しのぶさん縦横無尽
しのぶさんんと一緒にリトルロックゴーレムが出現するエリアに入った。
すると出迎えてくれたかのような距離に1体いた。
「これがリトルロックゴーレムですか。まずは1人でやらせてください!」
「わかりました」
しのぶさんには道すがらリトルロックゴーレムについて説明しておいた。
腕を攻撃すれば取れることや、ツルハシ持ちがボーナスモンスターだということも。
その時にアイアンゴーレムを倒したのは僕と今日会う人だと伝えたら、驚かれた後に悔しがられた。
ハピネス達がアイアンゴーレムと戦う姿を見たいらしい。
帰りに戦ってくれと言われたけど、丁重にお断りしたよ。
ミヤビちゃんの代わりになりそうなラナンキュラスがいるとはいえ、勝てるかわからないのに並んでまで挑みたくない。
ちなみにミヤビちゃんの情報は教えていない。
名前ぐらいいいかと思ったんだけど、どうせこの後会うし。
「せい!」
しのぶさんはリトルロックゴーレム走って近づき、その勢いのままに蹴り上げた。
「はぁ!」
しのぶさんは飛ばされたリトルロックゴーレムを追って飛び上がると、空中でかかと落としを放って地面に叩きつけた。
バキッと音を立ててヒビ割れるリトルロックゴーレム。
もちろんHPバーは砕け散ってる。
「この程度であれば問題ないですね」
「流石ですね、一応聞いときたいんですけど、苦無は投げないんですか?」
「あー。相手は石なので投げませんよ。まぁ、投げても当たりませんけど……」
蜂の時は毎回投げてたから念のために聞いてみたんだけど、悟りを開いてるかのように諦めた口調で答えられた。
「投擲スキルとかないんですか?」
「ありますけど取るつもりはないです。他に欲しいスキルもあるので。最悪投げなくても近づけば切れるので問題ありません。投げてるのは半ば意地のようなものですよ」
「な、なるほど」
しのぶさんは投擲を取ってない上に取るつもりもないらしい。
確かに苦無は切ることにも使えるから問題ないかもしれないし、当たらなかったら意地になって投げたくなるのもわかる。
戦い方は人それぞれだから僕からは何も言わないけど、苦無が原因で何か悪いことが起きないように祈っておこう。
「討伐対象モンスターの強さもだいたいわかったので続けましょう。オキナさんも誰か出してください!さぁ!」
「わ、わかりました。人形の館、ハピネス来い。繰り糸」
「ハピネスちゃん!」
ハピネスを出したらしのぶさんがすごく喜ぶんだけど……。
初めに見たからかな。
「ハピネスちゃんにツルハシを?!小さい体に大きなツルハシ!とてもいいです!頑張ってる感じがします!」
アイテムバッグからツルハシを取り出してハピネスに持たせると、しのぶさんのテンションがさらに上がった。
その気持ちはわかるよ。
「どうしてハピネスちゃんにツルハシを持たせるんですか?」
「人形使いは武器を持てない職業なんですけど、ツルハシも武器として扱われるので持てないんです。なので、僕の代わりにハピネスに掘ってもらってます」
「そうなんですかぁ。いいなぁ〜」
「しのぶさん?行きますよ」
しのぶさんはしゃがんでハピネスを見だし、動かなくなった。
まさかハピネスに足止めされるとは思わなかった。
けど、これだったらハピネスを移動させればしのぶさんが付いてきそうだ。
「あぁ、待ってください」
案の定ハピネスを動かせばしのぶさんが付いていった。
しばらくはこのままで進もう。
そして、ハピネスを動かしてる僕が道を決めれるから、地底湖へと続く道とは逆方向、ミヤビちゃんと一緒に崖から来た道の方へ進むことにした。
向こうに行ったからといって首長竜と戦うことになるわけじゃないけど、ロックゴーレムもいるし、別の道を見つけてしまったら行きたくなるかもしれない。
そうなると約束の時間に間に合わなくなる可能性も出てくるからね。
別に首長竜に近づきたくないわけじゃないよ。
ハピネスを先頭に狭い通路を進むと、ツルハシを持ったリトルロックゴーレムが2体、ツルハシと鉄鉱石を持ったリトルロックゴーレムが1体いた。
3体だけど、全員糸で縛ってから戦うこともできるから、追加で人形は出さない。
「僕が相手を動けないようにするので、その後に攻撃しましょう」
「いえ、3体なら任せてください。ここなら問題ありません」
「そうなんですか?じゃあ、お願いします」
しのぶさんが自分でやるって言ってきたので任せることにした。
リトルロックゴーレムだから何かあってもすぐに助けれられるだろうし問題ない。
「では。地走り」
しのぶさんは両手に苦無を持って姿勢を低くした。
当たらない苦無を投げるのかと思ったら、急にしのぶさんの姿が消えた。
そしてリトルロックゴーレムの向かっていく姿が見えたんだけど、天井を走ってた。
そのままリトルロックゴーレムの頭上まで走っていくと、天井を蹴って苦無を突き刺した。
蹴った勢いのおかげか苦無は半ばまで埋まっていて、そこを中心にリトルロックゴーレムにヒビが入り2つに割れた。
もちろん1撃だ。
しのぶさんはリトルロックゴーレムが倒れたことを確認すると、今度は壁に立った。
残った2体のリトルロックゴーレムはしのぶさんを追って壁に近づき、全力でツルハシを振る。
だけど、しのぶさんの立ってる位置が絶妙で、届きそうで届かない位置だった。
当たることがないツルハシを振るリトルロックゴーレムに対して、しのぶさんは手に持った苦無を投げた。
当たらないかと思いきや、この距離で相手が移動しないのならさすがに当てられるらしく、右手の苦無だけ当たり、リトルロックゴーレムを転がした。
左手で投げた苦無は、リトルロックゴーレムの横を通って地面に当たり、刺さることなく転がった。
「くぅっ!」
悔しそうな声をあげて壁を蹴って天井に着地。
続けて天井を蹴って落下しながら左手首の下から少し太い針を抜いてリトルロックゴーレムに突き刺す。
苦無よりも深く突き刺さった針は中程で折れてた。
それでも1撃で倒せてることに変わりはないんだけど、リトルロックゴーレムを倒すのに武器1つ消耗するのは勿体無い気がする。
「はぁ!」
苦無が当たって転がった方のリトルロックゴーレムは、HPが1割ほど残っていたので、しのぶさんが落下の勢いを利用して踏み潰してトドメを刺した。
「ふぅ……。ここなら地走りが活かせますね」
ツルハシと鉄鉱石を回収したしのぶさん。
地走りってなんなんだろう。
天井を走ってたやつかな。
「地走りってどんなスキルなんですか?」
「物体を地面に見立てて立ったり、走たりするスキルですね。水の上は走れませんし、魔力の壁?も走れませんでした。ですが、こういった洞窟のような場所なら天井も走れるようになるので便利です」
「確かに上から不意打ちできたり、壁に張り付いてモンスターをやり過ごすのは便利そうですね」
確かに便利だけど、僕は糸で天井に貼り付けるからいらないかな。
それに、スキルスロットも空いてないしね。
「便利なんですけど、忍術スキルの1つなのでオキナさんには取れないんです」
「職業固有スキルですか?で僕は別の方法で同じようなことができるので、取れたとしても取ることはないですね」
「そうなんです!固有スキルなんですよ!それで、別の方法というと糸ですか?」
「そうです。こんな感じです繰り糸」
右手で糸を天井に貼り付けて短くすると、糸に引っ張られて僕の体が浮き上がる。
「繰り糸」
今度は左手で壁に糸を付けて、右手の糸を切り離すと同時に短くした。
左手側は壁なので、出っ張りに足をかければ何とかバランスが取れるけど、出っ張りがなければ壁に吊るされた状態になる。
攻撃するのはハピネス達だから吊るされた状態でも問題ないんだけど、あまり格好良くないよね。
やるなら天井かな。
「糸も便利ですね!」
「結構色々できますよ」
それぞれのスキルについて話した後探索を再開した。
この後もリトルロックゴーレムと遭遇したけど、ツルハシを装備したハピネスとしのぶさんの手で倒されていった。
ミヤビちゃんと回った時に見つけた採掘ポイントでは、しのぶさんだけが採掘できた。
やっぱりまだ採掘できる状態になってなかったね。
掲示板で調べたらβ版だと1日1回で、正式版も同じと書かれていた。
復活するのも日付が変わった瞬間らしい。
僕がここから掘れるようになるのは明日ってことだね。
鉄鉱石はリトルロックゴーレムが持ってる場合があるから手に入るけど、もっと手に入れるなら採掘ポイントを探すしかない。
だけど、今進んでるルートにはもうなかったし、リトルロックゴーレム討伐クエストも8/20だ。
こうなったら地底湖に続く方に行くしかない。
ロックゴーレムに用はないから段になってる場所に行くかはわからないけど。
採掘ポイントはあったから時間があったら行ってもいいかもしれないね。
「ぬぅん!鉄鉱石を出さんかー!」
しのぶさんに最近ポイントとリトルロックゴーレムのことを話して段へと続く場所に行くと、紺色の甚平を着て歯の低い下駄を履いたお爺さんが、叫びながらリトルロックゴーレムをハンマーで粉々にしていた。




