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駆け出しデビュー

 時に厳しく、時に恐ろしく、それでも時には楽しかった見習い期間を経て、遂に俺も駆け出しデビュー。ここ数日は唯と共に低ランク向けの狩場で、採取クエストを中心に活動していた。

 今日も今日とて薬草採取の依頼を受け、魔物の領域まで足を伸ばす。数日前に薬草の群生地を見つけたので、そこでちゃっちゃと指定の数だけ採ったら、後はひたすらスキルアップに励む。人目を憚ることなく、自重もせず、大っぴらに魔術を使える貴重な時間だ。

 たまには魔物に出くわしたりもするけれど、基本は群れの規模が大きければ隠れてやり過ごし、はぐれを見つければ背後からザックリ、という安全策をとっている。因みに、唯を戦力として当てにするのはまだ早いと判断した俺は一時的に長剣をメイン武器に変更している。多少はこちらも鍛えておかないとリオと顔を合わせるのが恐くなるしな。


「そろそろ初心者講習の申し込み期間だなー。それとギルドの訓練場の利用手続きの仕方やらを確認したいんだよな。地下にあるんだけど設備も充実してるんだ。その分、金取るけど」


 以前アトラクション業をやった時は、張り切ったケイが率先して手続きをやってくれたから、いまいち記憶が頼りない。暫くお世話になるつもりなので今度はしっかり聞いておきたい。月額割引とかあるかもしれないし!


「スポーツジムみたいなもの?それとも道場かしら?」


「うーん、スポーツと冠するには、ちょっと激し過ぎる一面が。道場は道場でも古流じみていると言うか。手合わせ見ててもルール無しの何でも有りだし」


「そんな場所に貴方が通うの?」


 心底不思議そうに尋ねる唯。ええ、確かに。俺だってここだけ聞けば、間違っても近寄りたいとは思わない。でも俺の目的は別にある。


「施設の中に弓の練習が出来る所があるんだよ。前々から興味はあったんだけど簡単に手を出せるものでもなし。何やかんやで今まで先伸ばしにしてたんだ」


 何といっても弓は人を殺傷できる飛び道具。俺自身は弓に触れた事のないど素人。そこらでホイホイ練習する訳にもいくまい。流れ矢の危険性を考慮し、安全面に配慮するのは当然のこと。その為には多少の出費も惜しまないし、どうせ金を掛けるなら最初からしっかりした指導者の下、みっちり基礎を叩き込みたい。


「……成程。貴方には言霊魔術があるものね。『百発百中』『一発必中』『正確無比』。貴方の能力と弓はかなり相性が良いわね。もしかして、弓と矢に別の言葉を使えるのかしら?」


「そうそう。それも試してみたかったんだよね~」


 もしそれが可能なら、最大で四つの言霊を一つの攻撃に纏めることになる。かなり強力な手札となるだろう。


「聞けば聞くほど、今まで使わなかったのが不思議でならないわね」


「どうもリオ達の教育方針からはズレちゃってたみたいでさ。教育期間中は手を出すなと厳命されてたんだ」


 お師匠様達の教育理念は「生き延びる事が最優先」。「どんな危機的状況下でも最終的に物を言うのは、反射の域まで磨き上げた防御技術と極限まで高められた生存本能」という自らの経験則を掲げ、それを念頭に鍛錬を課した。あの人達はどこかおかしい。


「そんな訳で、専ら防御や回避を主体に鍛えたから攻撃手段は後回しだったんだよ」


「私の魔術の練習もそこで出来るかしら?」


「……地下だよ?室内だよ?火を扱うの?唯が?色々駄目でしょ」


「やっぱり?」


 と言うのも唯は火魔術スキルの制御面で思わぬ苦戦を強いられている。何故に丸暗記した蝋燭の灯レベルの詠唱で、火炎放射器もかくやという火柱が発生するのか。これでは危険すぎて室内はおろか屋外でさえも周囲を確認してからでないと使えない。放火は重罪です。

 しかし「才能ないのかしら」と落ち込む姿を見かねて、何か参考になればと【刻印・灯火可親】を渡してみると、点った小さな灯を掌サイズの火の玉にしたり、それを幾つも分裂させてはお手玉を披露したり、また一つに纏めて火の輪を作ったりと意のままに操り出す。しかも無詠唱で。……全然才能あるじゃないっスか。

 だけど、このやり方って火魔術スキルの熟練度はあんまり上がらない。ただ魔力操作というスキル熟練度はがんがん上がる。魔力操作って言うくらいだし、このレベルが上がれば制御面での不安も無くなるかな?と思い、暫くは様子見でいこうという事になった。


 という訳で、安全を保証出来るようになるまでは【刻印・灯火可親】を一時貸出中。物欲しげな顔を向けてくるが断固却下だ。


「あら残念。これは軽いし取り回しも容易だから重宝しているのよね。料理の際もとても助かっているわ」


「……まあ、本来の言葉云々はさておき、形状はアレを意識したものだから便利なのは分かるけれども」


 手の内でクルクル回し満足気な様子の唯に、理解を示すように頷く。流石はキャンプに花火にBBQといった野外イベントのお供アイテム。安定の高評価だ。

 でも駄目、あげない。それは初めての作品だから愛着があるのだ。どうしてもってんなら新たに作るから改良案を出してくれ。


 そんな彼女は腰に細剣を佩いている。【刻印・灯火可親】は杖代わりにはなっても、武器にはならない。護身具としても心許ない。何かしら武器を身に着けては?と提案したら、あまり悩む事無く細剣を選択したのだ。

 初っ端から刃物を選ぶなんて!及び腰だった俺がおかしいの?と若干気分が落ち込んだが、町での帯剣は拒否されたのでなんとか持ち直した。

 だよな、だよな!落ち着かないよな!気持ちは分かる、分かるぞー。

 この感覚をこちらの人達に理解してもらうには骨が折れた。『所持するだけでご法度な禁制品』を喩えに出してみたが、「何を大袈裟な事を」と、いまいち反応が薄かった。……強ち間違った意見じゃないんだけどなあ。向こうじゃカッターナイフでもアウトな時あんだぞー。


 俺の場合は保護してくれた人達がアレだったから色々駆け足で済ませちゃったけど、唯はもうちょいスローペースでいいと思う。我慢はストレスの元になるし、無理をして心身に影響が出てはいけない。今だから言えるけど、俺だって最初の内は耐えきれず一人でこっそり泣いたり吐いたりしたものだ。

 冒険者として過ごす日々って、罪状に言い換えたら、傷害致死(討伐)と遺体損壊(解体)の毎日だからな。

 今のところ焦る理由があるでもなし。ゆっくり自分のペースで慣れていけば良いかなーと、こちらはじっくりのんびり付き合う所存だ。




  次回予告(某国民的アニメ風に)


 作者です。最近は雨の降らない日が少なくて、外に出るのも億劫になってしまいがちです。しかしつい先日、商店街の方へ足を向けると今年も沢山の笹飾りが迎えてくれました。いやあ、子供たちの可愛らしい願い事を見てると堪らない気持ちになりますな。

 さて次回は……。

・講習会に参加しよう

・あの人達が再登場?

・七夕までに間に合うか!?

の、三本です。(これを書いてる時点ではまだ一行も出来ていません)



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