表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキックJKかすみ  作者: 神村 律子
天翔学園高等部三年編
53/107

第二十二章 激闘

 道明寺かすみは、正体を現した小藤こふじひろしの結界の振り切り、更に立ちはだかった精神測定サイコメトリー能力の持ち主の蒲生がもう千紘ちひろの攻撃を撃退した。

(道明寺かすみ、瞬間物体移動アポーツを応用できるようになったか)

 小藤は、配下である千紘がかすみのアポーツによって、高等部の校舎の屋上に飛ばされたのを知り、顔色を変えた。

(かすみもロイドに迫りつつあるか。早めに始末しないと、今後の展開に支障を来すな)

 小藤は右の拳を強く握りしめた。

「だが、勝つのは私だ。翔子の仇はきっちり討たせてもらう」

 小藤は自分の能力を更に拡大するため、目を閉じて意識を集中させた。

「逃がしはしないよ、虫けら共」

 右の口角を吊り上げ、小藤は呟いた。

 

 かすみは、小藤の能力が広がろうとしているのに気づき、

「留美子さん、ここからできるだけ離れましょう」

 同じサイキックの片橋留美子と共に高等部の前の道路を走り出した。

「どうしたの、かすみさん?」

 留美子には小藤の能力の膨張はわからない。かすみは留美子を見て、

「小藤が力を強めたの。この辺り一帯が奴のテリトリーになるわ。早く離れないと、また奴の操り人形に囲まれちゃうのよ」

「ええ?」

 留美子はギョッとして速度を上げたかすみを追いかける。

「留美子さんは治子さんと合流して。私は勇太君達を助けて来るわ」

 かすみはそう言うと瞬間移動をした。留美子は何も言葉をかけられなかったが、

(かすみさんなら大丈夫ね)

 最愛の人である手塚治子がいる天翔学園大学を目指した。


 その手塚治子も高等部の異変に気づき、大学の敷地を飛び出して、留美子に向かって走っていた。

(小藤理事長は想像を絶する能力者ね。これは力を合わせないと太刀打ちできないわ)

 治子は長い黒髪を振り乱して走った。

「治子さん!」

 留美子が路地の角を曲がって現れた。治子は周囲に敵の気配がないか探りつつ、留美子に近づいた。

「かすみさんは戻ったのね?」

 留美子に言われるまでもなく、治子はかすみの行動を把握している。

「はい。多分、かすみさんの力を知っている人達を助けに行ったんだと思います」

 留美子は息を弾ませて言った。治子は頷き、

「かすみさんなら大丈夫。ロイドさんが高等部に向かったから」

 留美子は治子の答えに目を見開いた。治子は小藤の能力のテリトリーがすぐそこまで広がって来ているのを感じ、

「留美子、こっち!」

 踵を返して走り出す。留美子はハッとして治子を追いかけた。

(あの男の能力には限界がないというの? 高等部からここまで、少なく見積もっても五百メートルはあるわ)

 治子は身震いしそうだった。


 高等部の校舎の中に瞬間移動したかすみは、風間勇太、桜小路あやね、五十嵐美由子、横山照光の気配を探った。四人共、まだ小藤に取り込まれていなかった。

「まずは……」

 いかつい男子生徒達に取り囲まれているあやねのそばに瞬間移動した。

「あやねさん、大丈夫?」

 かすみはアポーツで男子生徒達を吹き飛ばしながら、うずくまっているあやねに近づいた。

「かすみさん?」

 あやねは半信半疑の表情でかすみを見上げた。そして、幻聴でも幻覚でもなくそこにかすみが実在しているのを知り、彼女に抱きついた。

「怖かったあ!」

 かすみは尚も飛びかかって来る男子生徒達をアポーツで飛ばしつつ、あやねをなだめた。

「ちょっと怖いかも知れないけど、我慢してね」

 かすみは治子にテレパシーであやねを飛ばす事を伝えた。

「ひっ!」

 飛ばされる瞬間、あやねは小さく悲鳴を上げた。

「次は美由子さんね」

 かすみは屋上に続く階段の踊り場へと瞬間移動した。美由子はどうやら、追手を逃れてそこまで上がったようだ。しかし、追いつめられ、身動きが取れなくなっていた。

「かすみさん!」

 いきなり目の前に現れたかすみを驚愕の眼差しで見ていた美由子だったが、

「ちょっと怖いけど、我慢して」

 かすみにそう言われた次に瞬間、もう踊り場から消えていた。そこにはたくさんの男女がいたが、美由子が消えたので、かすみに襲いかかって来た。

「あなた達の相手はしてられないわ」

 かすみはそこから次に勇太がいる三年一組の教室のそばに飛んだ。

「勇太君!」

 勇太はかすみが本当に助けに来てくれたのを知り、複雑な思いだった。

(かすみちゃんには逃げて欲しかったけど……)

 しかし、助けに来てくれたのは素直に嬉しかった。

「かすみちゃん!」

 目の前にいたはずの生徒達が次々と消え、その向こうにかすみが現れたので、勇太は彼女に抱きつこうとしたが、

「怖いかも知れないけど、我慢してね」

 そう言われ、ハッと気づくと飛ばされていた。かすみは更に瞬間移動し、横山がいる男子トイレに飛んだ。

「もう、何てところにいるのよ、横山君!」

 個室に立て籠っていた横山の目の前にかすみは現れた。

「わあお、かっすみちゃあん! 来てくれたんだね!」

 かすみは抱きつこうとしている横山を有無を言わせずアポーツで飛ばし、襲いかかって来る男子生徒達を尻目に瞬間移動した。

「ここ?」

 かすみが次に現れたのは、理事長室の前だった。

「早かったな、カスミ」

 そこには先にロイドが来ていた。相変わらずガラス玉のように無感情な目でかすみを見る。

「わかっていたのなら、手伝ってくれてもいいんじゃないの、ロイド」

 かすみはムッとしてロイドを見上げた。

「森石章太郎の女と保健室の女は俺が飛ばしておいた」

 ロイドの言葉にかすみは新堂みずほと中里満智子を忘れていたのを思い出した。

(まさか、新堂先生と中里先生、森石さんのところに飛ばされたんじゃないわよね?)

 妙な心配をするかすみである。

「それに、お前がここに来るまで奴は動くつもりはなかったようだ。何が目的なのか、お前もわかっているだろう?」

 ロイドが言うと、かすみは理事長室のドアを見て、

「ええ。あいつが欲しいのは、貴方と私の命。あとは何もいらないみたいよ」

 するとスウッとドアが開いた。かすみはロイドと顔を見合わせて中に入った。

「それは間違っている」

 小藤は理事長の椅子に深々と座り、寛いでいた。

「何が間違っているの!?」

 かすみが声を荒らげて尋ねると、小藤はフッと笑って、

「他に森石章太郎の命、手塚治子の命、片橋留美子の命も欲しいからだ」

「御託は地獄で門番に言えばいい」

 ロイドがいきなり仕掛けた。念動力サイコキネシスが部屋の床を切り裂き、前回ロイドが破壊した机を粉微塵にし、小藤に迫った。

「無駄だよ」

 だが、サイコキネシスの波は小藤の目の前で消滅した。

(またか?)

 ロイドはかすみに目配せした。前回ロイドが仕掛けた時、消えたはずの力が自分に襲いかかって来たのを思い出していた。

「ロイド!」

 かすみは使わないようにしていた予知能力が勝手に発動したのを感じ、ロイドに飛びかかって床に倒れた。その次の瞬間、二人が立っていた真上の天井からサイコキネシスの波動が降りて来て、床に大穴を開けた。

「そうか。君は予知能力を使えるのだったねえ、かすみ君」

 小藤はそれでもまだ余裕の表情で椅子に腰掛けたままだ。

(何、今のは?)

 かすみは起き上がりながら、ロイドに目で問いかけたが、ロイドは首を横に振った。

「最初はアポーツかと思ったが、違った。今のは俺の力ではなく、別の誰かのサイコキネシスだ」

 ロイドは感情のない目で小藤を見て言った。

「奴の能力なのはわかるのだが、一体それがどういうものなのか、全くわからない」

 ロイドが焦っているのを感じ、かすみは驚いてしまった。

「そこまでわかったのは褒めてやるよ、ロイド。だが、いくら何がわかろうとも、君達には勝機はまるでないのは変わらない事実だ。足掻くのは無駄だよ」

 小藤は二人を小馬鹿にしたようにニヤリとし、椅子を回転させた。

「ならばこれはどうだ?」

 ロイドは次に無数の物体をアポーツで呼び込み、小藤の頭上に出現させた。陸上競技で使う砲丸、各階にある消火器、家庭科室にある包丁、化学室にある劇薬が入った瓶。それが一斉に小藤に落下していく。

「まだわからないのか? 数を増やしても無駄だ」

 それらのものは、まるで遮断されたかのように小藤に到達する前に消えてしまった。

「そんな……」

 かすみは唖然としたが、ロイドは目を細めた。

「そういう事か」

 彼は何か掴んだようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ