ハンマー大活躍
3段目に登ってきたロックゴーレムは、即座にリトルロックゴーレムを掴むとこっちに投げてきた。
同じ段でもまだ距離はあるから予想はしてた。
「儂に任せろ!」
飛んできたリトルロックゴーレムに向けてラナンキュラスを飛ばしたら、源さんが前に飛び出しながら片手で持てるハンマーを投げた。
ラナンキュラスの方が速かったんだけど、突っ込ませると当たりそうだったから横に避け、空中で待機させる。
ラナンキュラスの横を通ったハンマーがリトルロックゴーレムに直撃する。
岩が砕け、破片を撒き散らしながら吹っ飛び、落下の衝撃で腕と足が取れる。
残りHPは1割を切ってるから、当たりどころがよければ次は一撃で倒せそうだ。
源さんもそれがわかってるみたいで、次のリトルロックゴーレムがいつ投げられてもいいように、すでにハンマーを取り出していた。
できればトドメを刺して欲しかったけど。
吹っ飛ばされたリトルロックゴーレムにしのぶさんが向かっていったので、トドメは任せてラナンキュラスをロックゴーレムに向けて飛ばしつつ、ハピネスを回転させる。
ツルハシからハンマーに持ち替えさせてるんだけど、片手で持つには少し大きいサイズなので、ハピネスは両手で持つことになった。
ちなみにしのぶさんは片手で持ってる。
源さんはいつでもハンマーを投げられるような体勢でロックゴーレムに近づいて行く。
大きなハンマーは左手で持って地面を削りながら進んでるから、源さんの通った後に傷ができてる。
「甘いわっ!」
ロックゴーレムは近づいて来る源さんに向けてリトルロックゴーレムを投げようとしたんだけど、それを察知した源さんが先にハンマーを投げた。
それは投げようとした瞬間のリトルロックゴーレムに当たり、その身を砕け散らせた。
今度は一撃だった。
「隙あり!」
いきなり手の中にあったリトルロックゴーレムが砕けたことに動揺したのか、ロックゴーレムの動きが止まり、それ見た源さんがハンマーを両手で持って走る。
ロックゴーレムは我に返ったみたいで、源さんに向かい始めたのでラナンキュラスで牽制する。
といっても周囲を飛んで、隙があればチクチクと突くだけなんだけどね。
「ぬぅおりゃあ!」
ラナンキュラスに反応して止まったところを、源さんが思いっきり叩く。
それを予想してたのか、リトルロックゴーレムが体を這って攻撃が当たるところに移動してたんだけど、そのリトルロックゴーレムごと叩き、吹っ飛ばした。
もちろんリトルロックゴーレムは粉々だ。
転がるロックゴーレム。
衝撃で剥がれ落ちる最後のリトルロックゴーレム。
勢いが良すぎたのか、ロックゴーレムの両腕の肘から先がロックゴーレムより手前に落ちていた。
これはチャンスだ。
「繰り糸」
2本の糸を取れた両手にくっ付け、手元に寄せる。
これでロックゴーレムは僕を狙って来るんだろるけど、そこを源さんに叩いてもらえれば攻撃を受けることなく倒せるかもしれない。
前回と違って肘が砕けてるわけじゃないから、アイアンゴーレムと同じ習性があれば僕を狙って来るはず。
予想通り起き上がったロックゴーレムは僕に向かって走ってきた。
しのぶさんはロックゴーレムが倒れてる隙に、転がってHPが減ったリトルロックゴーレムを倒してるし、源さんはハンマーを構えて次に備えていた。
「ぬぅん!」
その結果、走ってきたロックゴーレムに対して横から源さんのハンマーが直撃して、また吹っ飛ばされることになった。
そして、今度は追撃するみたいで、源さんは倒れたロックゴーレムに近づいてハンマーを叩きつけた。
「突き抜ける槍!」
源さんの援護にラナンキュラスを突っ込ませつつハピネスも投げる。
しのぶさんもハンマーでロックゴーレムを叩き出したせいで2人と1体がハンマー、残り1体が槍という戦い方になった。
遠くから見てるとただ岩を砕こうとしてるようにしか見えない。
「ふぅ。これで採掘ができるな」
「そうですね。じゃあ、源さんに採掘ポイントを教えてもらいながら掘っていきましょうか」
「わかりました!」
全員で囲むとすぐに倒せたので、採掘を始めることにした。
残り1体のロックゴーレムは7段目だから、まだ距離があるのですぐに襲われることはない。
襲いかかってきたとしても源さんが吹っ飛ばしそうだけど。
「ここも採掘ポイントだ」
「おぉ!周囲の壁と比べると少し黒いだけですけど、掘ったら鉄鉱石が出ます!」
源さんが採掘ポイントを回り始めたので、ハピネスにツルハシを持たせて後を追ってたんだけど、すでに掘ってるところばかりで、一応掘ってみたけど何も出なかった。
なので、源さん達を横目に見つつ石を拾ってたんだけど、壁にも採掘ポイントがあると言わた。
源さんが掘り出したので、同じように掘ってみると鉄鉱石が手に入った。
試しに少しズレて普通の壁っぽいところを掘ってみたけど、石が削れただけでアイテムは手に入らなかった。
色んな素材が欲しいのなら、採取系スキルは取った方が良いかもしれないね。
「こんなものか。あとはあいつを倒してから周囲を探索して、坊主が言ってたロックゴーレムがたくさん居るところを見てみようじゃねぇか。いけそうなら戦ってみてもいいかもしれねぇしな。掘り出し物があるかもしれん」
「採掘だけにですか?」
「ん?おぅ!そうだ!採掘だけに掘り出し物だ!はっはっはっはっは!」
源さんがハンマーの頭で7段目のロックゴーレムを示した。
それに対してしのぶさんが言ったギャグっぽい指摘が思ったよりツボだったみたいで、爆笑している。
「行きましょうか」
「おぅ!次も頼むぞ坊主!」
「え?あ、ラナンキュラスでの牽制ですか?」
「そうだ。アレのおかげで楽に攻撃できた!」
「わかりました」
源さんが落ち着くまで待ってから声をかけると、ラナンキュラスでの牽制を頼まれた。
僕がロックゴーレムを止めてる間に源さんが攻撃すれば吹っ飛ばせるから、そこを囲めば危なげなく倒せる。
僕1人だと腕を振り回して当てないとダメだからパーティがどれだけ効率的なのか実感できた。
しのぶさんは硬いモンスターと相性悪いみたいだけど、速さで翻弄できてるし、ハンマーに変えてから攻撃力は上がってる。
惜しいのは天井や壁が遠いことだね。
それがあれば高いところから落下しながら攻撃したり、壁を蹴った勢いを利用できるのに。
源さんに壁側まで吹っ飛ばしてもらうのも手かもしれないけど、そうなると僕たちも壁の近くで戦うことになるから、囲まれる危険があるからやりたくない。
僕なら1人でロックゴーレムを相手にできるかもしれないけど下手したらやられるし、源さんが1体を抑えられるかわからない。
せいぜい2体同時までだ。
「儂が先頭でいいな?」
「いいですよ」
「私は周囲の警戒をしますね」
源さんを先頭に段を降りながら、採掘ポイントがあれば掘る。
探索しながらなのでゆっくりと進み、6段目についた頃にはツルツル石が5マスになった。
これで腕を5本作れる。
「次はリトルロックゴーレムはいませんね」
「ふん。いてもいなくても一緒だ」
「いない方が集中できて楽ですよ」
6段目にある岩の陰にから7段目のロックゴーレムを確認する。
周囲にはリトルロックゴーレムはいないみたいだ。
源さんからするとどっちでもいい存在かもしれないけど、まとめて倒せないしのぶさんからしたら邪魔な存在だよね。
僕は糸で縛れるからそこまで邪魔じゃないけど、投げられて飛んでくるのは面倒だから、できればいない方がいい。
そういえばロックゴーレム本体に対して糸を出してない。
隙があったらやってみよう。
「よし、やるぞ。準備はいいか?」
「はい。いつでも」
「大丈夫です」
やる気満々の源さんが立ち上がり、隠れていた岩に向けてハンマーを振り上げる。
何をするんだろう。
「強振撃!」
源さんがスキルを使って岩をハンマーで叩く。
岩が割れて大小様々な石がロックゴーレムに向かって飛んでいった。
源さんは振り抜いたままの姿勢で固まってるからスキルを使用した後の硬直だと思う。
飛んでいった石を見ると、一際大きな石がロックゴーレムに当たった。
そのせいでバランスを崩して膝をついたので、ラナンキュラスを向かわせた。
「私も行きます!」
ハンマー片手に走り出したしのぶさんは、段の高さを利用して高く飛び、ハンマーを叩きつける。
狙ったのは立てていた膝だったので、そこを攻撃されたロックゴーレムのバランスがさらに崩れて仰向けに倒れた。
「ふん!」
倒れたロックゴーレムの顔面に硬直が解けた源さんがハンマーを振り下ろす。
しのぶさんが行ってすぐに解けてたから、硬直時間はそこまで長いわけじゃない。
後は関節を執拗に狙うしのぶさんと、とりあえずハンマーを振り下ろす源さんによって倒されるまで、ロックゴーレムは手足をバタつかせる程度だった。
源さんが頭側にいるせいで、しのぶさんが集中して狙われたんだけど、全く当たる気配がなかった。
「よし!採掘して次に進むぞ!」
「わかりました」
「はい!」
メッセージは届いてなかったので、もう少し探索を続けることにして、ロックゴーレムが沢山いるところと地底湖しか知らないから、とりあえずロックゴーレムの方に進んだ。
探せば他に道があるかもしれないけど。




