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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記–  作者: 星砂糖
第1章 –World Wide(ログイン2日目)-
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木材は売り切れ

狼を引き連れたミーシャちゃんは湖を迂回して、そのまま森へと消えて行った。

狼を慈しみながら歩く後ろ姿はどこか神秘的な感じがしたんだけど、よく目を凝らして見ると『仲良くなった狼を森へ帰す少女』に見えてきた。

どことなく普通の町娘感が出てるんだよね。

服装のせいかな。


ミーシャちゃんの服装は薄緑のワンピースというシンプルなもので、これが野性味溢れる毛皮装備だったら狩人や狼に育てられた少女に見えなくもないんだけど……。

そっちはマサムネちゃんで足りてるからいいか。

今のままもふもふを求めるミーシャちゃんで居てくれることを願おう。


ミーシャちゃんが見えなくなったので、木工所予定地に移動する。

大きな木を鉋で削っている人や、釘を使わずに木をはめ込んで何かを作ってる人達がいる。


「ん?俺たちに何か用事か?」


僕が近づいてくることに気づいた1人の青年が声をかけてきた。

服装こそファンタジーなゴワッとした物なんだけど、頭に白いタオルっぽい何かを巻いてるせいで、建築現場の若手に見える。


「えっと、木材を売って欲しいんですけど……こういう感じに加工されたやつを」


アイテムバッグからカシンの木片を取り出して青年に見せる。

ロールケーキが入りそうなぐらい大きいインゴットより、さらに一回り大きい木片。

これより大きくてもいいんだけど、大きすぎると素材が無駄になる。

このサイズでも全部木で作ろうとした余剰分が出て破棄されてたぐらいだし。

適正サイズを求め様にも作るパーツや人形の形状によって変わるだろうから、できるだけ同じサイズの素材で慣れたい。


「あー。すまん。今木の在庫がないから売れるものがないんだわ。今作ってるのもコテージで使う雑貨と建材ばっかなんだ」


青年が指差した先には、木で作られた皿やコップ、机に椅子などの家具や、鉋で綺麗に整えられた柱が何本かあった。

すでに用途が決まってるなら仕方ないと思うけど、何で木が無いんだろう。

樵もたくさん居そうなのに。


「在庫がないなら諦めます。でも、周囲にたくさん木がありますけど、在庫不足になるんですか?」


開拓されたとはいえ、湖の周りにはたくさん木がある。

これを樵が切り倒せばすぐに在庫は確保できそうなんだけど……。


「それがよぉ。ちょっと前に海賊みたいな格好したやつが木を大量に買い占めて行ったんだよ。しかも、足りないからって樵を連れて木を採りにいったから、こっちに補充が追いついてないんだ。結構な金を払ってくれたから無碍に扱えないし、急ぎで作らないといけない物もなかったからな」

「あぁ……あの海賊が……」


タコのレイドボスに襲われて船を壊されたから木を手に入れにいくって言ってたけど、まさか自分で採らずに樵を雇うとは思ってなかった。

けど、伐採スキル無しで切り倒すのと、スキルを持ってる樵に切ってもらうのでは樵の方がいいんだろうから雇ったほうが効率がいいのかもしれない。


それに、レイドボスってことはテンペストバード(幼)と同じぐらい強いのかもしれない。

そんなモンスターと船の上や水中で戦ったんだとしたら船が壊れるのもわかるし、船がないとダメな職業なら直すために手を尽くそうとするのもわかる。


僕もハピネス達が壊れたらゼロワンさんに直し方を聞いて必要な素材を集めるために奔走すると思う。

どうしても無理だったら一旦諦めるかもしれないけど。


「もし、木があったらこの形にすることは可能ですか?」

「んー。できなくはないが何に使うんだ?そのサイズだと家具にも木工にもほとんど使えないぞ?」

「型にはめ込んで作るんです。なので、大きすぎてもダメなんです」

「はー。なるほどなぁ。木があれば作ってやってもいいぞ。ただし、お金はもらうからな」

「もちろんお支払いします。他に問題はありますか?」


もちろんタダでやってもらおうとは思ってない。

木を手に入れるところからやってくれそうだし、多少高くついてもいい。

他に気になるところがあれば今の内に潰しておきたいんだけど……。


「うーん。そうだなぁ……あんまりそそられる形じゃないのが問題だな!」

「ただの長方形ですからね」

「だな!それでどうする?依頼するか?」


青年は僕の答えが面白かったのかニヤリと笑った後、依頼するか聞いてきた。

今すぐ必要ってわけじゃないからいいかな。

右腕を作る職業クエストも、ゴーレム坑道で拾った石を使ってやるし、足りなくなったらまた取りに行くつもりだ。

何というか、木の腕はそこまで強くないイメージがあるんだよね。


「今はやめておきます。また必要になったら来ますね」

「そうか。じゃあその時はよろしくな!」

「はい。こちらこそ宜しくお願いします」


青年と軽い約束をして木工所予定地を後にした。

この後は職業クエストのためにブラウンラビットを狩るつもりだったけど、今もヌシ釣りの森に来てる冒険者もいるから、帰りに倒せるかわからない。

森の中の花畑に行くついでにモンスターを倒したほうがよさそうだ。

花が手に入ればうららさんに渡せばいいし、手に入らなかったとしても職業クエストがクリアできればいい。


そうと決めればミニマップを見ながら、以前通ったマッピングされた道を進むことにした。

この道通りに行けば花畑に着くからね。


昨日と同じように道無き道を進む。

他の人が通ったような跡はないけど、他に道がありんだろうか。

あるいは全員それぞれの道無き道を行ってるのかな。


しばらく進むと草の輪が4つあった。

名前のわからない球根のモンスターだね。

アイテムボックスに入れたアイテムの中に『雑草魂の球根』なんて物があったから、こいつらの名前は『雑草魂』かもしれないけど、判明するまでは草の輪とか草でいいや。


繰り糸(マリオネット)


カシンの腕を取り出して糸を繋ぎ、輪の根元に投げる。

木の腕だとそのまま投げれることができたけど、鉄の腕だと投げるのに回さないとダメだから、こういう近距離用のためにもう少し木の腕を追加で作ってもいいかもしれない。

石の腕も重くなるだろうから、簡単に投げれないだろうし。


草の輪の根元をしっかりと掴ませて、糸を短くしながら勢いよく引っ張る。

ボコッと音を立てて球根が引き抜かれ、HPが半分まで減っていたので、そのまま振り回して木に叩きつけた。

これで倒すことができたから、残りの3つも同じようにして倒した。

向こうから攻撃してこないから職業クエストにちょうどいいモンスターかもしれない。


草の輪を探しながら進んだけど、追加で見つけることができなかった。

輪になってなくて見逃してしまったのかもしれない。


そして、聞こえてくる羽音。

痺れさせてくる蜂が近くにいる証拠だ。


人形の館(ドールハウス)。ハピネス来い。繰り糸(マリオネット)


痺れた時も糸で繋がっている人形を操作することはできたので、保険としてハピネスを出して糸を繋ぐ。

これで蜂が大量に押し寄せてきて痺れてしまっても応戦できるから、死に戻りすることはなくなるはず。


カシンの腕を振り回しながらゆっくり進んでいくと、前方から蜂が1匹飛んできた。

このまま進むと花畑だから蜜でも採ってたんだと思う。


回転していたカシンの腕を放つことなくそのまま当てる。

当たった蜂は地面に叩きつけられて、そのまま光になって消えた。

蜜を採りに来ている蜂は1匹じゃないと思うけど、一撃で倒せるようなのでこのまま花畑に進む。


予想通り花畑には8匹の蜂が飛んでいた。

さっきの1匹を倒したからか、全部の蜂がこっちに迫って来たのを振り回したカシンの腕で迎撃する。

プロペラのように前で回転させれば、糸の長さを調整するだけで当たった。


途中腕をすり抜けた1匹がいたけど、そいつはハピネスの右手に剣を(ライトセイバー)で迎撃した。

他の蜂を倒したことで職業クエストをクリアできてたし。


蜂を倒したので改めて花畑を見ると、昨日摘んだ花は元に戻ってなかった。

戻らないのか、時間がかかるのかわからないけど、摘みすぎるのは良くなさそうなので、昨日摘んだ色をそれぞれ10本ずつ摘んだ。


あとは街に帰るだけなんだけど、ここから工房に行けるはずだからこのまま行ってもいい。

ハピネスを使って実験もしたいし。


なので、カシンの腕をアイテムバッグに収納して、繰り糸(マリオネット)がハピネスに繋がれていることを確認した。


「工房!」


ハピネスの右手は拾わず、人形に糸を繋いだ状態でどうなるかの実験だ。


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