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サイキックJKかすみ  作者: 神村 律子
国際テロリスト アルカナ・メディアナ編
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第三十七章 決意の日

 かすみ達はかすみ達で、今後どうすればいいか、話し合っていた。

「やっぱり、かすみさんが覚醒する必要があると思うわ」

 手塚治子は楕円形の黒縁眼鏡をクイッと上げて言った。片橋留美子はそれに頷いた。かすみは渋い顔をして、

「どうしてもそうしなければならないのでしょうか?」

 するとそこへいきなりロイドが瞬間移動で戻って来て、

「迷っている場合ではない。お前が覚醒しなければ、俺達は全滅する」

 衝撃的な発言にかすみも治子も留美子も目を見開いてロイドを見た。

「どういう意味、ロイド? 何かわかったの?」

 かすみはソファから立ち上がってロイドに尋ねた。治子と留美子は座ったままでロイドを見上げている。

「今、ジェームズ・オニールと会って来た」

 その言葉に治子の顔が曇った。吹っ切ったとは言っていても、まだ完全に乗り越えた訳ではないのだ。しかも、味方であるはずのロイドが敵であったジェームズと会ったという事実も、治子を動揺させていた。

「ロイド、それは一体どういう事なの?」

 かすみは眉をひそめ、ロイドに詰め寄った。それでもロイドはガラス玉のような目でかすみを見ると、

「ジェームズはアルカナ・メディアナを共に倒すために俺達に協力して欲しいと言って来た」

「そんな話、信用できません!」

 治子が立ち上がってロイドを睨みつけた。ロイドはフッと笑って、

「だろうな。お前ならそういう反応をするだろうと思った。だが、ジェームズには俺達を一度は騙さなければならない事情があったのだ」

 治子はロイドの心が覗けないので、更にヒートアップし、

「どんな事情があろうと、私達を騙した人と協力する理由はありませんよ、ロイドさん」

 かすみは治子の思いを知っているので、何故そんな提案をロイドが今ここで告げたのか、意図がわからない。ロイドはかすみを見て、

「では、アルカナ・メディアナ自身が途轍もない異能者サイキックだとしたら、どうだ?」

 また三人の少女達は目を見開いた。中でも治子は驚愕していた。

「そんな……。あの天馬てんま翔子しょうこも、アルカナ・メディアナを普通の人間だと言っていたのですよ? 天馬翔子にすら見破れない程の能力者だという事なのですか?」

 彼女は更にロイドに詰め寄って尋ねた。ロイドは頷いて、

「間違いない。ジェームズは自分の意識を完全に俺に開放してくれた。奴自身が体験した事も見せてくれた。それによると、メディアナは紛れもなくサイキックだ。それも想像を絶するようなレベルのな」

 かすみ達は互いに顔を見合わせた。ロイドは続けた。

「メディアナは自分が乗る船を自分の力で瞬間物体移動アポーツさせられる。これがどれほどの事か、お前達にもわかるだろう?」

 アポーツの能力を持つかすみは震えてしまった。アポーツを為す力は、その物体の容積に比例するからである。

「何よりも、トラックとバスをアポーツさせ、その上別人格を作り出し、戦ってみせるという離れ業をやってのけたジェームズが、メディアナには太刀打ちできないと断言しているのだ。並大抵の能力では、無駄死にになる」

 ロイドの比較論を聞くまでもなく、かすみはもちろんの事、治子も留美子もメディアナの能力に脅威を感じていた。

「ジェームズは自分をメディアナに信用させるために、一度は俺達を陥れる必要があった。だからと言って、奴をすぐに許して受け入れろとは言わない」

 ロイドは治子の心が千々に乱れているのを感じ、言い添えた。かすみも治子の感情の揺れを感じ、

「治子さん、ジェームズの事はともかく、私の能力を覚醒するのを手伝ってください。いずれにしても、メディアナが敵である事に変わりはないのですから」

 そう言って、治子の左肩に右手を置いた。治子はかすみを見て、

「そうね。今はそれしかないわね。そして、それが唯一、私達が生き残るすべなのだろうから」

 留美子が、

「でも、どうすればいいんですか? かすみさんの秘められた能力は、命の危険がないと発現しないんですよね?」

 ロイドは留美子を見て、

「その点は大丈夫だ。俺が身をもって経験した」

 かすみはロイドの言葉にハッとした。

「もしかして、精神測定サイコメトリーで?」

 ロイドはかすみにガラス玉のような目を向け、

「そうだ。ジェームズは俺の能力を覚醒させるためにあれをやったと言っていた。だから、それを試してみようと思う」

 かすみはロイドを見て頷き、

「わかったわ。すぐに試しましょう」

 その時だった。かすみの予知能力が発動した。

「何?」

 それは、治子と留美子が突然消えてしまうものだった。そして、見えたのはそれだけ。何が起こったのか、わからない。

「どうしたの、かすみさん?」

 治子が尋ねた。かすみは治子と留美子を見て、

「今、予知能力が発動したんです。二人が消えてしまったんです」

 治子と留美子はギクッとして顔を見合わせた。ロイドが、

「あの英語の講師か? ワトソンとか言ったな?」

 かすみはもう一度ロイドを見て、

「多分ね。あの男は瞬間移動とアポーツしか使えないけど、他人の瞬間移動に干渉できる程のレベルよ」

 ロイドが眉をひそめた。次の瞬間、

「いやっ!」

 治子と留美子がほぼ同時に消えてしまった。かすみがそれを追いかけようとすると、

「お前では奴に干渉されて追跡トレースできない。俺が行く」

 ロイドは瞬間移動した。


 治子と留美子は、無人島にいた。周りに見えるのは海。島と言っても、周囲が五百メートルほどしかない小さなものだ。

「ようこそ、南の楽園へ、お嬢さん方」

 マイク・ワトソンが不敵な笑みを浮かべて二人の目の前に瞬間移動して来た。

「今すぐ私達をもとの場所に戻しなさい! でないと、酷い目に遭わせるわよ!」

 念動力サイコキネシスの使い手である留美子が目を吊り上げて怒鳴った。するとワトソンは高笑いをして、

「俺を酷い目に遭わせても、瞬間移動能力がないお前らには、助かる方法はないよ? それでもよければ、好きにしな」

 留美子は歯軋りした。今度は治子が、

「かすみさんが来てくれるわ。そうすれば、貴方なんか、たちどころに倒すわよ」

 しかし、ワトソンは笑うのをやめず、

「かすみはここに来る事はできない。何故なら、俺が瞬間移動に干渉して、別の場所に飛ばしちまうからさ」

 その時、ワトソンは頭上に何かが瞬間移動して来るのを感じ、それに自身の力を発動して、別の場所に飛ばした。彼から数十メートル離れた砂浜に、ドスンと巨岩が落ち、り込んだ。ワトソンはフッと笑い、

「無駄だよ、ハロルド・チャンドラー。お前自身は、俺の干渉を妨げているようだが、アポーツはうまくいきはしない」

 ロイドはワトソンの背後に出現した。だが、ワトソンは余裕を持って振り返り、

「やはりな。ガイアは裏切った。これで確定だ。奴はメディアナ様に反旗を翻した。もはや、生き残る事はできない」

「当たり前だ。通常の思考ができる人間であれば、あんな外道に従うはずがない。従うのは、貴様のようなクズだけだ」

 ロイドは言葉は激しかったが、顔は相変わらずの無表情である。ワトソンはニヤリとして、

「俺を始末するもりか、ハロルド? 無理だと思うよ」

 治子と留美子は手を取り合って、二人から離れた。

 

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