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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン3日目)-
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女王蜂vs親熊

「ガルアァァァァ!!」

「ギィィィィ!!」


大きな毛玉は、押し倒したクイーンパラライビーをそのまま押さえ込み、顔を近づけて吼える。

クイーンパラライビーも口をギチギチさせながら返す。

どう見ても熊で、テディベアサイズのハニーベアと一緒にいたワイルドベアと同じぐらいの大きさか少し大きいぐらいに見えるけど、纏ってる雰囲気が違う。

もしかすると別のモンスターなのかもしれない。


「鑑定しました。ワイルドベアです」

「普通のワイルドベアですか?」

「はい。そう表示されています」

「後ろ姿を見る限り、少し大きい気がするんですけど……」

「個体差でしょうか?」

「かもしれないですね」


押さえつけていた状態から体を起こし、ベアパンチを放つワイルドベア。

クイーンパラライビーは錫杖を持っていない手を全て動員してそれを防いでいた。


やっぱり少し大きいんだけど、ロックゴーレムやリトルロックゴーレムも岩の形が違っていたせいで大きさに差があったから、個体差なのかもしれない。

たぶん、多少ステータスも違うんだと思う。


最初のワイルドベアがハニーベアを連れて戻った理由はわからない。

体の大きさからの予想だけど、自分より強いワイルドベアが来るとわかったからかな。

子供が大きいということはその分長生きしてそうだし、そうなるとモンスターとの戦闘も増えて強くなってそうだ。

野生のモンスターにレベルアップがあるのかはわからないけど。


「はにぃ!はにぃ!」


そのワイルドベアを呼んだハニーベアは、駆けつけた親熊を応援しているのか、掛け声を出しながらハチミツを食べてHPを回復していた。

クイーンパラライビーから受けたダメージは結構あったんだけど、ハチミツだけで回復できるんだ。

僕達もあのハチミツなら回復できるのかな。


ワイルドベアはクイーンパラライビーと離れたところで戦ってるし、ハニーベアも応援していてこちらを無視している。

しのぶさんとうららさんも距離をとって様子を見ているので、いろいろ試すなら今のうちだ。


近くに落ちていたハチミツに触れてみたけど、ハチミツは光にならず手に残った。

石ころみたいに自分でアイテムバッグに入れないとダメみたいだけど、直接入れるのはちょっと嫌だと思いつつ、アイテムバッグのウィンドウを開いてハチミツを流してみたけど入らなかった。


「オキナさん。ハチミツのような液状のアイテムは、瓶などの容器に入れないとダメですよ」

「そうなんですか!わかりました。空き瓶に入れてみます」


アイテムバッグから空き瓶を取り出してハチミツを入れる。

空き瓶はマナポーションが入っていたやつだけど、飲んだものはただの空き瓶になるから、次に入れるものがマナポーションである必要はない。


ハチミツは問題なく入ったので、ハチミツ入りの瓶をアイテムバッグに入れる。

それは『痺れハチミツ』というアイテムになった。

食べたら痺れるんじゃないかな。


「このアイテムは使用すると麻痺状態になりますね。麻痺を取り除いて普通のハチミツにすることも可能とのことですが、料理スキルでしょうか?」

「うーん。調薬とか錬金術もありそうですね」

「それもありそうですね」


隣でうららさんも空き瓶にハチミツを入れていた。

鑑定の結果、麻痺することと、どうにかすると取り除けることがわかった。

でも、ハニーベアは直接食べてるけど、どうして麻痺しないんだろう。

確率か麻痺耐性でもあるのかな。


「ハニーベアは麻痺耐性があるんでしょうか?だとしたら毛皮が欲しいところですけど、今は戦いたくないですね」

「毛皮ですか?」

「はい。モンスターの素材は、そのモンスターの特性を持っていることが多いのです。なので、もしもハニーベアに麻痺耐性があれば、毛皮にも付いている可能があります。そうなると、麻痺耐性つきの防具が作れるというわけです」

「なるほど。耐性はあっても困らないですね。ですが、あのハニーベアを攻撃するとワイルドベアがこっちに攻撃して来るかもしれません。やめておきましょう」

「はい。攻撃するとしたら、もっと弱ってからの方がいいと思います」


ワイルドベアはのしかかりを解き、立ち上がってクイーンパラライビーと対峙していた。

ワイルドベアのクマパンチと、クイーンパラライビーの錫杖による打撃と魔法の応酬。

それによって受けるダメージは、僕がクイーンパラライビーに与えたダメージより大きい。

つまり、少なくともワイルドベアの攻撃力はラナンキュラスよりあるってことになる。


やっぱり、ワイルドベアとクイーンパラライビーの強さは今の場所に合ってない気がする。

呼ばれたモンスターは次のエリアから来たりするんだろうか。

ロックリザードより強い印象を受けるから、さらに隣かロックリザードのエリアにいる強いモンスターと同等なのかもしれない。


北の森は樹液で周囲のモンスターを誘い、東の森は鳴き声や蜂の巣を壊すなどの条件で親モンスターを呼ぶってことは、西や南も何かありそうだ。

西は魔法で呼び寄せて、南は……魚だから餌かな。


「どうしましょうか」

「とりあえず合流して様子をましょう。場合によっては逃げます」

「わかりました」


うららさんは僕の提案を聞くと、ミヤビちゃんとしのぶさんを手で招いた。

しのぶさんはすぐにこっちに移動して来たけど、ミヤビちゃんは壊された巣でハチミツを集めていたみたいで、合流するまで時間がかかった。

ミヤビちゃんがハチミツを採取している姿は、公園で遊んでるように見えたけど、これを言ったら怒られそうだから心の内に秘めておこう。


「お待たせしました」

「きゅ」


シロツキに乗ったミヤビちゃんと合流した。

あとはクイーンパラライビーとワイルドベアの様子を見るだけだ。


「ミヤビちゃん。ワイルドベアとクイーンパラライビーのどちらかのHPが2割を切ったら、全員で攻撃することになったんだけど大丈夫?」

「はい!大丈夫です!」

「じゃあ、しばらく様子見だね」

「わかりました!」


ミヤビちゃんがハチミツを採ってる間に、うららさんとしのぶさんに相談して決めた。

逃げる案も出たんだけど、ここで戦っておいた方がどこまで通用するかわかるし、互いに削り合ってるから倒しやすいということで戦うことになった。

今はそのタイミングを見計らっているところだ。


「ガァァ!」

「ギィ!ギギィ!」


ワイルドベアのベアパンチを飛んで躱し、錫杖を振り下ろすクイーンパラライビー。

ワイルドベアは落雷を避けると、その勢いのままタックルを繰り出す。

それを、空いた腕を使って逸らし、ついでとばかりにお尻の針を突き刺す。


「ガッ?!」

「ギィ!」


ダメ押しで針を刺したまま錫杖で殴り、距離をとったクイーンパラライビー。

ワイルドベアはダメージこそあるものの、麻痺はしなかった。

普通のパラライビーより麻痺になりそうな針だけど、ハニーベアの時点で麻痺耐性があるなら、ワイルドベアに成長しても残ってそうだ。

だから、刺されても麻痺しないんだと思う。


「グルァ!!」


起き上がったワイルドベアは勢いよく駆け出し、クイーンパラライビーを素通りすると木にタックルを放った。

木は中程から折れて地面に倒れる。


「ガァ!」

「ギギィ!」


ワイルドベアは折れた木を掴むと、クイーンパラライビーに向けて振り回す。

それを予想していたクイーンパラライビーは空高く上がり、錫杖を使って落雷を何度も落とす。


「はにぃ!」

「グル!」

「ギィ!……ギッ!」


ワイルドベアは、落雷を避けながら近づき、飛んでいるクイーンパラライビーに向けて木を投げた。

投げる瞬間にハニーベアが吼えたけど「今だ!」とか言ったのかな。


投げられた木はクイーンパラライビーに直撃はしなかったけど、回転してたせいで避けた後の羽に当たった。

そのせいでバランスが取れなくなったクイーンパラライビーが地面に落ちる。


「グルァ!」

「はにぃー!」

「ギギギギ……」


地面に落ちたと同時にワイルドベアとハニーベアが駆け出し、クイーンパラライビーに猛攻を加え出した。

錫杖を振り回して応戦してるけど、羽を折られて機動力が下がっているせいで、ワイルドベアの攻撃を避けれなくなり、攻撃も当たらなくなっている。


魔法で攻撃しても、ワイルドベアは減るHPを無視して攻撃するし、ハニーベアは半分減るたびにハチミツを食べて回復する。

このままだとクイーンパラライビーが負けて終わりそうだ。


この後もワイルドベアによる攻撃が続き、クイーンパラライビーのHPが2割を切った。

ワイルドベアは6割、ハニーベアは7割ある。


「行こう!まずはクイーンパラライビーだ!その後ハニーベア、ワイルドベアの順で倒そう!ストーム!ストーム!ストーム!」

「わかりました!シロツキちゃん!トバリちゃん!」

「了解!火遁・旋風!」

「糸縛り・雁字搦め(がんじがらめ)!」


予定通り飛び出してクイーンパラライビーに向かう。

ワイルドベアは僕たちに目もくれずクイーンパラライビーを攻撃していたので、ストームで一緒に攻撃した。

ミヤビちゃんはシロツキとトバリにマーブルブレスを撃たせるし、しのぶさんは口から渦状の火を噴く。


うららさんだけクイーンパラライビーを攻撃せずに、2頭の熊に向けて糸のついた針を投げる。

少しでも行動が阻害できればいいんだけど、ワイルドベアには刺さらなかったし、ハニーベアにはアッサリと引きちぎられていた。

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