防御人形ラナンキュラス
2017/7/18 23:33 転移室を出る前にハピネスに右手をつけて人形の館に収納しました。
花畑から工房に転移した。
転移前にハピネスへと繋がっていた糸は出たままで、糸の先にはハピネスがいた。
糸を繋いだ状態で転移をしたら人形ごと入れるんだ。
これがあれば強敵と戦ってても転移で逃げられるかもしれない。
レイドバトルの時に使えるのかはわからないけど。
次はアイテムバッグを確認する。
これでハピネスの右手があれば、戦闘中に工房に移動しても腕なんかのパーツや人形を置いて逃げたとしても回収できる。
それに、工房のレベルが上がればできることも増えそうだから、旅に出た時の休憩にも使えると思う。
次に解放されるのがキッチンだったら旅の間の食事が作れるようになるし
確認した結果、右手はアイテムバッグに入っていたので取り出し、ハピネスにつけた。
「人形の館。ハピネス収納」
転移室を出る前にハピネスを収納しておく。
この後ハピネスを使うわけじゃないからね。
「お帰りなさいませ。オキナ様」
「ただいま」
この迎えにもようやく慣れてきた。
まだ、工房が家って感じじゃ無いからあいさつには違和感があるけど。
「人形を作りますか?装備を作りますか?それとも、性能評価室で訓練しますか?」
「え?あ、えっとクエスト報告かな」
「かしこまりました。それでは、応接室へご案内いたします」
ゼロワンさんがよく聞く新婚の夫婦がするやりとりのように来訪の内容を聞いてきた。
内容が内容だから全然嬉しく無いけどね。
「こちらで少々お待ちくださいませ」
ゼロワンさんは僕を応接室に案内し、机に紅茶とクッキーを置くと部屋から出て行った。
【?????】を取りに行ったんだと思う。
机に置かれた紅茶やクッキーは以前とは違う種類のようで、紅茶は香りが抑えめで少し苦味があるんだけど、それがいいアクセントになってるし、付け合わせのナッツ入りクッキーに合う。
そういえばこの紅茶やクッキーはどこで作ってるんだろう。
茶葉はアイテムボックスに入ってるとしても、クッキーもそうなのかな。
キッチンが解放されていればそこで作られてるって思うんだけどね。
もしかしたらゼロワンさんの管理している場所の中で僕が行ってない場所に何かあるのかもしれない。
例えばプニおさんが出てきた所の奥とかに。
気になるからゼロワンさんが帰ってきたら聞こう。
別にコロッセオから行ける場所だったとしても今は行くつもりはないし、聞いたからといって食べなくなるわけじゃない。
素材がモンスターだったとしても見た目に問題がなければ僕は食べることができるし、そもそもコロッセオの先だと今の僕じゃ行けない可能性が高い。
レシピ本がある場所に行く条件が繰り糸を10本出せるようになるか、完全な人形が作れるようになるかだけど、行く先はコロッセオの先だと思う。
ゼロワンさんの管理しているここで行ってないのはそこだけだからね。
「お待たせしました」
クッキーの素材について考えているとゼロワンさんが戻ってきた。
いつものトランクケースを持ってるんだけど、いつもは片手だったのに今回は両手で持っている。
重いのかな。
「それでは、クエストの精算をさせていただきます」
「はい」
トランクケースを椅子の横に置いて座ったゼロワンさんは、メニューを開いて操作した。
クエスト状況を確認中だ。
「はい。確認しました。それでは、こちらが報酬になります」
ゼロワンさんがお盆に乗ったメモ帳とトランクケースを机の上に置き、トランクケースの留め金を外して中身を僕の方へ向けた。
中にはトランクケースいっぱいの大きな盾が入っていた。
メモ帳は人形の館Lv4のスキルの書だろうけど、なんでトランクケースに盾が入ってるんだろう。
人形使いは盾を装備できないのに……。
人形に装備させる用のアイテムなのかな。
「まずはスキルの書をお使いください。トランクケースの中身についてはその後ご説明します」
「わかりました」
怪訝な顔をしてたのの気づいたのかな。
とりあえず言われた通りメモ帳に触れると光になってアイテムバッグに入る。
それを取り出して開くと、開いた瞬間光になって視界の右下にアナウンスが流れた。
『人形の館のレベルが4になりました。収納上限が25になりました。【公園】が解放されます』
大通りの次は公園だった。
公園がどのくらい広いのかわからないけど、アイテムを持って入らせて人形の館で管理するつもりだから、そろそろ閲覧モードで中を確認するべきだね。
工房にアイテムボックスがあるから今のところすぐにやるつもりはないけど、イベントまでにはやっておくべきだと思う。
「それではトランクケースの中身についてです。こちらは防御人形のラナンキュラスです。防御人形と書いてディフェンスドールと読みます。ラナンキュラスが使用する武具は伸縮する槍と盾なのですが、盾が大きいためトランクケースに入れると体を隠してしまいます」
「防御人形……。この盾の下に人形が入ってるんですか……」
言われてみるとトランクケースの深さに対して盾のある場所が上すぎる。
盾の下に人形があっても不思議じゃない。
「それではラナンキュラスに繰り糸を使用してください」
「わかりました。繰り糸」
盾に向けて糸を放つ。
盾を経由してその下にある人形の体まで光が包み込んだみたいで、ラナンキュラスの機巧がわかった。
ラナンキュラスの戦い方はミヤビちゃんとほとんど同じだ。
ラナンキュラスを立ち上がらせる。
ピンクに白いメッシュの入った髪をポニーテールにしていて、結び目は白色の細いリボン。
目の色は薄っすらとピンクがかかっているけど、少し白よりに見える。
服装は頭に目を守るためなのか、バイザーの様な白いヘルムを付けていて、上下にスライドすることで付け外しができるみたいだ。
後頭部には留め金がある程度なので、正面しか守れないね。
体には背中が大きく開けた白いドレスアーマーで、胸下は白い金属っぽい物で覆われていて、所々に白いフリルがピンクの糸で付けられている。
腕には二の腕までを覆う白いガントレットを付けていて、右手には正面から見ると二重の円に見えそうな段になった白い槍が握られてる。
あの段を基準に伸縮するんだろうね。
槍が飛び出して長くなると思う。
左手には体をすっぽりと覆う白い盾を持っている。
形は下が尖って上が大きいしずく型に近いけど、両端と中央が尖ってる。
盾の表面にはガラスの様な透明な何かがはめ込まれていて、その奥にある本当の表面には2枚の羽のマークが刻まれている。
腰から下は白いスカートにピンクの糸で羽が刺繍がされていて、白いニーソックスにも同じ様に刺繍が入っている。
全部白いせいでワンポイントとしてのマークが映えるね。
靴は膝上までの白い金属っぽい物でできたブーツで、これにも羽のマークが入っている。
ラナンキュラスのトレードマークが羽なんだろうね。
武装の中にもあるし。
「それでは機巧の説明に入らせていただきます。右手は突き抜ける槍です。防御無視で雷属性の貫通攻撃を行います」
貫通攻撃ミヤビちゃんがアイアンゴーレムに使っていた『螺旋槍』と同じ様なものだけど、1つ違うのが機巧を使用した時点で一気に加速して突き入れることかな。
雷を纏って一気に突っ込むから雷属性の攻撃になる。
「左手は鏡写しの盾です。機巧使用時のみ魔法やスキルを跳ね返す盾に変わります。通常時は普通の盾です」
ミヤビちゃんは魔法を無効にする盾だったけど、ラナンキュラスの盾は機巧使用中のみ魔法とスキルを跳ね返せるものだ。
跳ね返せるのは込めた魔力の分だけだから、相手が大技を使ってくる場合、大量にMPをつぎ込まないといけない。
MP管理がどんどん面倒になるよ。
「口は神に仇なす者への裁きです。対象の強化効果を弱体に変換します。1度の使用で1つしか変換できませんので、複数強化している場合その数だけ使わなければならない可能性があります」
変換する対象は選べないから、相手が4つ強化していて弱体化させたい効果が変換するのに最大4回使わないとダメみたいだ。
しかも、機巧を使うと口から雷を出すんだけど、それが当たらないと変換されないんだよね。
防御人形だから、あんまり遠くにやらずに僕の守りに使いたいんだけど……。
高速で移動する手段は繰り糸を繋いだおかげで腹部機巧の内容がわかったんだけど、それでできそうだ。
「最後に腹部機巧についてですが、駆け抜ける翼です。腹部と言いながら背中に白い羽が生えます。そして、飛行が可能になる上に、羽を当てることで対象を切りつけることができます」
背中が出ているドレスアーマーだから、使用時にはスキンが破けるだけで済む腹部機巧だ。
1対の白い羽を生やしてる飛ぶことが可能で、高速で飛び回れるらしい。
しかも、その翼自体にも攻撃能力があって、すれ違いざまにぶつけるだけで切りつけることができる。
ラナンキュラスに同期操作を使えば、僕も空を飛ぶことができる。
戦い方もミヤビちゃんを参考にできそうだから、これで1人で戦う時の防御面が少し改善された。
しばらくは練習が必要だろうけど。




