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満ち潮  作者: たたみ
9/11

ボンヤリとした不安(4)

 寝てたのか?

こんな大事の最中に寝るなんて…。我ながらなんてヤツだ。

「先輩、もうすぐ事務所ですよ。」

何で?Kさん宅に向かへと…。

「まずは本部に連絡ですよ。Kさんに謝罪して“以後気をつけて下さい”で終わると思いますか?」その通りだ。

「気持ちは解かりますが、いつもの先輩らしくないですよ。まずは、落ち着いて考えましょう。」いつに無く真剣な表情の仲村の横顔。


事務所に入るとひんやりとした空調が気持ち良い。気のせいか身体が重い。

車を片付け中村が入って来た。ブラインドを閉じる。空調が効くようにかな…?

ボンヤリとした頭で仲村の動作を目で追う。

電話の留守電を再生。メモしてまた留守電に設定?

ああ、そうか会議(2人だが)のためか。

携帯をマナーモードにしてオレに近づいてくる。

オレの胸ポケットから携帯を取り出し、やはりマナーモードに。

オイオイ言ってくれれば自分でやるよ。…身体が動かない!


「仲村、なんか身体動かないんだけど。脳卒中の前ブレかな。救急車呼んでよ。…あっ、何消してんだ!」

仲村があのバカ写真を消去してる。オレの仲村対応切り札を。チクショウ。

「大丈夫ですよ。脳卒中でも熱中症でもありません。ネンリキです。」

何、ふざけた事を言ってるんだ。オレの顔を見てため息をつく仲村。

「信じてませんね。厳密にはネンリキとは違うんですけど…、ネンリキのようなモノです。」

空中に仲村の棒アメが浮いている。セロファンがひとりでに破れて棒アメが仲村の口に…。

「これで信じてもらえます?石川さんも食べます?」

首を横にブンブン振る。

「仲村、お前宇宙人なのか!」「あのバカ写真消すためにオレを動けなくしてるのか?」

「バカ写真の消去はついでです。面倒くさいので宇宙人ではありませんが宇宙人でいいです。」

「どこから、説明すればいいんだろう…。」仲村はうつむいて数秒考えてる風。

突然、オレを見つめる。「先輩、好きです。」

ゲゲッ、舌の根元からアゴ、耳の後ろ、後頭部へと総毛立つカンジ。

オレの表情を見て、仲村が眉間にシワを寄せ

「そういう意味ではなくて“…よき隣人として話を最後まで聞いて下さい”って言おうとしたんです。

 ボクだってやわらかいイイ香りのする女の子が好きなんです。」

ちょっと、仲村が怒った。

「最後まで話聞いてやるから動けるようにしてくれ。」

「真面目に聞いてくださいよ。逃げないで下さいよ。暴れたりしないで下さいよ。」

「約束する」

身体が自由になった。のどが乾いた。仲村に「ちょっとタイム。」といい冷蔵庫の麦茶を出す。

「飲む?」仲村がアメを口の中で砕きながらこちらも見ずに首を横に振る。

麦茶を入れたコップを持って来客用のソファに座る。仲村も向かいのソファに座る。

「で、話って?」

「あの米をすり替えたのはボクです。味の違いが出てこんな騒ぎになるなんて思いもしませんでした。試しにKさんのお宅へ配達して問題なければ順次すべての米を取り換えていくつもりでした。」

「ですから、あの米はKさんの所にしか配達してませんし、O先生も言ってたように安全です。Kさん達家族にも害はありません。安心しました?」

 そうか、安全な米なんだな。KさんやSちゃん、本部長の顔が思い浮かんだ。

「信じよう。だけど何のために?お前さっき“良き隣人”って言ったよな。どういう意味だ?」

しばらく沈黙。仲村が言った。

「“知恵の実”を知っていますか?」






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