために、一度ケースの上から退かせるため、脇に手を入れて引っ張った。


「重っ!」


なんとか引きずり下ろすことには成功したけど、これを持ち上げてケースに入れるのは無理っぽい。

これだけ重いってことは救助訓練用の人形みたいに、人間の重さを意識してるのかな?

あるいは僕のSTRが低くて持てない可能性もあるね。

練習用人形を持つために上げるつもりはないけど、今後自分で人形を作った時に持てなかったら嫌だから、場合によってはあげないとダメかもしれない。


「よっと」


練習用人形が入っていたトランクケースを開ける。

持ち上げれないから繰り糸(マリオネット)で繋いで、自分から入ってもらうしかない。


繰り糸(マリオネット)


練習用人形を起き上がらせ、自分でトランクケースに入るよう命令する。

練習用人形がノソノソと動き、トランクケースに入った。

後は座らせて、膝を抱えた状態で横にすればいいかな。

自分より大きい体格の人形を箱に詰めるのは変な感じがする。

これから出荷されるみたいだ。

練習用人形が入ったトランクケースを閉め、留め金もかける。


「後はこれか。これは貰ってもいいよね」


後はハピネスが入っていたトランクケースだけなんだけど、麻痺針とハピネスの着替えが入っているはず。

中を開けてみると、ぱっと見は針も着替えもない。

色々触ってみると、底板が外せそうだった。

確認のために外してみると、麻痺針と着替えが入っていた。

針はベルトのような物に1本ずつ、服は赤いドレス以外に肌着や靴下に加え、今のハピネスがつけていない赤いリボンも入っていた。

もちろん針以外からは薔薇の香りがしている。

一体どうやって作ってるんだろう。


制作方法は今後調べるとして、今はアイテムバッグへの収納だ。

底板を嵌め込んでトランクケースを閉め、留め金もしっかり掛けた。

ハピネスのトランクケースを持ち上げ、アイテムバッグのウィンドウに押し付けると、問題なくアイテムバッグに入った。


念のため確認しておこう。


名前:ハピネスのトランクケース ☆5

耐久値3000/3000

説明:人形使い(ドールマスター)ビスクが作成した殺戮人形(キリングドール)ハピネス用のトランクケース。麻痺針30本、ハピネスの服が3着分入っている。ハピネス用のトランクケースだが、別の物を入れることが可能。

・取り出す

・ロック


おー。

アイテムバッグに入れるアイテムの中に、さらにアイテムを入れることができるんだね。

何か条件がないと入れ放題な気がするけど、その辺は検証好きな人がやりそうだから、とりあえず今は放置でいいや。

予想としては密閉しないとダメとかかな。

一応ハピネスのトランクケースを間違えて売らないようにロックしておく。


「ん?」


アイテムバッグにのウィンドウを消した瞬間、聞きなれない音が聞こえてきた。

ズゥン…ズゥン…ズゥン…ズゥン…という音だった。

ゼロワンさんが入って行った入り口から、一定のタイミングで聞こえてくるから、もしかしたらモンスターの移動音だったりするかもしれない。


身構えてると、音が「ズゥン……ズゥン……」から「ズン、ズン」に変わった。

近くなってる。

絶対大型のモンスターだよ!

ブラウンラビットは現実と同じ大きさのウサギだったから怖くなかったけど、サイクロプスとかの巨人系だったら戦える気がしない!


音が「ズン、ズン」から「ズシン!ズシン!」になった。

もうすぐそこだね。

ドキドキしながら選手入場口を見ていると、ゼロワンさんが現れて、後を追うように青い塊が飛び跳ねながら出てきた。

青い塊は5mぐらいの大きさで、コロッセオに入って陽の光を浴びると、中が透き通ってることがわかった。

中には王冠や宝石に腕輪などの金品から、剣や槍に斧なんかの武器、盾や兜や籠手なんかの防具が大量に入ってる。

見た目はスライムっぽいね。

僕のスライムのイメージは鉄をも溶かす存在なんだけど、剣なんかが体内にあるから別物なのかな。

W3のスライムが鉄なんかを溶かさないだけかもしれないけど。


「お待たせしました」

「え、あ、いえ、大丈夫です……」


ゼロワンさんは僕の動揺を気にもせず、話を続ける。


「こちらがオキナ様の対戦相手になります。『キングブルースライム』の『プニお』さんです」

「はぁ……」


スライムだったらしい。

しかもキング。

絶対Lv1で戦う相手じゃない!

あと、名前は気にしない!


「プニおさん。こちらが新しく人形使い(ドールマスター)になられたオキナ様です」


ゼロワンさんがプニおさんに僕のことを紹介すると、プニおさんの全身が揺れた。

お皿に落としたプリンみたいにぷるんぷるんしてる。


「あの、ゼロワンさん」

「はい。いかが致しましたか?」

「僕はLv1なんですけど、絶対に勝てませんよね?」

「大丈夫です。プニおさん本人ではなく、生み出した小型のブルースライムを相手にしてもらいますから」

「そうなんですか。それでも勝てる気がしないですけど……」

「魔物操作を覚えた後はハピネスを使用してください。ハピネスを使用すれば問題なく倒せるでしょう」

「わ、わかりました……頑張ります」


5mぐらいのプニおさんから小型のブルースライムが生み出されても大きそうなんだけど大丈夫かな……。

ゼロワンさんはハピネスを使えば問題ないって言ってるけど、そのハピネスも満足に動かせないのに……。

とりあえずやれるだけやってみよう。

最悪死に戻りで済むはずだし。


「それではプニおさん。お願いします」


プニおさんが震えながら透き通った青い液体を放出した。

その液体は地面に落ちる前に丸まり、小さなプニおさんになった。

大きさは50cmぐらいで、プニおさんと違い体内に異物はない。

これがブルースライム。

プニおさんと違って小さいから威圧感はないし、透き通った青が透明度の高い海のようで綺麗なぐらいだね。


「それではブルースライムさんに、オキナ様の繰り糸(マリオネット)を使用した戦い方を実践してください」

「わ、わかりました。繰り糸(マリオネット)!」


ブルースライム「さん」?

ゼロワンさんが生み出されたブルースライムにさん付けしてることがちょっと気になったけど、今は置いておこう。

プニおさんには「さん」つけないとダメな感じがするので問題なしだ。


繰り糸(マリオネット)が繋がった状態で糸を張り、振り回す。

ブラウンラビットより大きいので少し重い。

それでもなんとか振り回すことができたので、そのままの勢いで地面に叩きつける。


が、HPバーは全く減っていなかった。


「なるほど。その戦法は打撃耐性のある相手には通じません。ですが、そういう相手は斬撃に弱い傾向があるため、ハピネスで対処できます。また、その振り回しの勢いでハピネスを高速移動させることもできます。いい戦法をお持ちですね」

「ありがとうございます」


ブルースライムには打撃耐性があるんだね。

ぷにぷにしてるし納得できる。

こういう相手が出てきたらハピネスを出して右手に剣を(ライトセイバー)を使うようにしよう。

ハピネスの高速移動については、振り回した状態で糸を伸ばして相手に高速接近させたり、逆に糸を縮めて距離をとらせるつもりだから、ゼロワンさんに褒められたので、実戦でも使えるんだと思う。


「それでは続けましょう。現在繋がっているブルースライムに、ハピネスにしたように何かしらの命令を行なってください」

「え?命令ですか?」

「はい。何でも構いません」

「わかりました……」


いきなりスライムに命令しろと言われても…。

とりあえず『ぷるぷる』するように命令してみたら、ブルースライムはぷるぷるした。

ほうほう。

上下にジャンプさせたり、ゴロゴロと転がす命令をしても素直に従ってくれる。

これが繰り糸(マリオネット)の生物に対する使い方なんだね。


「それでは、一度繰り糸(マリオネット)を切断し、プニおさんに接続してみてください」

「わかりました。繰り糸(マリオネット)


ブルースライムとの接続を解除してプニおさんに向けて糸を放つ。

糸はプニおさんにくっ付くも、プニおさんが白く光ることなく千切れた。


繰り糸(マリオネット)のレベルが2になりました。左手人差し指から糸が出せるようになります。スキル使用時に伸ばしている指から出るため、両手の人差し指を伸ばしていた場合、2本同時に出ます』


「え?あ?レベル2?ん?」


処理が追いつかない!

プニおさんには繰り糸(マリオネット)が効かなかったみたいで、糸が切れた。

それと同時に視界の下の方に大きな文字でアナウンスが流れて、繰り糸(マリオネット)のレベルが上がったことを伝えられた。

何もこのタイミングじゃなくても……。


「格上の生物に繰り糸(マリオネット)を使用した場合こうなります。糸の数を増やせば接続できるかもしれませんが、私のプニおさんには不可能ですので、ご遠慮ください」

「はぁ……。私のプニおさん?」


スキルの説明にも「抵抗される」って書いてあったし、さっきのがそうなんだろうね。

糸の数を増やせばって話もありがたい。

ただ、それよりもゼロワンさんの「私のプニおさん」発言に注意を引かれたよ!


「はい。プニおさんは私のペットの内の1人です。他にもたくさんいます」

「そ、そうですか」


プニおさんはゼロワンさんの言うこと聞くから、なんとなくそんな感じはしてたんだけど、本当にペットだったとは……。

それに大きさや威圧感からしても、現在のプレイヤー達では全く歯が立ちそうにないモンスターなんだけど、それをペットにするゼロワンさんは一体何なの。


「それでは最後に、あちらのブルースライムを倒してください」

「わかりました」


と言ってもハピネスを出すしかないんだけど、残りMPは97。

倒しきれるのかな?

初心者用マナポーションもあるし何とかなるよね!


人形の館(ドールハウス)!ハピネス、来い!」


空間が割れ、現れた洋館からハピネスが出てくる。


繰り糸(マリオネット)右手に剣を(ライトセイバー)!」


すかさず繰り糸(マリオネット)を使う。

接続されえたら右手を切り離して剣を出させる。


「行ってこいハピネス!」


糸を張って一回転させた勢いのまま伸ばして、ブルースライムに向けてハピネスを飛ばした。

ハピネスは右手の剣を突き出して飛び、ブルースライムに直撃した。

ブルースライムのHPが1/4になり、傷口から煙を出している。

切られただけじゃ煙なんて出ないよね。

もしかして火に弱いのかな?

体は水っぽいのに。

だったら……。


左手に業火を(レフトフレイム)!」


ハピネスの左手を切り離して銃口を出させ、ブルースライムに向けて炎を放射する。

炎に焼かれたブルースライムは、あっという間にHPが無くなり、バーが砕け散るとともに光になった。

その光はブラウンラビット達のように消えず、プニおさんに吸い込まれていった。


「ふぅ……」

「お見事です。そんなオキナ様にお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」


ブルースライムを倒し終えて一息ついたところにゼロワンさん近づいてきた。

お願いって何だろうと思った瞬間、ウィンドウが現れた。


『職業クエスト:人形の舞

依頼者:自動人形(オートマタ)ゼロワン

内容:人形の操作に慣れるため、人形を使用して50体の生物を倒してください。

トドメを人形が刺せば問題ありません。

報酬:【人形のドールハウス】Lv:2,?????

状況:0/50』


迷わず『受ける』ボタンを押す。

人形の館(ドールハウス)のレベルが上がると、収納できる人形の数が増えるはずだけど、今はハピネスしかいないし、増える予定もない。

上げるだけ寂しいかもしれないけど、上がってて損はないからね。


「ありがとうございます。プニおさんも戻って大丈夫ですよ」


僕の一礼した後、プニおさんに話しかけるゼロワンさん。

プニおさんは体を震わせると、ズシンズシンと音を立てながら、入ってきた入場口に向かっていった。


「これで戦闘訓練を終了いたします。オキナ様はこの後どうされますか?人形を作られますか?」

「うーん。今はやめておきます。クエストをこなしたら素材も集まってると思うので、その時に行きます」


どんな素材が必要か調べてからでもいいと思うんだけど、優先するのは素材集めよりクエストクリアにした。

素材がわかったら集める方法を調べて、それから行動するつもりだ。


「わかりました。では、おかえりになられるということでよろしいでしょうか?」

「そうですね」

「では、ご案内致しますので、ハピネスを回収してください」

「はい」


ハピネスの両手を拾って近づき、嵌め込む。


「ハピネス、収納、人形の館(ドールハウス)


ハピネスを収納して、開いたままだった人形の館(ドールハウス)を閉じる。

これで、ここに残っているのは練習用人形が入ったトランクケースだけだ。


「行きましょう」


ゼロワンさんはトランクケースを持つと、ここに来る時に登った階段を目指して歩き始めたので追いかける。

特に会話することなく、『転移室』と書かれたルームプレートが掛かっている部屋に着いた。

名前から察するに、僕がスキルで来た場所がここなんだろうね。


「どうぞ」


ゼロワンさんが扉を開けると、魔法陣が床に描かれた部屋だった。

工房に来た時の部屋だね。


「魔法陣に乗ればいいんですよね?」

「はい。オキナ様がスキルを使用した場所に戻ることができます」

「わかりました。色々とありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました。これからよろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします」


ゼロワンさんと挨拶を交わしてから魔法陣に乗ると、魔法陣が輝きだした。


そして視界が白く塗りつぶされた。

ステータス(MP消費、繰り糸(マリオネット)のレベル上昇)


名前:オキナ

種族:人族

職業:人形使い(ドールマスター)☆5

Lv:1

HP:84/100

MP:71/500

ST:110/110

STR:10

VIT:10

DEF:10

MDF:100

DEX:300

AGI:10

INT:200

LUK:50

ステータスポイント:残り10


スキル

繰り糸(マリオネット)Lv:2〕〔人形の館(ドールハウス)Lv:1〕〔同期操作シンクロアクションLv:1〕〔工房Lv:1〕〔人形作成ドールクリエイトLv:1〕〔自動行動オートアクションLv:1〕〔能力入力スキルインプットLv:1〕〔自爆操作(爆発は主人のために)Lv:1〕〔〕

スキルスロット:空き1

スキルポイント:残り10


職業特性

通常生産系スキル成長度0.01倍

通常魔法使用不可

武器装備不可

重量級防具装備不可


装備

・武器1:装備できません

・武器2:装備できません

・頭:なし

・腕:なし

・体上:冒険者のローブ

・体下:冒険者のズボン

・足:冒険者の靴

・アクセサリー1:なし

・アクセサリー2:なし

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