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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン4日目)-
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忍刀を持ったしのぶさん

ヌシ釣りの森は、相変わらずエリアボスと戦おうとするパーティで溢れていた。

それに、湖の近くに屋台が増えていて、観戦用のテーブルや椅子も増えている。

今後はさらに先のエリアが増えて行くんだろうから、今が書き入れ時なのかもしれないね。


周囲を見回してマサムネちゃんとミーシャちゃんが居ないか確認したんだけど、顔見知りは木の子さんぐらいだった。

チラッと見かけた気がする人はいるんだけど、名前もわからなければ話したこともないからね。


木の子さんと目があったので軽く手をあげると、向こうも上げ返してくれた。

だけど、作業が忙しいのかすぐに木工に戻った。


「奥へ行きましょう。まずはステップボア等でセインとの連携試します」

「よろしく〜!」


湖を後にして森に入った。

しばらくは雑草魂が出てくる場所が続く。

ここなら仮にしのぶさんが大声を出してもいいので、忍刀を渡そうと思う。


「しのぶさん」

「どうしました?」


警戒しながら進んでいたしのぶさんに声をかけると、振り向かずに声だけで聞き返してきた。

弱いモンスターしか出てこないとはいえ、全然警戒を解かないのはさすがだと思う。

だけど、せっかくの忍刀(しのびがたな)なので、こっちを見てる状態で渡したい。


「渡すものがあるんですけど」

「私にですか?」


素直に言うと足を止めて振り返る。

しのぶさんが止まると後ろに続いていた全員が止まることになるけど、これからすることで許してほしい。

全員僕がすることに興味があるみたいで、進むのを止めてしまったことにはなんとも思ってなさそうだけど。


「これをどうぞ」

「おぉぉぉ〜〜〜?!こ、これは忍刀(しのびがたな)では?!もしかして源さんからですか?!」


予想通りしのぶさんはテンションが上がって大声を出して、僕の手の上に乗っている源さんが作った☆3の忍刀(しのびがたな)を凝視する。

大声のせいで木のせいで姿は見えないけど鳥が飛んで行った音は聞こえた。


「そうです。源さんからです」

「メッセージは届いてないんですけど、いいんでしょうか?!」

「いいと思いますよ。僕にもメッセージは届いてませんけど、源さんにお願いしていた物ですし」


武具をお願いするときにこれもお願いしたからね。

アイテムボックスの共有化された所に入ってたんだから持ち出しても問題はないはずだ。

メッセージが送られていない理由はわからないけど。


「ありがとうございますっ!!」

「お礼は源さんに」

「いえ!オキナさんが炉の使用許可を出してくれたおかげですよ!今度鉄鉱石をお渡ししますね!」

「えっと、ありがとうございます」


目しか見えないけどキラキラした目はとても嬉しそうだ。

しのぶさんが強くなればパーティの強化につながるから別に良かったんだけど、鉄鉱石も貰えるみたいなので受け取ろう。

それがあれば源さんに武具を作って貰えるからね。


「わぁ〜。とても綺麗!」


ようやく受け取った忍刀(しのびがたな)をゆっくりと鞘から抜き放ち、波紋を眺めてうっとりとするしのぶさん。

さすがに刃物を見て恍惚とするのはどうかと思うけど、そうなってしまうのもわかるぐらい存在感のある武器だった。


忍刀(しのびがたな)なので刃は真っ直ぐで短く、鞘も柄も無骨な黒だ。

木漏れ日が当たって鈍い銀色に輝き、波紋の美しさがより一層際立っている。


「綺麗です……」

「だね……」

「すごいですね」


ミヤビちゃん達もしのぶさんの持つ忍刀(しのびがたな)に心を奪われているようで、しのぶさんの手元を見ている。

アイテムバッグからアイアンソードを取り出して見たんだけど、こっちは☆1だし刃に不思議な魅力はなく、普通のアイアンソードだった。

手で作った物とスキルで作った物の差か、あるいは純粋に源さんの技術力の結果かもしれないけど、多分後者だよね。


「よし!これで今までより戦いやすくなったはずです!行きましょう!」


しのぶさんが抜き身のまま忍刀(しのびがたな)を持って進み始めた。

さっきまでの警戒した姿とは違って、どう見ても試し切りをするための獲物を探しているように見える。

ミヤビちゃん達も元に戻ったのか、慌ててしのぶさんの後を追う。


しばらく進むとパラライビー3匹と遭遇したんだけど、レベルが上がって素早さが増したしのぶさんが木を蹴りながら近づき、すれ違いざまに切り捨てて倒した。

苦無とは違ってとても攻撃しやすそうに見えたけど、攻撃後のしのぶさんが忍刀(しのびがたな)をジッと見ていたので、何か感じるものでもあったんだと思う。


「ステップボアです。1頭なのでやらせてください」

「わかりました。お願いします」


今更ステップボアに苦戦することはないと思うので送り出した。

苦無だと10回以上切っていたんだけど、忍刀(しのびがたな)だと2回で倒すことができた。

しかも、しのぶさんの動きが早いので、反撃の隙を与えることなく斬り伏せていた。


「これは凄いです!」

「はい!それに、しのぶさんの戦う姿は格好良かったです!」


興奮するしのぶさんとそれに同意するミヤビちゃん。

女性に対して格好良いってどうかと思ったけど、しのぶさんは満更でもなさそうだ。


さらに進むとステップボアが3頭いたので、これもしのぶさんが1人で倒した。

1頭は頭上から落下した勢いを乗せて一撃で倒し、1頭を2回切って倒し、最後の1頭はセインに火属性を付与してもらって倒した。

属性を付与すると普通に切っただけでも1劇で倒すことができたので、奥に進んだら極力属性を付与することに決まった。


次に遭遇したステップボア4頭は、ミヤビちゃんも攻撃に参加して属性付与ありとなしでどうなるかを確認した。

やっぱり威力が上がって攻撃回数も減ったので、ミヤビちゃんも属性付与をする対象になった。


この時にうららさん糸にも属性を付けてもらったんだけど、威力が少し上がった程度で縛り付けることへの影響はわからなかった。

なので、今後余裕のある時に色々試すことになった。

弱点属性の糸だったら縛りやすいとかがあるかもしれないからね。


僕の場合は騎士人形と僕への耐性アップになった。

ハピネスは元から火属性が付いてるし、クローバーとアザレアは物理攻撃をすることが少ない。

ラナンキュラスの槍ならまだ可能性はあったけど、突き抜ける槍(ライトニングスピア)を使うと雷属性になるので使えない。

耐性に関だけど、糸を繋いでいる間防御力が上がるので、もしかしたら耐性も上がっているかもしれないということになり、ハピネス達は保留ということになった。

試す機会もなさそうだからね。


しのぶさんが忍刀(しのびがたな)を使った戦い方に慣れるために、少し寄り道しながらモンスターを倒しながら進んだ。

もちろん、しのぶさんだけでなくセインとの連携も色々試したけど、モンスターが弱すぎてそこまで試せなかった。


なので、しのぶさんが満足した時点でハニーベアが出てくるエリアまで進んだ。


「うぇ……。雰囲気が変わった……」


森の空気が変わった瞬間、セインが僕の服を掴んできた。

どうやらセインはこの雰囲気が苦手らしい。

薄暗い森だから仕方ないけど、光属性の精霊であるひかりんをライト代わりに呼び出すのはどうなんだろう。

私の前方を浮遊してって命令でいいみたいだけど。


しばらく進んでいると先行していたしのぶさんが戻ってきた。

話を聞くとハニーベアを見つけたらしい。


さて、どうしようかな。

セインのレベルが低いからちょっと怖いけど、ワイルドベアの攻撃を受けたら僕もうららさんも一撃だから立ち回り次第だと思うんだよね。

でも、戻ってレベル上げをした方がいいかな。

ハニーベアとワイルドベアだけだったら行ける気がするんだけど、みんなの意見を聞いてから決めよう。


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