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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン2日目)-
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東西南北どこに行く?

この後どうするか話し合ったんだけど、うららさんと源さんはもう少し生産するとのことで、源さんからは鍵をよろしく頼まれ、うららさんからは明日の行き先を決めて欲しいと言われ、2人は作業に戻っていった。


転移室にはゼロワンさんとゼロツーさんが送ってくれるとのことなので、僕はミヤビちゃんとしのぶさんを連れて武具制作室を出た。


部屋を出るときにしのぶさんが「忍刀(しのびがたな)をお願いします!」と言ってたんだけど、源さんはどうするんだろう。

僕の予想では炉を使いこなせるようになるまで作ってくれない気がする。


行き先を話し合うためにどこかの部屋に移動しようと思う。

候補は応接室と人形制作室なんだけど、少し迷った結果、応接室にした。

しのぶさんが暴走するかもしれないと頭をよぎったのが一番の理由だ。


応接室に入って椅子に座ると、いつの間にかゼロツーさんがいた。

うららさんに断って一時的にこっちにきたらしい。


ゼロツーさんは冷えた果実水を3人分置くと、一礼して出ていった。

飲み物を用意するためだったみたいだね。

喉が渇いた感覚はないし、空腹にもなってないんだけど、味は分かるから気分転換には丁度いい。

さっきまでは生産のことを考えてたけど、今から明日以降どこに行くかを決めるから、一度リセットしたかったし。


「これも美味しいです」

「ブドウジュースみたいですけど、すごく爽やかですね。喉に絡みません」

「ですね」


ミヤビちゃんとしのぶさんは出された少し紫がかった飲み物を飲んで絶賛した。

僕はもう少し濃い方が好きなんだけど、これは飲みやすくて疲れた頭に良さそうだ。


「それで、どこに行きましょうか?」

「一応東西南北全部行けますね」

「み、南もいけるんですか?海ですよ?」


僕が聞くと、しのぶさんが掲示板を見ながら答えてくれた。

ミヤビちゃんは海に出れることに驚いてるみたいだけど、どうしてだろう。

船も出てるんだし。


僕達だと海に出れそうにないからかな。

まともに戦えそうなのはシロツキに乗れるミヤビちゃんだけだと思うけど、しのぶさんなら海の上を走れるのかな。

忍者だし、壁や天井も走った実績もあるからね。


「南は船に乗せてもらって海か、見つかった島を冒険するみたいです」

「船ですか。戦い辛そうですね」

「私はシロツキちゃんに乗ります!」


船は揺れるだろうし、どこかに穴が空いたらそれで終わりだ。

もしかしたら直せるのかもしれないけど、ちょっと遠慮したい。

ミヤビちゃんは飛べるから問題なさそうで少し羨ましい。


ラナンキュラスに頑張ってもらったら僕も飛べないかな。

糸でぶら下がればいけそうな気がするけど、出力が足りるかどうかわからない。

今度時間があったらやってみよう。


「北は状態異常系のモンスター、西は魔法系のモンスター、東は物理系のモンスターが多いみたいですね」

「み、南はどんなモンスターが多いんですか?」

「水中から一方的に攻撃してきたり、水の中に引き込んできたりするから、相手のテリトリーがあるモンスターですよ」

「こ、怖いです」


水中に引きずり込まれるんだ……。

それは怖いし、落ちたら船に戻るのに苦労しそうだ。


「私としては東ですね」

「どうしてですか?」

「北は状態異常です。回復役が居ない現状で進むのは良くないと思います。当たらなければ問題ないんでしょうけど、そんなにうまくいくことはないと思います」

「確かにそうですね」


芋虫の糸で動けなくなったぐらいだし。

東の森には胞子を飛ばすキノコや、痺れさせてくる蜂がいたけど、北のほうが多いんだろうね。

というより樹液でモンスターを呼び寄せるぐらいだから、特殊な状態異常って感じかな。


「西は魔法攻撃が多いんですけど、物理攻撃に耐性があるモンスターも多いみたいです。こちらの魔法攻撃はオキナさんのアザレアちゃんぐらいですよね」

「しのぶさんの忍術は違うんですか?」

「あれは魔法みたいに見えますけど、物理扱いです。MPとSTが減るんです」

「そうなんですか。ミヤビちゃん。シロツキ達のブレスは魔法になるのかな?」

「ブレスは……どうなんでしょうか。今度セルゲイ団長に聞いておきます」

「うん。よろしくね」


口から火の玉を出すのは魔法に見えるんだけど、魔法じゃないらしい。

地走りも魔法かと聞かれたら違う気がするから、ちょっと特殊なスキルだと考えればいいのかな。


シロツキ達のブレスは魔法かどうかわからないから、西に行くのは危険かもしれない。

アザレアだけで対処できればいいんだけど、突撃してきた魚のように、大群に襲われたら無理だからね。

ラナンキュラスの鏡写しの盾(ミラーシールド)で跳ね返せばいいかもしれないけど、数が多いと圧倒されると思う。

というか機巧(ギミック)を使うのが追いつかなくなりそうだ。


「確かに。西は厳しそうですね」

「そうなると、東になりますね。東の奥には熊が出てきます。他にも大きな鳥やキノコに、蔓を鞭のように振るってくるトレント、葉っぱを針のように飛ばしてくる針葉樹もいます」

「攻撃力重視なんですか?」


熊と大きな鳥は攻撃力が高そうだ。

テンペストバードも大きかったし。


キノコは状態異常を引き起こしそうだね。

蔓を使った攻撃はこっちの動きを封じそうだし、針が飛んでくるのは厄介な気がする。

蜂みたいに麻痺しなければいいけど。


「私は見たことがないんですけど、基本的に状態異常攻撃はないそうで、攻撃力は全体的に高めらしいです。特に熊と針葉樹です」

「熊は分かるんですけど、針葉樹もですか?」


熊は体格も大きいだろうし、爪や髪付きの一撃以外にも飛び掛かられたら大ダメージを受けそうだけど、針を飛ばしてくる針葉樹攻撃力が高いんだ。

針が太いとか?

自分の腕に太い針が刺さってるのを想像したら、背中がゾクッとした。

注射はそこまで苦手じゃないけど、好きでもないから、針が体に刺さるのは勘弁してほしい。


「そうなんです。針を飛ばしてくる密度がすごいそうです」

「なるほど。一度に大量の針を飛ばしてくるから、その分ダメージが増えるわけですね」

「はい。なので、遠くから攻撃できれば対応できるみたいです。つまり、私の苦無の出番です」


また苦無を投げようとしてる。

もうお約束みたいになりつつあるし、しのぶさんがこっちをチラチラ見てくる。

早く指摘しろってことかな。


「当たればいいんですけどね」

「当たりません!」

「あ、当たらないんですか?!」


指摘するとしのぶさんが自信満々に当たらないと言った。

そのことに、しのぶさんの腕前を知らないミヤビちゃんが驚いた。

まぁ、自分から苦無を投げるって言ってるのに当たらないって宣言されると驚くよね。


「しのぶさんはね。近接戦闘はすごいけど、苦無を投げるのは下手なんだ。でも、スキルを取らないで練習してるすごい人なんだよ」

「え?あ、いや、別にそういうわけでは……」

「そうなんですか!頑張ってくださいね!」

「あ、はい。頑張ります!」


しのぶさんが小さい声で狼狽えてたけど、ミヤビちゃんには聞こえてなかったみたい。

キラキラとした目で応援されたしのぶさんは、気合を入れて返事をしたけど、最後に軽く僕を睨んできた。

投げるのをやめないなら練習あるのみだから、頑張ってください。


「というわけで、明日は東の森を進むということでいいですか?」

「問題ありません!」

「私も大丈夫です。シロツキちゃんとトバリちゃんには、小さく動いてもらいます」

「よろしくね。それじゃあ、工房から出ようか」


2人を連れて応接室から出る。

転移室に向かう途中武具制作室を覗いてみると、源さんとゼロワンさんはハンマーを振るっていて、うららさんとゼロツーさんは、椅子に座って布に何かを縫っていた。

うららさんの方がほのぼのしてるんだけど裁縫ってこういうものなのかな。


武具制作室を後にして転移室に入り、魔法陣の中に進む。

すると、視界が真っ白になり、晴れると工房に行く前の場所に戻ってきていた。


「そういえば時間を決めてませんでしたけど、朝の何時にしますか?」

「10時ごろがいいですね」

「私とお姉ちゃんも10時でいいですよ」

「わかりました。それでは、パーティはこのままにしておくので、明日の朝10時でお願いします」

「承知!」

「わかりました」


最後に取って付けたように忍者っぽく言ったしのぶさんだけど、誰も反応しなかった。

ミヤビちゃんはすぐにログアウトしたので、僕も続けてログアウトした。


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