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星に願いを

作者: 華遊

……このまま時間が止まってしまえばいいのに


今は3月。

もう春だと言うのに、まだまだ寒さは収まらない。

冷たい夜風に吹かれ、空を見上げた。

世界を包み込むような、満天の星空。全ての星が等しく美しい。

キラリ、と一段と明るい星が流れる。今日は流星群。夜を飾る幻想的な瞬間が続いていた。


美しい風景を見るうちに、思考は内側へと反響する。


……このまま時間が止まってしまえばいいのに

俺は思う。

楽しい時、素晴らしい時。

感動した時、喜ばしい時。

そんな、ざっくりとした「いい時間」。

そんな時間が永遠に続けばいいのに、と。

俺はこれから先、どう生きていけばいいのだろう。


もうじき新学期が始まる。そうなるともう3年生。卒業まで一年を切るのだ。


俺は卒業後、何をしているのだろう。


進学して大学に入り、自分の好きな勉強をしているのだろうか。

就職して会社に入り、日々の生活の為に働いているのだろうか。


その問いに、応える声はない。


悩んでいるのだ。優柔不断だと罵ってくれて構わない。

自分がこれからどうすればいいのか。どうあるべきなのか。

その選択は正しいのだろうか。間違ってはいないだろうか。

俺は、そんな事を決めることが出来ない。


片方を選択し、もう片方を切り捨てる。その、切り捨てた選択肢の先にある未来……それを、本当にここで失っていいものなのか。


きっと、自分は欲張りなのだろう。

誰よりも酷く強欲で、しかし謙虚で、それでいて臆病なのだ。だからこそ、何かを選ぶことが出来ない。


だが、もし、無限に時間があるのだとしたら?

それは有り得ない事だが、今はそんな事はどうだっていい。


もし、無限に時間があるのだとしたら、きっと悩むことはないのだろう。

問答は、時間が限られているからこそ悩むのだ。

無限に時間があるのなら、すべての選択肢を実行してしまえばいい。いや、逆にどちらも選ばないままでもいいかもしれない。

強欲に、全ての選択肢を選べば……きっと全ての答えを得ることが出来るだろう。

謙虚に、何も選ばないままでいれば……永劫考え悩むことなどなくていい。


流星が一つ、空を過ぎった。

幼い頃に聞いたおまじない。

流れ星に向かって願いを三度言うことが出来たなら、その願いは必ず叶う。

そんな、子供騙しのおまじない。

今はもう信じてないし、そもそもあんな勢いで流れる星に、三度も願いを聞いてもらえるとは思えない。所詮は気を紛らわす程度のもの。なんの意味もない。

そんなことは分かっていたはずだった。


また一つ、流星が空を過ぎる。

いつの間にか俺は、この果てしない空を見つめて口を開いていた。


「……流星よ」


それは、子供騙しに過ぎない幼稚なオマジナイ。


「どうか今が」


叶うはずもない、無茶な願い。


「……どうか今が」


分かっているはずなのに、それでも縋りたくなった。


「……っ」


夢は諦めるものではなく、叶えるものだと。


「……永遠に」


無邪気に信じたあの頃のように。


「……続きますように」


俺は、星に願いを託していたーー。

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