セインと合流
ハピネスとアザレアに繋ぐ糸を増やした実験が終わったので、今度は目の前に佇む騎士人形で試すことにした。
ハピネス達は4本でカタカタし始めたけど、騎士人形も同じ本数か確かめたくなったからだ。
4本の理由が気になるからね。
「繰り糸」
まずは1本だけ繋ぐ。
もちろんカタカタしないけど、これで自動行動で設定した項目は消えた。
一応動かしてみたけど、やっぱりハピネス達と比べてもっさりしていて、操作した直後だとはっきり分かる。
「繰り糸」
糸を1本追加した。
すると、もうカタカタというかガタガタしだした。
いきなりでちょっとビクッとしたけど、鎧と小手や盾がぶつかってガンガンと音が鳴ったことで正気に戻り、すぐに1本切断した。
すると即座に止まり、何事もなかったかのように佇んでいる。
ハピネス達より体は大きいのに本数が少ないということは、大きければいいわけではないと思う。
そうなると作りに関するところだけど、騎士人形とハピネス達の違う点は機巧の有無と、装飾のレベル、後は☆の数だ。
ハピネス達は☆7。
騎士人形は☆2。
特に作り込んだわけじゃない木の人形に鉄の武具を付けただけだからこれだけ差が出るんだと思う。
そして動き出した本数は4本と2本。
もしかして1本あたり☆2まで動かせるのかな。
そして、オーバーすればするほどカタカタガタガタと動くとか。
そうなると☆1の人形ができたら常にカタカタしそうだけど、人形を作ったとしたら☆2以上になるんだろうか。
でも、石の腕や鉄の腕は☆1なんだけど、1本繋いでもカタカタしないんだよね。
人形じゃなくてパーツだからかもしれないけど。
それに、魔物や木なんかは本数が多くないと引っ張れなかったりするから、人形限定だと思うんだよね。
とりあえず実験はここまでにして、今度ゼロワンさんに聞いてみよう。
騎士人形を自動行動で再度【騎士】に設定したので、草原に寝っ転がってこの後どうするか考えることにした。
とはいっても僕1人でハニーベアのいる東の森は行きづらいから、行けるのは北の鉄鉱山の先にある状態異常の森になるんだけどね。
北の森だったらクローバーで状態異常を回復しつつ、ハピネスとラナンキュラスで近接戦闘、アザレアの魔法で援護すれば戦えると思う。
ウォークウッドが相手になると別だけど、そこまで深いところに行くつもりはない。
ちなみに騎士人形は北の森でどこまで通用するか未知数なので、戦力には入れてない。
他の候補を考えるために掲示板を覗いてみると、殆どの人はレベル上げ、武具や生産職のための素材集めをしているみたい。
レベル上げはエリアが1つ先になるだけで面倒だったりモンスターが強くなるので、結構苦戦しているらしい。
しっかり武具を用意して、パーティ内の役割も決めて連携を取れるようにしてから進むようにしているとも書かれている。
僕たちも同じことをやろうとしているから、行き着く先は一緒なんだね。
一部の人達は見つけたレイドボスに挑んだり、西の海岸付近にいると思われている守護者の探索をしている。
他にもポーション系の消耗品が品薄にならないように全員で協力して素材を納めるようにしようという掲示板もあった。
軽く見てみると売れすぎて供給が追いつかず、一時的にメルカトリア人が開いているポーション屋からポーションが無くなることがあったらしい。
回復職では回復が間に合わないことがあったみたいで、立ち回りに慣れる前だから仕方ないことだったとも書かれている。
今は畑を使って薬草類を育てることでマシになっているらしい。
ついでに畑のことも調べてみた。
前は農業系のゲームをやっていたから、できれば畑も欲しいんだよね。
工房にありそうだから街の近くの畑を買うつもりはないけど。
掲示板によるとレア度の低い物は結構早く育つらしく、それに加えて農業系のスキルを使うことで成長促進や品質が上がるみたい。
今作られている食材や薬草類は遅くても1日あれば収穫できて、スキルを使えば半日にすることも可能。
ただ、連続して作りすぎると畑がダメージを受けるみたいで、それもスキルを使って回復させているらしい。
農民はスキルを持っていない人の畑にスキルを使う仕事があるみたいで、お小遣い稼ぎになってるんだって。
畑を手に入れたら農業系のスキルはとってもいいかもしれない。
使い方によっては戦闘で役立つスキルとも書かれているし。
種まきでモンスターの体に寄生植物を生やしたり、地面を耕して相手の動きを阻害できる。
収穫というスキルだと生きているモンスターから素材を手に入れることもできるらしい。
便利そうなスキルだし意外と強いのかな。
「あ、セインからメッセージだ」
次の掲示板を開こうとしたらセインからメッセージが届いた。
ログインして暇だから合流したいという内容だった。
特に反対する理由もないし、セインの戦い方を知りつつレベル上げも手伝えるだろうから大丈夫という内容と北西の草原にいる旨の返事を送り、フレンドリストからセインを選んでパーティ申請した。
セインは即座に承認したらしく、パーティ一覧にセインの名前が追加された。
それと殆ど同時にメッセージも来た。
今度の内容は「たくさんのブラウンラビットに襲われたら負けるかもしれないので迎えに来て欲しい」というものだった。
ブラウンラビットに囲まれたら負けるかもしれないって精霊使いはどんな職業なんだろう。
北門へ迎えに行くと返事をしてから立ち上がり、騎士人形を先頭に進む。
今度は変なものに遭遇することなく北門に到着したので、騎士人形をアイテムバッグに収納してから門を通った。
「爺!よろしく!」
門の内側に入るとすでにセインは待っていて、僕にに気づいて走って来て、なぜかビシッと敬礼しながら声をかけてきた。
「うん。こちらこそよろしく」
何もしないのはダメかと思って軽く手をあげたんだけど、セインはそれで満足したみたいでうんうんと頷いている。
「それで、今から何するの?」
「他のメンバーとの合流は昼からだから、セインのレベル上げをしようと思ってるんだけど大丈夫?」
「レベル上げ?別に大丈夫だけど、私が精霊を使って攻撃してもダメージは殆どないよ?」
「前に言ってた精霊の体当りだよね?それでもダメージがないの?」
「うん。精霊のレベルが低いらしくて、ブラウンラビットを倒すのに10回はしないとダメなんだー。だから、ブラウンラビットに囲まれたら私が倒しきる前に倒されちゃうよ」
精霊は物理攻撃というより魔法攻撃のイメージがあるんだけど、それが体当たりのダメージを聞いて確信に変わった。
ブラウンラビットを倒すのに10回も体当たりが必要だなんて攻撃力が低い証拠だ。
「なるほど。でも、モンスターを倒すのは僕に任せてくれればいいよ。そこまで強いモンスターが出てくるところには行かないから大丈夫」
「ふーん。まぁ、街の外のことはわからないから爺に任せる!」
「わかった。それじゃあ属性付与について聞きたいんだけど、教えてもらえる?」
セインのレベルを上げるために行こうとしているのは西の海岸だ。
魔法攻撃をしてくるモンスターや、物理攻撃に強くて魔法攻撃や属性攻撃に弱いモンスターが多いから、以前セインから聞いた属性付与が有効だったら昼からこっちに向かってもいいと思う。
そのための実験も兼ねて行くつもりだ。
「属性付与は武具や人に精霊を宿らせて、精霊と同じ属性にする技だね。モンスターの弱点がわかれば効率的に戦えるらしいよ」
「なるほど。それじゃあ、それが活躍しそうな西の海岸に行こう」
「わかった!」
途中でポーションを補充してから西門へ向かう。
お店の人がセインを見つけるとポーション代を割り引いてくれた。
セインがここでポーションの荷運びをしたり、素材街の近くに生えている薬草を採集したことで仲良くなったらしい。
メルカトリア人と仲良くなると色々してくれるらしいので街中のクエストも侮れないらしい。
僕も時間があるときに何かやってみようかな。




