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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン3日目)-
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工房レベル3

今日から香川へ出張!

私は過労で失調!

昨日からお腹下し中。


昼食を取ってログインするとメッセージが届いていたので開いてみた。

内容は新しくエリアが解放されたということだったんだけど、ボスがいる『故)海賊の住処』ってお化け系のモンスターが出るんだろうか。


海賊の成れの果てとかが出てきそうだ。

あとで軽く調べてみて、お化け系のモンスターが出るのなら近づかないでおこう。

ゾンビと骨ならまだ大丈夫だけど、幽霊は無理。


メッセージを見るとエリア解放によって海流が変わったことで、泳いで行くことも可能になったらしい。

泳ぐのが苦手なら小船で行けば良さそうだけど、小船を手に入れるのが面倒だ。

港にいるメルカトリア人にお願いしたら連れて行ってくれるのかな。

まぁ、今のところ全く行く気はないけど。


「オキナ!どうしてここにいるんだ?」

「ナックル?僕はさらに東に行ってたけど、休憩で戻ってきたんだ。そっちは?」


ミヤビちゃん達は誰も戻ってきていなかったので、湖の周辺をぶらぶらしようと移動したらナックルに声をかけられた。

マサムネちゃんかミーシャちゃんが居れば工房に誘おうと思ってたけど、ナックルもいるなら好都合だ。


「俺はヌシと戦おうと思ってきたんだけどさ。あの列だから止めたんだ」

「あー。確かにあれに並ぶのは嫌だね」


ナックルが示した先には100人程いた。

全員が挑戦するんじゃないとしても、この数だと相当時間がかかると思う。

僕達が朝通った時はそんなにいなかったはずなんだけど、何かあったのかな。


「どうしてこんなに人が増えたんだろう」

「あー。ヌシのレアドロップで、初回クリア特典と同じスキルオーブが出るんだ。それが『水中行動』だから南に行きたいやつが取りに来てるんだ」

「へー。ちなみにそれって南の孤島が解放されたから?」


それにしては早すぎる気がするけど、昼食を取ってる間にメッセージが届いてたから、意外と時間が経ってるのかもしれない。

運営からのメッセージについては、送信時間なんて確認してない。

これがフレンドだったら別だけどね。


「解放のアナウンス前からこうなってたらしいぞ。誰かがレアドロップでスキルオーブが出たことを書き込んだんだろう。ゴーレム坑道も人でいっぱいらしいぞ」

「うわぁ……。あそこ狭いから、通路に収まりきれなくて溢れてそうだ」


トンネルから溢れ出てる人を想像して少し気持ち悪くなった。

お化けは苦手だけど、人が多いのも苦手なんだよね。

息がつまるし。


「それで、オキナはどうして東に?」

「イベントに向けてパーティを組むことになったから、連携の練習とレベル上げ」

「へー。あれ?確か職業はソロ向けじゃなかったか?」

「うーん。多分もう少しレベルが上がればかな。今はまだソロだとそこまで強くないと思う」


レベルが上がれば同時に操れる人形の数に余裕が出てくるし、スキルのレベルが上がっていれば自動人形(オートマタ)が作れる。

そうなると物量で押せるだろうから、ソロでもなんとかなると思う。

それに、工房が解放されていけばできることが増えるはずだから、それによって戦いやすくなるかもしれないし。


今の僕がソロでワイルドベアに勝つためには、ハピネスやクローバーの腹部機巧(ギミック)を使わないとダメだと思う。

糸で縛れないし、動きが早いから鉄の腕を振り回したとしても当てるのは難しい。


今ならウォール4枚で減速させた上で投げる方法があるけど、左右に避けられたら終わりだし、もしかしたら跳躍するかもしれない。

ソロでやるならゴーレム坑道の方が良さそうだ。

ただし、地底湖は除く。


「そうなのか」

「うん。そんなものだよ。ところで、マサムネちゃんかミーシャちゃん見てない?」

「2人なら15分くらい前にログアウトしたぞ。服を買いに行くらしい。リアルで」

「あー。じゃあ、しばらくインしないね」


女の子の買い物は時間がかかるっていうけど、マサムネちゃんはそこまでかからない。

買うものを決めて、それだけを狙って行くスタイルだ。

だけど、ミーシャちゃんはそんな感じじゃなさそう。

それに、今の時間からってことは昼食も一緒に食べると思う。


「用事でもあったのか?」

「んー。数合わせって感じかな。僕の職業クエストに、人数をカウントするものがあるんだ。だから、誘おうと思ったんだけど……いないならナックルだけでも来てくれると助かるんだけど、いい?」

「今は暇だからいいぞ」

「ありがとう。じゃあ、パーティに誘うよ」

「おう」


ナックルをパーティに入れた。

他の4人はまだログアウトしてるけど、ログインしたらパーティメンバーが増えてるとビックリするかもしれない。

できるだけ早く終わらせた方がよさそうだ。

ナックルは生産職じゃないから工房の設備に興味はないだろうし。


「工房」

「ん?これに行けばいいんだな」


連れて行くメンバーを選択する画面では、ログアウト中のメンバーは選べなかった。

なので、ナックルだけ選択した。

まぁ、ログインしていきなり工房に行く時の確認メッセージが表示されたら驚くよね。


今回はナックルだけなので、ナックルが決定した時点で視界が白くなった。

人を連れてるからホールに出るはずだ。


「おぉ……どこだここ」

「僕のスキルで行ける工房に繋がってる洋館だよ」

「拠点持ちか……☆5は違うな」


ナックルがキョロキョロと辺りを見回している。

僕はゼロツーさんを探そうと振り返ったんだけど、そこには頭を下げたゼロツーさんがいた。


「お帰りなさいませ。オキナ様」

「えっと、ただいま」


ゼロワンさんに言われるのは慣れたつもりだけど、あれは扉を開けるというスイッチがあるからであって、今みたいにいきなり言われると一瞬戸惑う。

ゼロツーさんは僕の返答を聞くと頭を上げた。


「オキナ様、立ち話もなんでしょう。こちらへお掛けになってください」

「わかりました。ナックル。ナックル?」

「え?あぁ、今行く」


ナックルはゼロツーさんを見て少し驚いていたみたいで、動き出すのに時間がかかった。

綺麗だから見とれてたのかな。

以前聞いたナックルのタイプとは違うんだけど。


「おいオキナ。あの人の格好はお前の趣味か?女性に執事服を着せるのはダメだとは言わないが、自分の前だけにした方がいいぞ」

「え?いや、違う!ゼロツーさんは元から執事服だよ!」


案内された椅子に座った瞬間、ナックルが男装させていることについて指摘してきた。

似合ってるから気にしてなかったけど、他の人が見るとこういう印象になるのか。

でも、ミヤビちゃん達は何も言ってこなかったんだよね。

後で聞いてみよう。


「こちらをどうぞ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます。いただきます。……うめぇ!麦茶じゃねぇか!しかも俺好みに砂糖を入れてある!」

「お客様の趣向に沿ったものを出すのが執事です」


ゼロツーさんは僕に紅茶とクッキー。

ナックルに砂糖入り麦茶と塩大福みたいな物を出した。

ナックルの夏の飲み物なんだけど、どうしてわかったんだろう。

というか、どうして用意してあるの。


「オキナ様。こちらの方で5人目です。残り5人になりました」

「はい。できるだけ早めに連れてきます」

「いえ、別に急かしているわけではありません」

「あと5人か。多いのか少ないのか微妙なところだな。それって条件があるんですか?フレンドとかプレイヤーじゃないとだめとか」


ゼロツーさんが残り人数を言ったので、気になったのかナックルが質問した。

そういえばメルカトリア人でもいいかは聞いてなかった。

まぁ、聞いたところで連れてこれる人はいないけど。


「条件があるとすればパーティメンバーとしてカウントされることです。プレイヤーでもメルカトリア人でも問題ありません」

「なるほど。よかったなオキナ。俺が残り5人クリアしてやるよ。召喚(サモン)赤鬼さん!」

「ガァ!」


僕が答える前にナックルが赤鬼さんを召喚した。

確かに召喚モンスターやテイムモンスターはパーティメンバーにカウントされるけど、それでクリアになるんだろうか。


「残り4人です」


いいんだ。

そこからのナックルは早かった。

赤鬼さんを送還すると、青鬼さん、黄鬼さん、緑鬼さん、黒鬼さんを召喚して、あっという間にクリアしてくれた。

赤鬼さんは厳つくて、これぞ鬼って感じなんだけど、残りの鬼は肌の色は全員緑だし僕より背が低くて、小鬼って感じだった。

装備で色分けされてたけど、進化したら赤鬼さんみたいになるんだろうか。


「オキナ様、おめでとうございます」

「あ、ゼロワンさん」


いつの間にかゼロワンさんがいた。

気づいたナックルが「うぉ?!メイド?!いつの間に?!」と驚いていたけど、今は置いておこう。

お礼は後で言うよ。


「それでは、ゼロツーに報告してください」

「わかりました。ゼロツーさんお願いします」

「はい。クリアを確認しました。少々お待ちください」


ゼロツーさんがウィンドウを表示して何かを確認するとクリアと判定してくれた。

ずっと見てたしカウントもしてたけど、確認はウィンドウを使うんだ。


「ナックルのおかげでクリアできた。ありがとう」

「別にいいさ!いつか俺が困ったら助けてくれればな!」

「善処します」

「そんな無茶な戦闘に巻き込むつもりはないから大丈夫だって!」

「話半分に聞いておくよ」


ナックルが僕に助けを求めるなら戦闘ではないのかもしれないけど、もしも戦闘だったら面倒な相手だと思う。

できれば、戦闘じゃないことで困って欲しい。

夏休みの宿題とか。


「お待たせしました。今回のクエストクリア報酬です。どうぞ、お受け取りください」


ゼロツーさんは木箱と、その上に譲渡用のお盆を持って戻って来た。

机の上にお盆を置くと、その上に木箱、さらに上に小さなクッションと鍵を置いた。

あの鍵が工房をレベルアップするための鍵だ。


「箱の中身は何なんだ?」

「食材セットらしいよ」


ナックルの質問に答えながら箱に手を触れると、お盆の上に乗っていた箱とクッションと鍵がアイテムバッグに収納された。


アイテムバッグを開いて鍵を取り出し、胸に差し込む。

前回と同じく胸の中にめり込んでるけど、痛みはないし感覚もない。

その状態で鍵をひねるとカチッという音と共に鍵が消え、アナウンスが流れた。


『工房のレベルが3になりました。

キッチンと食堂、そこに続く廊下が解放されました。

詳しくは担当に確認してください』


やっぱり解放されたのはキッチンだった。

受け取った食材セットを渡して何か作って貰えばいいのかな。


食堂も解放されたのは予想外だけど、洋館だったらあってもおかしくない。

無駄に広くないといいな。


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