表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン3日目)-
145/287

苦戦する漁夫の利

「ギィ?!ギィィィィィ!!」

「ガァ!」

「はにぃ!」


僕たちの攻撃……主にマーブルブレスによってクイーンパラライビーを倒すことができた。

ワイルドベアもブレスを受けて吹き飛び、ハニーベアは少し離れていたおかげで爆風で転がるだけで済んだ。


「グルルルルルルル……」

「はにぃー!はにぃ!はにぃ!はにぃぃぃ!」

「ガゥ?ガァァ!!」


起き上がった熊達は、互いにやり取りをしたあとこっちを見てきた。

なんのやり取りをしたのかはわからないけど、ハニーベアが僕たちに腕を向けて鳴くとワイルドベアも吼えたので、僕達が敵だと説明したのかもしれない。


「来ます!手筈通りハニーベアからやりましょう!ランス!」

「はい!竜槍一閃!」

「火遁・火柱!」

「糸縛り・地縫い!」

「ゴァア!」


僕達がハニーベアに向けてスキルを放つと、ワイルドベアが間に割り込んだ。

ハニーベアを守るみたいだ。


アザレアの杖から炎の槍が放たれ、ミヤビちゃんはシロツキに乗ったまま槍を構えて突撃。

この2つはワイルドベアに直撃したけど、しのぶさんがハニーベアの足元に向けて吹いた棒状のものは、ワイルドベアに弾かれて別のところに飛んだ。


飛ばされた棒が地面に突き刺さると、その棒を中心に直径1m程の火柱が発生した。

棒が刺さった場所が起点になると、今みたいに弾かれたり動きの早い敵なら簡単に避けられそうだ。

僕が縛ったりして、当てやすい状況を作るべきだね。


うららさんはハニーベアを狙わず、その近くの地面に向けて針を投げていた。

ギリギリワイルドベアの腕の範囲から離れていたので、そのまま狙った場所に刺さり、その後も刺さった針を巧みに操ってハニーベアの周囲を糸で囲んだ。

糸で編んだ檻のようになってるけど、1本の糸でどうやってるんだろう。


「ハニーベアを糸で囲みました!さっきまでの糸とは違って少しなら持つはずです!先にワイルドベアを倒してください!」

「わかりました!ランス!ランス!ランス!繰り糸(マリオネット)!」

「シロツキちゃん!トバリちゃん!もう一度ブレスを!」

「はぁ!」


うららさんがハニーベアを抑えている間にできるだけダメージを与えておきたい。

2頭の距離が近ければストームを使うんだけど、間に入ったにもかかわらず結構距離があったのでランスを使う。

それに合わせて石の腕から3本の糸を放つ。

たぶん3本じゃ無理だろうけど、やるだけやってみた結果、予想通り糸は弾けた。

つまり格上ということになる。


ミヤビちゃんの指示で放たれたマーブルブレスはワイルドベアに直撃して吹き飛ばし、しのぶさんは速さを活かして倒れたワイルドベアを何度も苦無で切っている。

苦無には紫色の液体が付着しているから、毒か何かを塗ってるのかもしれない。


「グルァ!」

「きゃ!」


ワイルドベアは起き上がる途中の体勢から飛び上がり、シロツキに乗ったミヤビちゃんに腕を振るった。

盾で防いだミヤビちゃんだったけどその威力は凄まじく、シロツキの上から吹っ飛ばされて地面に転がった。

HPは8割減っていたので、即座にクローバーを放り投げて慈愛と救済の右手(癒しましょう)で回復する。


ミヤビちゃんは僕には装備できない重装備だ。

しかも、盾で防御したにも関わらず8割減っている。

ハニーベアの攻撃に耐えられなかった僕なら掠っただけで終わりだ。


しのぶさんも職業上そこまで硬い装備じゃないから、僕と同じかもしれない。

うららさんに至っては戦闘職ではないから、さらに防御力は低くなるはずだ。


距離をとって戦おうにも、さっきの跳躍をされたら僕とうららさんは避けることができない。

早く倒そうにもHPは残り3割。

1番ダメージを与えられたのはシロツキ達のマーブルブレスだけど、あれが連発できるのかはわからないし、次は避けられるかもしれない。

避けさせないならハニーベアを狙えばいいかもしれないけど、庇いに入る分防御されるからダメージが落ちるから、できれば普通に当てたいところだ。


「ランス!ランス!ランス!呪い(破滅を……)呪い(破滅を……)呪い(破滅を……)


マナポーションを飲みつつ、スキルを放つ。

今度はアザレアの口から呪いの塊も出した。

あわよくば何かしらのバッドステータスが発生すればいいと思ったんだけど、ランスも含めて全部避けられた。

呪い(破滅を……)は触れるだけでいいから防御とか関係なないはずだし、ハニーベアを狙ったほうがいいかな。


呪い(破滅を……)!」

「グる!ガァ?」


試しにハニーベアに向けてもう一度呪いの塊を飛ばしてみた。

すると予想通りワイルドベアが間に入って弾こうと腕を振った。

だけど、弾けることなく呪いの塊がワイルドベアの中に入ったんだけど……何もおきなかった。

地道に削るしかないさそうだ。


「ランス!ウォール!人形の館(ドールハウス)、ハピネス来い!繰り糸(マリオネット)!」

「ガァァ!」

「はっ!せや!とりゃ!」


ランスは避けられるので、避けた先に炎の壁を出すとワイルドベアが突っ込んだ。

そして、毛皮に移る炎。

HPバーの横に火のアイコンが表示されてるから、燃える系のバッドステータスが発生したんだと思う。


地面を転がるワイルドベアにしのぶさんが苦無で切りつける。

僕も追加で取り出したハピネスを向かわせ、離れたところで両手を切り離してアイテムバッグに収納。

あとはしのぶさんに合わせて炎を吹き付けながら切った。


「はにぃぃぃぃ!」


回復したミヤビちゃんとラナンキュラスも攻撃に参加、それに加えて炎のバッドステータスによるダメージも効いたのか、なんとか倒すことができた。

HPバーが砕けて光になっていくワイルドベアを見ると、少しホッとしたよ。

漁夫の利にも関わらず、思った以上に消耗した戦いだった。


倒した瞬間のハニーベアの鳴き声には驚いたけど、後はハニーベアを倒すだけだし、うららさんの張った糸の囲いからは抜け出せないみたいだから問題ない。

その前に1つ試すけど。


「ちょっと試したいことがあるので、ハニーベアへの攻撃を待ってもらってもいいですか?」

「どうぞ」

「はい!」

「私は周辺を警戒しておきます」


全員から許可をもらったので石の腕を構える。

やりたいことはハニーベアならしばれるかどうかだ。

テディベアサイズであれば縛れそうだけど、このワイルドベア寄りのハニーベアがどうなるか調べておきたい。

もし成功したら、ワイルドベアを縛るのにもう少しの可能性が出てくるからね。


繰り糸(マリオネット)


石の腕から伸びた3本の糸は、うららさんの張った糸の中にいるハニーベアに当たったんだけど、千切れた。

3本じゃ足りないらしい。


繰り糸(マリオネット)


クローバーの糸を切断して腕と一緒に糸を放った。

合計4本の糸になったけど、これなら縛ることができた。

ワイルドベア寄りのハニーベアなら4本か。


テディベアサイズのハニーベアが何本で縛れるか気になるけど、成功したら鳴けなくなるからワイルドベアは呼ばれないよね。

次に見かけたら3本放ってみよう。


「試したいことは終わりました。このまま倒しましょう。ミヤビちゃん手伝ってくれるかな?」

「はい!シロツキちゃん、トバリちゃんもやりましょう」

「ふふっ。頑張ってください」


うららさんが見守ってる中、僕の糸で自由を奪われたハニーベアを倒した。

ワイルドベアに似てるけど鑑定した結果がハニーベアだからか、ダメージが入りやすかった。

これでワイルドベアくらいの硬さだったら沢山攻撃しないとダメだから、面倒なことにならずに済んでよかったよ。


「さて、これからどうしましょうか。進みますか?戻りますか?もうすぐお昼なので、安全な場所があればログアウトしてもいいですけど」

「そうですね……。一度ヌシ釣りの森まで戻りましょう。あそこならログアウトしやすいですし」

「わかりました。ミヤビちゃんもそれでいい?」

「はい!大丈夫です!」


後はしのぶさんだけど、ミニマップを見ると少し離れたところからこっちに向かってきてる。

合流したら伝えよう。


「皆さん!急いでここから離れましょう!もう1頭ワイルドベアが来ました!」

「え?」

「急ぎましょう!」

「え?あ、はい。ハピネス、クローバー収納!」


しのぶさんが慌てて戻って来て、ワイルドベアが来てると伝えてきた。

そして、うららさんの手を取って出てきた方とは逆側の森に入っていったので、僕もハピネスとクローバーを収納して追う。

ミヤビちゃんはシロツキに乗っているから、すぐにしのぶさんを追っている。


ワイルドベアが来たのはハニーベアが鳴いたせいだと思うんだけど、もしかしてもう片方(・・・・)の親?

さっき倒したのが母親だとしたら、今度は父親が来たってこと?


考えるのは後にして急いで逃げよう!

体力が万全のワイルドベアとは戦いたくない!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ