イベントに向けて
ようやくイベントまでにすることを話し合えることになった。
一度座り直して気持ちを切り替えたら、そのタイミングでゼロツーさんがお茶のおかわりとお菓子を追加してくれた。
とても助かります。
「美味しいです!」
「美味しいね!」
「これはお持ち帰りしたいですね」
「では、後ほど包んでお渡ししましょう」
「いいんですか?!ありがとうございます!」
出された物はケーキと大福っぽい物なんだけど、ミヤビちゃんとしのぶさんが美味しいと喜んで、うららさんは持って帰りたいと言った。
それを聞いたゼロツーさんが包むことを提案してくれたんだけど、もしかして『ふぁんしーけーき』に持って行って、研究でもするのかな。
純粋に甘いものが欲しいだけかもしれないけど。
「それじゃあ、イベントまでにすることを話しましょう。と言っても何から話せばいいのかわからないんですけどね」
「そうですねぇ……。個人のやるべきことはそれぞれわかってると思うので、全員集まらないとできないことを考えましょう」
「わかりました」
「は、はい」
ケーキの感想を言い合い始めたので、慌ててイベントの話を割り込ませると、しのぶさんが提案してくれたので、それについて考えることにした。
けど、その前に自分のやるべきことを考えないと思考がまとまりそうにない。
装備の強化は個人のことだけど、素材集めのために強いモンスターを倒しに行くならパーティで行った方がいいだろうし、そうなると全体の話になる。
やっぱり、まずは自分の課題を出す方がいい。
考えた結果、僕の課題はスキルのレベル上げと僕自身のレベル上げ、装備の強化に人形の操作に慣れることだ。
つまり今まで通りだ。
スキルは工房と人形作成を中心にあげようと思う。
ハピネス達の操作に慣れることも大事だけど、全部のスキルを使ったわけじゃないから、少なくとも自爆操作は練習で使っておきたい。
自爆操作は、操作中の人形を爆発させるスキルだけど、パーツでできるのかはわからない。
仮にできたとしても人形の性能と消費MPで威力が変わるから、パーツだけの性能だとたかが知れてると思う。
素材も拾えるものばかりだし。
自動行動も使ってみたいから、後で外に出たら石の腕で使ってみるつもりだけど、攻撃に向いてるかどうかわからないから、自爆操作を優先するつもりだ。
攻撃手段は多いほうがいいからね。
工房のレベル上げを急ぐのは、さっきゼロツーさんに教えてもらった『許可した人に渡せる工房に転移できる鍵』をうららさんに渡すためだ。
織り機を使いたいのか、静かな場所で作りたいのかはわからないけどね。
それに、炉が使えるなら源さんにも渡すつもりだ。
鉄素材の武器を作ってもらえるかも知れないし、そうなれば人形に持たせて戦力アップができるからね。
もちろんしのぶさんの忍刀もお願いするつもりだ。
他のスキルは使っていれば上がるだろうから、意識して使わなくていいと思う。
僕自身のレベル上げも戦っていれば上がるから、特に意識してレベル上げをするつもりはない。
ちょっと遠出する程度で考えてる。
人形の操作も同様だ。
今後は、できるだけハピネス達を同時操作して連携を意識しようと思う。
最悪腹部機巧を使うけど、できれば使わないで済むように戦いたいからね。
装備の強化は必須事項だけど、そもそもどうすれば強い防具が手に入るかよくわかってない。
強いモンスターの素材を集めるために、少しでも強い防具が必要になるんだろうけど、そうなると終わりが見えないよね。
パーティで倒せるようなモンスターを狙っていけばいいのかな。
結局、レベル上げと防具の強化は全体にも通じることだね。
だから、これに加えて4人での連携を鍛えるぐらいだと思う。
スキルのレベル上げと人形の操作は個人のことだからね。
「全員考えたみたいですね」
「ですね!というわけでまずは私から!メンバー集めをするべきだと思います!やっぱりフルメンバーで挑むべきですよね!」
「なるほど。人が多いとその分できることが増えます。いいと思います」
「ミヤビちゃんは大丈夫?」
「えっと、はい。頑張ります」
しのぶさんの提案は考えてなかった。
確かに麗さんの言う通り、人が多いとできることが増えるから、いろんなことに対応できると思う。
このメンバーだと魔法系が不足してるし、回復役も居ないから、探すとしたらそこかな。
ミヤビちゃんも頑張ると言ってくれてるし。
「どうやって探すんですか?」
「まずはフレンドからだと思います!ちなみに、誘うメンバーは魔法系がいいと思うんですが、どうですか?」
「僕は回復役もいると思います」
「そうですね。回復と魔法攻撃ができる人でしょうか」
しのぶさんもうららさんも同じ考えだったみたいだ。
竜騎士は物理戦闘系。
忍者は斥候系。
人形使いは人形によるけど万能系?
裁縫師は……援護系?
どうやって戦うんだろう。
こうやって考えると魔法攻撃は僕のアザレアだけだし、回復はクローバーだけだ。
スキルで取ればいいのかも知れないけど、イベントのために普段使わないスキルを取るのは違うよね。
回復なら今後も使うかもしれないけど、攻撃魔法はうららさんに必要なのかわからないし。
「わ、私のフレンドにはいません」
「私もですね!」
「私もいません」
「僕もいません」
ミヤビちゃんがフレンドリストを確認したので、僕も確認した。
結果誰も魔法攻撃主体の人も、回復主体の人もいなかった。
同じ職業の人で集まってしまったんだと思う。
あるいは……やめておこう。
悲しくなりそうだし。
「と、とりあえずメンバー集めは保留ということでいいですか?」
「そ、そうですね!私は街中やヌシ釣り開拓メンバーに聞いてみます!」
「はい。私も服を売りながら探してみますね」
「私は……頑張ります……」
ミヤビちゃんは何も思いつかなかったみたいで少ししょんぼりしてたけど、僕も思いついてないから大丈夫だよ。
見つけようとして変な人が入ってくるのは嫌だし、それなら4人で参加して楽しめればそれでいい。
「僕も適度に頑張ります。無理してメンバーを増やすくらいなら、4人で参加する方が楽しいと思います」
「確かにそうですね!オキナさんの言う通りです!」
「わかりました。私もイベントに参加するパーティを探してる人がいたら気にかける程度にします」
「ミヤビちゃんも無理しなくていいからね」
「はい。わかりました」
これで無理して探す必要は無くなったから、ミヤビちゃんも気が楽になったと思う。
僕も楽になったし。
「それで、次のやることを話し合う前に確認したいことができたんですけど、イベントで何を目指すんですか?1位とか楽しみたいとかそういうのです」
「私は楽しめて順位が良ければそれでいいです!別に上位じゃなくていいです。真ん中より少し上くらいで」
「私はミヤビちゃんと楽しめれば問題ありません」
「私も楽しかったらいいです」
「僕も参加したからには楽しみたいけど、順位はそこまで興味ないです。では、僕たちの目標はイベントを楽しむということでいいですか?」
「「「はい」」」
ということで、僕たちの目標は『イベントを楽しむ』になった。
1位を目指す人達が頑張ってる横で、マイペースに楽しもう。
「それじゃあ続きですけど、僕はレベル上げと装備強化と僕達の連携の練習ですね」
「全部同時にできそうですね」
「ですね!強いモンスターを連携して倒し、その素材を使って防具を作る。この流れでいいと思います」
「オキナさんの装備としのぶさんの装備の一部は私が作れます。ミヤビちゃんの装備としのぶさんの金物部分は他の方に頼むことになります」
「わかりました。そこは皆さんに任せますが、布や皮の部分はお願いします」
「はい。任されました」
しのぶさんは腕や足装備、額の所に金具が入ってるし、ミヤビちゃんはそもそも金属系の装備だ。
源さんにお願いできれば楽だと思ってたんだけど、2人ともすでに付き合いのある鍛治師がいるかも知れないから、そこは2人に任せることにした。
僕達はいい素材を手に入れてうららさんに渡すだけだ。
「他に何かありますか?」
「はい。アイテムを揃えるべきだと思います。武器や防具も大事ですが、採掘や伐採用の道具とか回復道具もいると思いますし、料理も必要ですよね」
「確かに必要だね」
「戦うことばかり考えていたので気づいてませんでした!」
「さすがミヤビちゃんです」
うららさんがミヤビちゃんの頭を撫でる。
たぶん生産職のうららさんは気づいていたんだろうけどね。
僕としのぶさんはミヤビちゃんに言われて気づいたけど、イベントでは生産職も活躍できるって書いてあったはず。
イベント限定の素材を使って色々作る必要があるかも知れないから、それを取るための道具は必要だ。
回復道具の中でも特に復活アイテムが必要だろうし、料理もたくさん持ってないと3日間を乗り切れない。
もちろん、イベントが始まってからでも購入できるかも知れないけど、イベント価格とかで高くなってる可能性があるから、今のうちに揃えておきたい。
「他に何かありますか?」
少し待ったけど誰も発言しなかったので、これでおわりだね。
後はまとめるだけだ。
「まとめまると、各種採取用のアイテムや回復アイテムを買って全員で外に出る。連携と素材を集めるためにモンスターと戦って、いい人がいればメンバーに誘うという感じでいいですか?」
「問題ないと思います!」
「そ、そうですね」
「私もいいと思いますが、一点だけ。アイテムは各自で揃えるよりも、生産職である私が持っていた方がいいと思います。なので、買い出しは私の方でやっておきますね」
うららさんが買い出しを担当すると言ってくれた。
確かに個人で購入したら同じアイテムばかりになる可能性もある。
それだったら1人が購入した方がいいんだろうけど……。
「いいんですか?」
「大丈夫です。お金については後で清算しましょう」
「わかりました。お願いします」
「はい。その分戦闘はお任せします」
「わかりました」
うららさんが胸の前で拳を握った。
やる気満々だからお願いすることにした。
戦闘は頑張ろう!