表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
斬魔剣エクスブラッド 〜限界突破の狂戦士〜  作者: 帆ノ風ヒロ / Honoka Hiro
Episode.01

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/146

30 蛇頭。てめぇは俺が討ち果たす!


防空壕ぼうくうごうか?」


 戦時中に掘られた後、長い間放置されていたのだろう。辺りには雑草が生い茂り、土砂が吹き込み埋もれかけている。だが、よく見るとそこにはアニキとグレイが転がり、鬼斬丸きざんまると手鏡までもが無造作に置かれている。


「あの野郎、どこに行きやがった……」


 敵は間違いなくここにいる。緊張で喉がカラカラになり、背中へイヤな汗が伝う。

 走り続けてきた俺たちの息遣いだけが、やけにはっきりと聞こえてきて。それが、否が応でも緊張感を高めてゆく。


 怖くて仕方ないがこれでも男だ。せめて女子の前くらいでは格好良くいたい。


 勇気を奮い起こし、朝霧あさぎりを背後へ庇うように位置取りながら剣を強く握る。先程まで感じていた霊力れいりょくが、今は近すぎて分からない。


『ミナ、後ろ! カズヤ、Cを全展開!』


 通信機からのセレナさんの声で、弾かれるように背後を振り向く。するとそこには、頭上の枝へ逆さにぶら下がった蛇頭の姿が。


 あいつは遠心力を利用し、両手の鋭い爪を振りかざして迫っていた。


「シールド!!」


 即座に霊力の盾を前方展開。朝霧の体を引き寄せ、盾の中へ引き込んだ。


 だが、相手の強さは俺の想像を軽々と超えていた。敵の爪が盾へ食い込み、卵の殻を割るように大きな亀裂が走る。


「っざけんな!!」


 思わず悪態が漏れた。これでも最大に近い威力で盾を展開している。それが、こうも簡単に突き破られてしまうなんて。


 直後、その亀裂から強風でも吹き込んだように、盾は跡形もなく砕け散っていた。


「うおぉっ!」


 衝撃で体が浮き上がり、勢いに飲まれるがまま後方へ吹っ飛ばされた。俺と朝霧は、散り散りになりながら地面を激しく転がる。

 痛みに呻いている暇はない。地面に肘を突きながら慌てて体を起こした。


 泥と雨にまみれたワイシャツが、体にべっとりと張り付く。逃れられないその感触は、目の前の悪魔から感じる霊力そのもの。


 四つん這いになった俺の視界へ映り込んだのは、鱗に覆われた蛇頭の足。ゆっくりとした歩調で距離を詰めて来ていたらしい。


 呑気にしている蛇頭へ、不意打ちの一撃を。


「イレイズ・キャノン!」


 四つん這いの姿勢のまま、右手だけを持ち上げて霊力球れいりょくきゅうを放った。この至近距離なら、確実にダメージを与えられるはず。


「ほい!」


 だが、悪魔は右手を軽く振るっただけで、その一撃を容易くはね除けた。


 顔を上げた姿勢のまま、呆気に取られて固まってしまった。そんな俺を狙い撃つように、相手の蹴りが横手から迫っていた。


「がっ!」


 頬と首を強烈な衝撃が襲った。声にならない苦悶くもんの呻きが漏れ、横倒しになったまま地面を情けなく滑ってゆく。


 たかが蹴り。それを一度受けただけだというのに動けない。体が言うことを聞かない。


「あれあれ〜? どうしちゃったのさ? てっきり、バッツァ君と遊んでいると思ったんだけどなぁ……二人足りないけど、もう死んじゃった? 残念だったねぇ〜。ゲヒヒヒ」


 愉悦ゆえつに満ちた声と共に蛇頭が再び近付いてきた。泥水を跳ね上げる不快な足音が一歩ずつ確実に近付いている。

 その音はまるで、俺の体から流れた血液なんじゃないかと錯覚してしまう。死へと誘う一歩が確実に近付いている。


 考えろ。この状況を打破する策を。揺れる視界の中、どうにか頭を働かせた。霊力球が通じない以上、剣を突き刺す以外にない。


 だが、最初の攻撃で吹っ飛ばされた際、肝心の剣はどこかへ行ってしまった。この様子だと霊撃輪れいげきりんの中へ戻ってしまったはず。悪魔の隙を突いて具現化ぐげんかできるだろうか。


 まずは、敵の気を引かないと始まらない。


「そんなマヌケ顔をしていられるのも今のうちだぜ……あの蝙蝠こうもりは死んだよ。情けないほどあっさりな……今度はてめぇの番だ。俺が絶対に討ち果たしてやる……」


「あぁ?」


「ぐあぁっ!」


 怒りを込めた低い声と共に、腹部を圧迫される重々しい衝撃。悪魔の右脚が俺の腹部を踏み付けていた。


「冗談が好きなんだねぇ〜。負け惜しみってわけ? もう少しなぶるつもりだったけど、あんまり生意気なこと言ってると、このまま踏み潰しちゃうよ?」


「勘弁してくれよ……苦しむのは苦手でね……やるならいっそ、噛み殺してくれ……」


 呻くように言葉を発すると、縦長の瞳孔を持つ目が冷たく見下ろしていた。


「狙いは何かな? ボクちんが近付いた隙に、さっきの技をもう一度試すつもり? 甘い。甘すぎるよねぇ〜」


 さすがにこの程度はお見通しか。こうなってしまうと、まさに打つ手無しだ。何か他に方法は残されていないのだろうか。


 すると、蛇頭の口元から赤い舌が覗いて。


「苦しみたくないなら、一瞬で死んでごらんよ。頭を貫いてあげるからさぁ」


 鋭い爪の伸びる右手が、顔を狙って振り下ろされていた。相手の手首を掴み、それを鼻先すれすれの所でどうにか受け止めた。


「ほらほら。力を抜くと一気にブスリだよ? 頑張って押し返してごらんよ」


 ニヤリと笑う口元が腹立たしい。完全に遊ばれている。


「くそっ! ふざけんなっ!!」


 だが、両手で力を込めているというのに、こいつの右手を払いのけることができない。

 曇り空から降り注ぐ雨が、絶えず顔を打ち続けている。泣きたいのは俺の方だ。


「あれあれぇ? どうしたのかなぁ? まさか、これで本気ってわけじゃないよねぇ?」


 これは本気でまずい。そう思った直後だった。悪魔の後頭部で大きな爆発が起こり、敵は前のめりに体勢を崩したのだった。


 押し込まれる重圧から不意に解放され、すぐさま地面を転がり敵から距離を取る。

 そんな回避行動を取りながらも、何が起こっているのかまるで分からなかった。この耳へ、あいつの声が聞こえるその瞬間まで。


「私がいることを忘れているんじゃないの? 言っておくけど、彼より実勢経験は豊富なのよ。甘くみないことね」


 即座に体を起こした俺は、装飾銃そうしょくじゅうを構えたままの朝霧へ並んだ。


「悪い……助かった」


 彼女に助けられてしまったことが情けなくて。こちらを振り返る悪魔を見つめたまま、それをつぶやくのが精一杯だった。


「消音効果付きの弾丸はどうだったかしら? さすがのあなたも気付かなかったようね」


 朝霧の言葉を受け、鋭い視線を向けていた蛇頭は再び舌を覗かせ微笑んだ。


「まぁ、これくらいやってくれないと面白くないよねぇ……もっと楽しませてよ」


 怒りを含んだ眼光に、心臓を打ち抜かれたような恐怖を感じる。しかし、朝霧はひるむ様子など微塵みじんも見せず、相手へ近付いて行く。決して挫けない芯の強さを感じる。


「かかってきなさいよ。あんたなんて返り討ちにしてあげるわ!」


 ここからは後ろ姿しか見えないが、その声には余裕すら感じる。しかも銃を持っている右手を自分へ振り、呼び込みの挑発まで。


 こいつ無茶苦茶だ。蛇頭を怒らせても何の得もない。だが、あの左手の仕草は……


「勝ち気なお嬢ちゃんだねぇ。嫌いじゃないけどムカつくよ。先に死んどく?」


 牙をむき、両手を一杯に広げて飛びかかってくる蛇頭。その指先には、全てを引き裂くような鋭利な爪が伸びている。


「くそっ!」


 チャンスはここしかない。恐怖を押し殺し、覚悟を決めて朝霧と蛇頭の間へ駆け込んだ。


 両手から繰り出された十本の爪が迫る。まともにくらえば、野菜を刻むようにあっさり切り裂かれて終わりだろう。


「シールド!」


 目の前へ霊力壁れいりょくへきを展開。容易く破られた先程のものとは違う。前面展開の範囲を更に絞り、霊力の出量を上げ防御力を高めたものだ。


 直後、蛇頭の突き出した両手が盾へ深々と突き刺さってきた。後ろへ弾かれそうな衝撃に襲われるも、両足に力を込めてどうにか踏み留まった。


「うおぉぉぉぉぉ!!」


 ダメ押しとばかりに霊力を注ぎ込む。ほんの数秒でいい。こいつの両手を封じることさえできれば、そこに勝機を見出せる。


「このっ!」


 両手を引き抜こうと動いた悪魔だったが、俺の霊力壁がそれを飲み込んで離さない。

 敵が狼狽ろうばいした一瞬の隙。そこを突いて、俺の背へ張り付いていた朝霧が伸び上がった。


 味方同士なら能力が干渉し合うこともない。朝霧の手にした装飾銃は霊力壁れいりょくへきをすり抜け、蛇頭の口内へねじ込まれる。


「ブラック・シュート!」


 銃口へ溜め込まれていた霊力に、属性変化の能力を加えた強烈な一撃が炸裂。空気を満たした紙袋を叩き割ったような甲高い破裂音と共に、小爆発が起こった。


 口内でそれをまともに受けた蛇頭。次の瞬間、その頭部が粉々に弾け飛ぶ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ