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戦闘後

 初めての戦闘の内容を振り返り、俺は激しい自己嫌悪に陥っていた。

 無我夢中だったとはいえ、あれはやり過ぎだった。自分にあれだけの攻撃性があったとは知りたくなかった。やはり血は争えないのか。

 中学生時代に、反抗期真っ只中の俺に言った母の一言。


『アンタは怒るとあの人そっくりやな』


 強烈な一撃だった。お陰様で人前で怒りを発露する事が苦手になった。

 護身術を習い出したのもあの頃だ。身体を動かしてストレス発散すると共に、正しい力を身に付けたかった。


……なのにどうしてこうなった。


「ほんと、テンションに身を委ねると碌な事にならんなー」


 改めて自戒しているとケイ、ルー、リオの三人が歩み寄り、話し掛けてきた。


「お疲れさん。うん?なんか表情が暗いよ?」


「いや、ちょっと反省してるだけ」


「まー確かに、ぶんニャげて、ぶっ壊して、フルボッコ。不っ細工ニャ戦い方だったニャ」


「ド素人に華麗な戦い方なんか期待すんな。喧嘩もした事ないんだぞ」


 そう言うとリオが意外そうな顔をした。


「そうなのか?どこか慣れていると感じられたのだが?」


 今の俺はきっと苦虫を噛み潰したような表情をしているだろう。


「……暴力と無縁だったとは言わないが、振るった事は一度もない」


 門前の小僧は習わぬ経を読むのだよ。自慢どころか自虐ネタにしかならんがな!


「……ふぅん。ま、怪我がないなら魔石を取るのを手伝いな」


 そう言いながら、小刀を渡してきた。


「魔石?」


 魔石とは、魔物の体内で生成される魔力の塊だ。それを組み込み、特殊な加工を施す事で、魔道具を作り出す事が出来る。

 つまり、魔石をバッテリーとした電化製品みたいなものか?

 ゴブリンから取れる魔石で作れる物は、懐中電灯や扇風機に類似した物で、一般家庭にも普及されているらしい。

 そう説明しながら手際よくゴブリンの死体を切り裂き、胸の辺りに手を入れ、黒い石を取り出して見せた。

 見様見真似でおっかなびっくり刃を滑らせるが、ポイントがずれたのか深さが足りなかったのか、魔石は見つからなかった。ケイにアドバイスを受けながら三回目のチャレンジで、漸く魔石を手に入れる事が出来た。

 あまりの手際の悪さに、残りのゴブリンの魔石回収を言い渡された。

漸く及第点をもらえる頃には心は静かに穏やかに、瞳は……うん、死んでいたと思う。


 魔石を回収した後、骸はそのまま野晒しに放置してその場を立ち去った。



 歩きながら質問タイム。

 魔道具について興味が湧き、家電製品と同じような物はないかと、思い付くのを片っ端から挙げていく。冷蔵庫・電子レンジ・洗濯機・エアコン等々。

 内、幾つかは似たような物があるようだ。世界は違えども人が求めるものは変わらないのか。

 作れる技術者が限られているのと、材料が特殊な事からお値段はそれなりにするらしい。庶民には無縁な物が殆どだそうだ。

 しかし便利で快適な生活に慣れたこの身が、どこまで辛抱できるのか。多少無理はしても金を稼がなければならない、と心に決めた。

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