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満ち潮  作者: たたみ
6/11

ボンヤリとした不安(1)

 買ってきたビールと焼き鳥をテーブルに置く。それと仲村が持たせてくれたオニギリ。

もったいないからと試食に使ったゴハンの残りをにぎったものだ。

若いくせにオバサンっぽい男だ。それと賞味期限ギリギリの小松菜の漬物も入っていた。

 とりあえずビールを一口。プルトップを爪で押し上げる、プシュっと気持ちのイイ音。

冷たいビールが喉を落ちていく。一息つく。残りのビールを冷蔵庫に入れ、シャワーへ。


 TVを点ける。ヤキトリと小松菜とオニギリをサカナにビールを飲む。TVのニュースは中東での自爆テロと東南アジアでのクーデターを放送していた。

 「主義や宗教は関係ないのです。生活を支える産業がほしいのです。」のセリフはプラネテスだっけ。食べる事ができて疲れを癒す家があって安心できる暮らしがあれば、国が荒れる事はない。たよりない政府とはいえ日本は本当に幸せだ。…しかし国民全てが享受できてる幸せでは無いのだ。いつか日本もTVの向こう側のようになるのだろうか?ボンヤリとした不安を押し流すようにビールを空ける。

 チャンネルをバラエティ番組に替える。画面を見ずに食事をモクモクと済ます。

 

さて眠くならないうちに読んどくか。Kさんの送ってきた文庫本を取り出す。


 世間でオフーという植物が流行りだす。ついに主人公の家にも奥方が持ち込んできた。どうやらこの植物の実が身体にイイらしい。若返ったとか、ガンが完治したとか評判がたち、瞬く間に広がっていく。ところがこの植物の原産地も出所もはっきりしない。主人公はやはり原産地も出所もはっきりしない作物である「米」に気づく。米が現れたおかげで人口が増え、文明を興し人類はステップアップした。この作物は、そして今巷に広がるオフーはどこから来たのか?やがて円盤の目撃情報が増え、やがて主人公も…。という内容だ。侵略モノ?


Kさん “うますぎる米”をこの話と連想したんだ。宇宙人だなんて…。

本人も説明するのが恥ずかしくてこの本を送ってきたんだな。

寝よ寝よ…。

気にする事じゃない。…とはいえ謎は解けてない。

ベッドの上でそんな事を考えていると眠ってしまった。


 一年で一番潮が引く大潮の日。オレはアニキと海へ遊びに行った。

めったに歩けない沖までサザエやイイダコをさがして石をひっくり返したり穴をつついて遊んでいた。 浜の方からオレを呼ぶ声がする。振り返ると今渡ってきた道はなく潮の流れがオレと浜とを寸断する川のようになっていた。

 しまった、潮に気をつけろと言われてたから沖の方だけを見てたんだ。

 川の流れは速いが深さは1mほど幅は10mほどしかない。

“渡れるかも”川に向かって歩くオレを見てアニキが叫んだ。

「バカ!流されるぞ!岩に登れ!」見ているうちに川幅が広くなる。

オレは慌てて一番大きな岩によじ登った。気がつくと川は無くなり海になっている。潮の流れは速い。「ニィニィー!」オレは心細くなりアニキを呼ぶ「大人呼んでくるから、動くなよ!」

アニキがアダンの群生の中へ消えていく。オレは心細くなり「ニィニィー!」と叫ぶばかり。


 目が覚めた。汗びっしょりだ。なんで昔の事を夢に見たんだろう。

あの後、大人達はやって来たのだが潮の流れがおさまらないと危険という事で

1時間ほどして助けられた。子どもだけで大潮の海に行ったことも散々怒られた。

オレが6才の時の話だ。


冷蔵庫から冷たい水を一杯。ベッドの下には文庫本。今日は米の検査結果の出る日だ。


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