炉無しの源さん
昨日から出張でまたトラブってるため、頂いてる感想等の返信は明日になります。
せっかく1日分書き溜めたのに……。
白い体の表面に虹色のコーティングがされたリトルロックゴーレムより小さなロックゴーレムは、地底湖へと続くリトルロックゴーレムなら通れる小さなトンネルへと消えていった。
こっちの被害は源さんのハンマーだけなんだけど、なんで壊したんだろう」
「さっきのは……なんだ?」
「僕にもわかりません……以前見たときは攻撃しても逃げられたんです」
「そうなのか……」
源さんはハンマーを握っていた手を見つめていた。
壊された瞬間光になって消えたので、その手には何も握られてなかった。
そういえば前は赤い玉を持ってたけど、今回は何も持ってなかった。
普通にハンマーの頭を殴って壊しただけだったし。
色々気になるけど逃げられたからこれ以上は何もできない。
せいぜい背後に気をつけるくらいだ。
「とりあえず、警戒しながら探索しませんか?!さっきのやつが戻ってくるまでに終わらせたいです!」
「そうだな!わしも予備のハンマーはあるから問題はない!」
しのぶさんが探索を促すと源さんがアイテムバッグからハンマーを取り出しながら了承した。
予備の武器を持ってるなんてさすがだね。
とりあえず僕もできることをしよう。
「人形の館、ハピネス、クローバー来い。繰り糸」
クローバーを出して糸を繋ぎ、源さんの元に移動させて『慈愛と救済の右手』を使って回復する。
ハピネスは採掘のためだ。
「おぉ!この人形だと回復ができるのか!」
源さんは回復のできるクローバーに驚いてる。
人形ごとでやれることが違うから把握するのに苦労するかもしれないけど、できることが多いのはいいよね。
まだ自分で魔道具を作れないから同じような人形は無理だけど。
「助かった。それじゃあ採掘ポイントを探すとするか」
周囲の警戒をしのぶさんに任せて、源さんの案内で採掘ポイントを回る。
今までと同じように水晶や鉱石がむき出しのところもあれば、採掘スキル持ちの源さんにしか見えないポイントがあった。
「ここも採掘ポイントだ」
源さんに言われてしのぶさんとハピネスが掘る。
だけど、何も手に入らなかった。
石ころすら手に入らなかったんだけど、源さんは何度もツルハシを振ってるから何か手に入ってるんだと思うけど……もしかしてスキルがないと掘れないのかな。
「源さん。掘っても何も出ないです」
「私もです」
「そうなのか?儂は鉄鉱石が手に入ってるぞ」
「もしかしたら採掘スキルを持ってないと掘れないのかもしれませんね」
しのぶさんも僕と同じ結論を出した。
「そういうポイントもあるぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ。そういう優遇も採取スキルならではだな。戦闘スキルで使える技が違うようなものだ」
なるほど。
戦闘スキルは覚える技や魔法が異なるから、取得した効果がはっきりわかる。
それに対して採掘スキルが採掘ポイントが見えるようになるのといいものが出やすくなる。
あとは道具の消耗が減るんだけど、これだと数をこなせばいいだけになるから少し弱い気ね。
スキルを取ってるからこそできることとしてはありだと思う。
「なるほどー!」
「もしかして、遠くへ行けば行くほどそういう場所が増えるんでしょうか?」
「かもしれん。ここでもあるぐらいだからな」
もしそうだったら面倒だなぁ。
せっかく遠出してもアイテムを手に入れられないんじゃ勿体無い。
旅に出るときは採取系スキルを取ることも検討しよう。
そんなこともありながら採掘しつつ回っていると、砕いた岩を運んでた道以外に1つ道が見つかった。
その道は岩を運んでた道とは正反対にあって、チラッと見た限りではリトルロックゴーレムやロックゴーレムがいた。
他には壁に沿って伸びていた太い蔦の先に、何かに使えそうな小さな花とトンネルがあったんだけど、トンネルの先は行き止まりだった。
ミヤビちゃんと探索した時の話だけど、こことは違う場所で上の方を探したらアイテムがあったと伝えたら、しのぶさんが地走りを使って探してくれた。
手に入った小さな花は3人で分けたんだけど、使うことはあるのかな。
「それで、どうする?進むのか?」
源さんが見つけた道を指しながら聞いてきた。
せっかく見つけたからできれば行きたいんだけど、そろそろゴーレム坑道を出た方が良さそうだ。
ミヤビちゃんから集合場所の連絡はないけど、時間までに街へ戻っておきたいし。
「折角ですけど、僕としのぶさんはこのあと用事があるのでそろそろ戻ります」
「そうですね。そろそろいい時間です」
「そうか。じゃあ儂も戻るとするか。ここは1人で来る場所じゃない。掘るとしてもロックゴーレムが出てこない場所を探すとしよう」
1対1で倒せるとはいえ、今の源さんだと厳しいよね。
せめてもう少し強い防具があればいいんだけど、そのためには強いモンスターの素材を集めないとダメだ。
僕は装備制限、しのぶさんは速度重視だから重装備はダメだけど、源さんはどうなんだろう。
鍛治師だからあまり重い装備は合いそうにないね。
そうなると安全に掘れる場所だけど、ここ以外だと崖へと通じる道だ。
源さんは1人で掘りに来るだろうから教えておこう。
「1人で掘れる場所ですけど、源さんがリトルロックゴーレムと戦ってた方とは逆に上への道がありますよ。そこには僕でもわかる採掘ポイントがあったので、源さんならもっと見つけれると思います」
「そうか!なら、今度探すとするか!」
「時間があれば案内するんですけどね」
「教えてもらえただけでも助かる!ありがとよ!」
話してるうちに段まできたので、出っ張りに手足をかけてよじ登る。
下から登って行くとわかるんだけど、意外と登りやすかった。
これならミヤビちゃんでも登れると思う。
シロツキに乗れば一瞬だろうけど。
「源さんにお願いがあるんですけど、いいですか?」
「ん?なんだ?」
段を登りきったので、作成を依頼しようと思う。
この先は他のプレイヤーがいるかもしれないから、落ち着いて話すならこの辺がいいと思ったんだ。
「鉄鉱石を渡すので、鉄のインゴットを作って欲しいんですけど、いいですか?」
「あ!私も忍刀を作って欲しいです!」
「鉄のインゴットに忍刀か……。坊主達には世話になったから作ってやりたいんだが、インゴットはともかく忍刀は無理だ」
「どうしてですか?」
「炉がないんだ」
「え?炉ですか?」
鍛治をするために鉱石を溶かしたりする炉だよね。
それがないってどういうことだろう。
「総合生産施設を使うか、メルカトリア人に借りるしかないんだが、総合生産施設の炉はあまり性能が良くないからな。そんな設備で作れん。そして、いい炉持ってるメルカトリア人の所には、すでに契約を結んでる鍛治師がいるから使えんのだ。出遅れちまったのが悪いんだが、ショボいのを使うと違和感があってな……」
総合生産施設なんてあるんだ。
たぶんお金を払って一定時間設備を使って、その間に色々作るんだろうけど、源さんにとってそこの設備はイマイチなんだね。
βをプレイした時にいい炉を使ったせいで、性能が低いものに戻れないんだと思う。
「お金を出せばいい設備を使えるらしいですけど」
「そうなんだが、そうすると採算が取れん時がある。その点メルカトリア人のところは定期的に依頼をこなすだけで使わしてくれるからな。施設使用量がかからない分儲けが出るんだ」
「なるほど。儲けを出すためなら、できるだけメルカトリア人のところの方がいいですよね」
しのぶさんが掲示板で情報を探してくれたんだけど、お金さえ出せば上位の設備を使えるみたいだ。
だけど、源さんが言うには採算が取れないらしい。
確かに同じものを作るとしても施設使用量がかかるかどうかで、儲けが大きく変わりそうだから、こだわるのはわかる。
炉か。
工房に炉はあったけど、どれくらいいい設備なのかわからないんだよね。
どうせだから見てもらおうかな。
源さんがお気に召せばそのままインゴットを作ってもらえるし、しのぶさんも忍刀を作ってもらえるかもしれない。
工房に招いた人数も増えるから誘う価値はある。
この後すぐに連れて行くか、ミヤビちゃん達と合流してから連れて行くかだけど、できれば一緒がいいよね。
ミヤビちゃんの武器や防具を作ってもらえるかもしれないから、会っても損はないと思う。
ただそうなると、ミヤビちゃんが源さんを見て怖がらないかどうかが心配だけどね。




