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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン3日目)-
164/287

分断

うららさんとミヤビちゃんは花を摘むためにしゃがみ採取に集中していたのか、シロツキが鳴いても周囲を見回すだけで降ってくる枝に気付いていなかった。


「くっ!繰り糸(マリオネット)!ミヤビちゃん上!」


アザレア達との糸を全て切って、5本の糸を枝に向けて放った。

枝は折れた枝じゃなくて近くにある木から生えているものだったので、とりあえず今すぐに出せる数で縛れるか試すしかない。


折れていなければ少ない本数で引っ張れそうなんだけど、木丸々なんて無理だ。

それに、折れてない枝が降ってくるということはモンスターの可能性がある。


それだと5本でも足りない可能性が高い。


「やっぱりダメだ!」

「わっ?!えっと、け、堅守!」


枝に当たった糸は弾け飛んだ。

予想通りだけど、5本の糸で10mを超える木を操作するなんてできるはずがないよ。

だけど、僕が声をかけた上に糸を放ったおかげか、ミヤビちゃんが枝に気づいてくれた。


採取をするために槍と盾を手放していたミヤビちゃんだけど、それでも手近なところに置いていたので、盾を手にして両手で頭上に構えて、スキルも使えた。

槍は地面に置いたままだけど、それは焦ってたからだろうね。


「え?きゃっ」


遅れて枝に気づいたうららさんは、バランスを崩して尻餅をついてしまっていた。

このままだとミヤビちゃんが堅守で守ったとしても、次の攻撃を避けることはできない。


「オキナさん!お姉ちゃんをラナンキュラスちゃんで運んでください!」

「わかった!繰り糸(マリオネット)!駆け抜けるヴァルキリーウィング!」


ミヤビちゃんに言われてラナンキュラスを向かわせる。

地上の移動速度ではしのぶさんには敵わないけど、空を飛ばせばラナンキュラスの方が速い。

そして、ラナンキュラスだけでうららさんを運べなかった時のためにアザレアにも糸を繋いで向かわせている。


しのぶさんはミヤビちゃんの声を聞いて、助けるのではなく枝の対処に動くみたいで、手には苦無が握られていた。

すごい勢いで降ってきている枝だから苦無では心許ないんだけど、どうするつもりなんだろう。

忍者らしく飛び乗って攻撃するのかな。


「うららさん!いきますよ!」

「お願いします……。きゃっ!」


ラナンキュラスをうららさんの背中を押すように当てる。

結構な速度で当たったけど、パーティメンバーなのでダメージはない。

そして、当てられたうららさんは僕とは逆側の方に転がっていった。

できればこっちに引っ張りたかったんだけど、その余裕がなかったから押すことになった。

なので、アザレアは途中で向かわせるのは止めた。


「うわぁ!」


ミヤビちゃんの声と共にズシンと響く音がなった。

目の前には土埃が舞っていてミヤビちゃんの姿は見えないけど、枝は長いせいで木へと繋がる部分が見えている。


ミヤビちゃんのHPバーを確認しても減ってないから堅守でダメージは防げたんだろうけど、こんなに大きなものが降ってきて大丈夫なんだろうか。


「あれ?ミヤビちゃんがいた所が膨らんでいません」

「本当ですね。向こう側へ弾かれたんでしょうか」


枝に向かう足を止めて様子を見ていたしのぶさんが、土埃が収まった後の光景を目にして首を傾げた。

しのぶさんの言う通りミヤビちゃんが堅守を使って構えていたところが膨らんでいなかった。

いくらミヤビちゃんが小さくても、盾を構えていたんだから少しは盛り上がっていてもいいはずなのに、枝は地面にペタリと着いていた。


「ミヤビちゃんがいません!」

「え?!」

「そっちにも居ないんですか?!」


枝の向こう側からうららさんの声が聞こえてきた。

どうやら向こう側に弾かれたりしたわけではないらしい。

そうなると枝の下にいることになるんだけど……。


「きゅー!」

「キュキュ!」


どうするか悩んでいると、シロツキとトバリが洞窟へと飛んでいった。

もしかして地面に穴が開いて、洞窟に落ちたのかな。

だとしたらミヤビちゃんが居なくて膨らんでいるのにも納得できる。


「うららさん!僕達も一度洞窟に入りましょう!」

「わかりました!」

「しのぶさんは警戒しながら来てもらえますか?」

「任せてください!」


枝は僕とうららさんを分断するように降ってきていて、僕達が洞窟の入り口側だった。

なので、うららさんは迂回すれば入ることができる。


あとは、この枝が伸びている木がモンスターだと予想しているので警戒をしのぶさんに任せた。

お願いするとしのぶさんが木に視線を向けつつ移動を始めたので、僕は他の木から枝が降ってこないかチラチラと見ながら洞窟へ向けて移動した。


「うわっ!」


後少しで洞窟に入れるというところで、目の前に木の根っこが槍のように飛び出してきた。

運良く当たらなかったけど洞窟の入り口を塞ぐように出て来たので、これをどうにかしないと洞窟には入れそうにない。


それに、地中から出て来たということは、ミヤビちゃんも洞窟の中で根っこを相手に戦ってるかもしれない。

シロツキとトバリがいるとはいえ、できるだけ早く助けに行きたい。


「ここは私が!火遁・旋風!」


僕の後ろに着いて来てくれていたしのぶさんが前に出て火を噴く。

根っこは木なので効果があったみたいで、火が燃え移ってウネウネ動いたんだけど、地面に潜ったかと思ったらすぐに出てきた。

すると火が消えていたので、燃やしてもすぐに消されることがわかった。


「一度下がりましょう!うららさんと合流します!」

「はい!後ろは任せてください!火遁・(ぎょく)!」


しのぶさんが後ろに向けて火の玉を放ったので、火を消すために根っこがまた地面に潜った。

その間に洞窟に入ることができればいいんだけど、しのぶさんはともかく、僕だと火を消して再度出てくる根っこに貫かれて終わりそうだ。


なので、ミヤビちゃんとの合流は後回しにして、まずはうららさんと合流することにした。

そのため、マップを拡大してうららさんの移動する方向を確認して、その先へ先回りするように動いた。


「うららさん!洞窟は根っこで塞がれました!なので、モンスターを倒すことを優先しましょう!」

「でも!それだとポーションが切れるかもしれません!」

「その時は私が突入します!私なら一瞬の隙を突いて入ることができます!」

「わ、わかりました。では、先にいくつかお渡しします」


うららさんがしのぶさんにポーションとマナポーション、そして蘇生アイテムの天使の涙をいくつか渡す。

これでしのぶさんが洞窟に飛び込む準備はできてたんだけど、実際に飛び込まれると僕とうららさんで正体不明の木のモンスターを倒すことになる。

枝を避けることができるか不安だ。


「とりあえず枝を攻撃しましょう!火遁・旋風!」

「わかりました!魔法少女の杖(マジカルチェンジ)(ファイア)!ランス!突き抜ける槍(ライトニングランス)!」

「糸縛り!」


戦闘になるのでマナポーションを飲んでからアザレアの杖を火の魔石に変える。

そして、ランスと同時にラナンキュラスに突っ込ませた。

それに合わせるようにしのぶさんが火を吹き、うららさんが降ってきた太い枝から生えている細い枝を糸で縛ってから引っ張り、ポッキリと折った。


葉や細い枝に火がついたので、太い枝がフルフルと震えだし、火を払うようにブンブンと左右に振られた。

でも、振るだけでは消えなかったので、最後には地面に叩きつけるようにして消化した。


「ボォォォォ!!!」


この攻撃で怒ったのか、降ってきた枝が生えている木に目と口のような裂け目が現れて、風が空洞を通った時に鳴るような鳴き声を放ってきた。

どう聞いても怒ってる。


木は太い枝が2本生えていて、それが腕のようになっている。

その腕と顔の上にも細い枝が何本も生えているんだけど、腕は手のように広範囲に広げるため、顔の上は髪の毛の役割に見える。


顔が現れた次はベキベキと音を立てて、3mぐらいのところが真ん中で裂け始めた。

どうやらその部分が股に位置するみたいで、残りの幹と地面から抜き出した部分で足になるみたいだ。

どう考えても大きすぎるモンスターなんだけど、勝てるのかな……。

HPバーは……2割ぐらい減ってるから、火で攻めればなんとかなるかもしれないけど……。


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