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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン3日目)-
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裁縫師の糸

前話のオキナが取得したスキルのレベルアップに能力入力を使う部分の記述に『入力したスキルを使用するだけで経験値を得れる』旨の記述を追記しました。

特に読み直す必要はありません。


うららさんによる工房の成果報告を終えたので、冒険者協会で魔力水を飲んでから東の森へ向かって出発した。

僕だけ生産でMPが減ってたからね。


東の森には戦闘しながら歩くと1時間以上かかるんだけど、地味にステータスが上がってたのと、戦闘をしなかったおかげで、1時間かからずに森の入り口にたどり着けた。


「順番はどうしますか?」


草原は戦闘をしないと決めて移動していたので、隊列を気にせず歩いていた。

ミヤビちゃんと仲良くなろうとするしのぶさんを、僕とうららさんが見守りながら。

その結果、ミヤビちゃんはしのぶさんと普通に話せるようになったみたい。


「私、ミヤビちゃん、うららさん、オキナさんの順でいいんじゃないでしょうか。私は場合によっては先行するかもしれません」

「うららさんを前後で守るんですね?」

「はい。生産職の方を連れて行く場合の基本フォーメーションです」


前衛職が前を守って、後衛職が後ろを守るのかな。

僕のステータスだと守れるかわからないけど、ラナンキュラスを近くに配置していれば大丈夫かな。

アザレアの拒絶の壁(嫌い……)でもいいけど。


「うららさんとミヤビちゃんはこれでいい?」

「はい。大丈夫です」

「お手数おかけします」


うららさんとミヤビちゃんに異論は無いみたいなので、湖を越えたら今決めた隊列で進むことになった。

うららさんが苦無と針を確認してるけど、投げるつもりみたいだ。

変なことにならないならいといいけど。


「うーん。マサちゃんとミーシャちゃんは居ないようですね〜」

「そうですね」


湖に着くとしのぶさんがマサムネちゃんとミーシャちゃんを探したけど居なかった。

フレンドリストを見るとオンラインになってるから、もしかしたら森の中にいるかもしれない。

帰りにいれば工房に誘うことにして、今日会えなかったらメッセージを送ると決めた。


「それじゃあ隊列を組んでいきましょう!」

「はい!」

「よろしくお願いします」

人形の館(ドールハウス)。アザレア、ラナンキュラス来い。繰り糸(マリオネット)


決めていた通り隊列を組んで、アザレアとラナンキュラスを出した。

前衛にしのぶさんとミヤビちゃんがいるからハピネスは出さない。

クローバーは誰かがダメージを受けた時か、出てくる敵が変わった時に出すつもりだ。


「あの、オキナさん。その子は新しい子ですか?」

「え?あー。ミヤビちゃんとうららさんには見せてなかったね。防御人形(ディフェンスドール)のラナンキュラスだよ」

「私と同じ装備ですね!」


ミヤビちゃんはラナンキュラスに近づくいて、槍や盾を比べると、嬉しそうに言った。

うららさんもラナンキュラスに興味があるのか、持ち上げていろんな角度から見てる。


「ミヤビちゃんと同じような装備だし、ラナンキュラスは飛べるんだよ。駆け抜ける翼(ヴァルキリーウィング)

「うわぁ!飛んでます!」


ラナンキュラス羽を出させてうららさんの手から離れるように飛ばすと、うららさんが「あぁっ……」って言ったけど、見たいのなら後で見せてあげよう。

そして、飛んでるラナンキュラスを見たミヤビちゃんのテンションがさらに上がった。

このまま放置したらシロツキに乗って飛びそうだ。


「ラナンキュラスの操作の参考に、ミヤビちゃんの戦い方を見せてもらおうと思うんだけどいいかな?」

「私の戦い方ですか?勿論いいです!頑張ります!」

「私も頑張ります!」


ミヤビちゃんが胸の前で拳を握る。

なぜか、うららさんも握って気合を入れてるんだけど、どうしたんだろう。

やる気スイッチでも押しちゃったのかな。


2人が同じポーズを取ると、姉妹って感じがするね。

目元とか似てるから尚更だ。


「あー、はい。お願いします」

「では、気を取り直して行きましょう!」


しのぶさんの号令で森の中に進み始める。

目指すのは東で、最終的には森を突き抜けるつもりだけど、とりあえずは今の装備で行けるところまで行くことになってる。


ステップボア程度なら余裕だから、その先の熊や大きな鳥、大きなキノコが出てくる場所までは、不要な戦闘は避ける。

ただ、ステップボアや、鑑定スキル持ちのうららさんが名前を教えてくれた僕を麻痺させたことがある蜂のパラライビーは、こっちを見つけたら襲ってくるので、その時は戦う。

木の根が出てたりして足場も悪いから、逃げるより戦う方が楽だからね。


「雑草魂ですね。放って起きましょう」

「はい!」


しのぶさんが草を輪にしたモンスターを無視して進

んだ。

やっぱりアイテム名に書かれてた『雑草魂』が名前なんだね。

他にも薬草魂とか花魂とかあるのかな。


「次は痺れキノコですね。近寄らなければ問題ないので迂回しましょう」

「わかりました!」


しのぶさんの指示にミヤビちゃんが元気よく返事をする。

草原を歩いている間に随分仲良くなってる。


視線の先には足の生えた黄色い傘のキノコがゆっくりとした速度で歩いていた。

ピリピリと電気を走らせる胞子を漂わせてるんだけど、こいつの名前は見た目通り『痺れキノコ』なんだね。


状態異常は北の森の方が多いらしいけど、パラライビーや痺れキノコのせいで、東の森も結構状態異常が起きそうなんだけど。

北の森粘液とか特殊っぽいものが多いのかな。

毒や石化とかもあったりして。


「次はパラライビーですね。私が先手を!」


次に遭遇したのは、刺されると痺れることがあるパラライビーだった。

僕の場合は繰り糸(マリオネット)さえ繋がっていれば、痺れていても戦えるんだけど、しのぶさんやうららさんは戦えなくなる。

ミヤビちゃんにはシロツキとトバリがいるから問題ない。


しのぶさんが苦無を構えて、パラライビーを狙う。

見える範囲にいるのは1匹しかいないんだけど、苦無を両手に1本ずつ持っている。

それぞれ別の場所に狙いをつけてるので、見えないところにもう一匹いるんだと思う。


「奥にもう一匹いるので、合計2匹です。はっ!」


しのぶさんが2本同時に投げた。

見えている1匹には当たらなかったけど、奥の1匹はどうなったんだろうか。


「ごめんなさい。2本とも外しました……」


外したらしい。

そして、苦無が近くを通ったことで刺激されたパラライビーがこっちに向かってきた。


「私がやります!糸縛り!」


しのぶさんとミヤビちゃんが前に出ようとしたら、うららさんが先に出て糸を放った。

正確には糸の付いた針を投げていて、針の当たったパラライビーは、うららさんの手元から伸びている糸で引っ張られて地面に落とされた。


「やっ!」


そして糸を引っ張り、パラライビーを機に叩きつけて倒す。

この戦い方は僕と同じ戦い方に見える。


「もう一匹も!糸縛り・雁字搦め(がんじがらめ)!」


しのぶさんが釣ったもう一匹にもスキルを放つうららさん。

今度はさっきと違って複数の針を飛ばし、パラライビーの至る所に刺す。

そして、その糸を複雑に絡めることで動けないようにした。


手足だけじゃなくて羽も巻き込んで絡め取ってるせいで、パラライビーが地面でもがいてる。

手足や触覚がワサワサしてるのは少し気持ち悪い。


「えいっ!」


動けなくなったパラライビーの糸を掴んで振り回し、勢いよく地面に叩きつけて倒すうららさん。

やっぱり糸を使った僕と同じ戦い方だ。


「どうでしょうか?他にも相手の腕や脚だけを糸で縫ったり、口や目を縫うこともできますよ」

「すごいです!それを使えば相手の攻撃を封じれますね!

「さすがお姉ちゃんです!」

「すごいですね。これなら普通に戦えますよ」


腕や足を封じれば攻撃ができなくなるし、口は魔法を使えなくするのかな。

目はこっちを視認できなくなるようになりそうだから、一方的に攻撃できるのかもしれない。


僕の糸だと縛り続ける必要があるけど、うららさんの雁字搦め(がんじがらめ)は、絡め取った後糸を切断していたから、一度縫えば離れることができそうだ。


ということは、縛って放置すればいいから、僕のように指の数という制限はないと思う。

その分糸がなくなったら終わりかもしれないけど。


「ありがとうございます。モンスターを木や地面に叩きつけるのは、ミヤビちゃんから聞いたオキナさんの戦い方を真似しました。これで私もトドメをさせるようになったんですよ」

「そうなんですか。参考になってよかったです」


うららさんの戦い方に僕が関わっていたみたいだ。

制限を解除する前でも『動けなくしたモンスターを木に叩きつけていた』っていうのは人形が入ってない。

だから、ミヤビちゃんからうららさんに戦い方が伝わったんだと思う。


「僕の戦い方を参考にする前はどうやってたんですか?」

「縛ったモンスターをミヤビちゃんに倒してもらってました」

「なるほど」


動けないモンスターを槍で突くだけだから、安全に戦えるね。

この戦い方も僕がハピネス達や他の人とパーティを組んだ時にする戦い方だ。


うららさんの戦い方が僕と似てるから、この先の連携もやりやすくなるかな。

どのモンスターを縛って欲しいといえば良さそうだし、他のモンスターを僕が縛れば、しのぶさんとミヤビちゃんが倒すだけになるからね。


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