見えない静かな死闘
いつも説明多くてごめんなぁ。堪忍してな。
それじゃ、どうぞ
「……ここまで外に出たの、初めてかもな」
ケイソレイは、クルス王国から1度も出たことがなかった。特段何か変わったわけじゃない。何なら自然しかない。されど、遠くまで広がる自然がある。そよぐ寒い風、風で揺れる足元の草と木、広大な大地。そして、そこにポツンといる自分。いつもなら寒い風は涼しい風に、近くで揺れる草木はどこか友達のような感覚になる。だが今は、ただ風は寒いだけ。草木は揺れているだけ。広大な自然の大地は、殺風景に感じた。まるで、自分以外生きてないような感覚だ。
…もしかしたら、逆なのかもしれない。
「ああそっか。ケイソレイは外初めてか。どう?初めて来た外は」
「うーん………そうだな…なんも変わんねぇや」
「はは、そっか。まぁそんなもんか」
魔族が現れた時、国家間で戦力を交換したりはしたが、変わらず国家間の仲は険悪だった。だが、共通の敵が現れた今が国家間の仲を良くするなのではとデルタ王は思い、まずはクルス王国とシャード共和国の仲を良くする為に、今回はシャードへ向かっている。
そんな重要な任務で、ケイソレイが付いてくる事になった。いつも通りならまだよかったが、今回は護衛対象が親友だ。背負う荷の重さが違う。愚痴を言ってしまいたいが、ケイソレイがいる。いつも通りに振る舞わないといけない。
崩れないように、いつも通り、リラードは笑顔でいた。
「そういえば、シャードまでどのくらいかかるん?」
「うーん、ざっと10時間とかそのくらいかな」
「……乗り物とか無いの………?」
「魔族に過激派がいるだろ?あれがクルス王国の飛行船壊したり、馬を悉く殺したりでね。今、クルス王国に乗り物は一切ないよ」
今、人類と魔族は友好関係になっている。だが、どちらの種族にも友好関係になるのは反対の者共がいる。それで過激派が破壊活動などをやっていた。最悪交渉などをする立場である上の者が殺されるという事例も数回だがあった。語弊があったが、共通の敵というのは両種族の過激派のことだ。
「え?じゃあ何で今日なの?補充してからとかの方がいいと思うんだけど…」
「どうしても今日じゃないと空いてなかったんだよ。明日以降は人類と魔族の話し合いだの、過激派対策だのって感じでね」
「それらが終わった後は?」
「用事が多すぎて、今日やった方がまだ被害が少ないって結論が出たんだよ」
「………」
もう何も言えなくなった。たしかに、リラードたちが突然用事で離れることは幾度とあった。ただ、改めて思い返してみると、多い。1週間に2回以上くらいのペースであった。きっと、ほぼ全て過激派の対処に当たっていたのだろう。そう考えると、より重くなった。英雄隊の名が。
そんなことが何十回とあっても、変わらず優しく接してくれるみんなが。
(ッ………)
心が痛い。苦しい。心に手を当てて服を思いっきり掴みたかった。だが、それをすれば心配される。ただでさえ足手纏いなのだ。少しでも、負担は減らさないのいけない。
ケイソレイは、拳を握りしめた。
(……)
ただ、どちらにしろ、この話をした時点でみんなに心配されていた。
「…」
(…想いすぎ、考えすぎなんだろうけどさ……)
疲れて呆れ、心の中でため息をつく。
その時
「ええっと……」
「ん?」
誰かが口を開く。聞こえた方を見ると
「け…ケイソレイ……だよね………?」
「………あ、そっか!?」
アーレルド・クルス王子。友達だ。
「あ、よかった…他人じゃなかった……」
「ご、ごめん!他の考えてたから、全く気付いてなかったわ!あっはっはっは!」
「そうだよな、これ2人の護衛だもんな。そりゃいるわな」
「酷くない?いや分かるけど…分かるけどね?」
一気に笑顔になり、笑いながら話す。
まだ幼い頃からの学校の友達で、親友と言っても過言ではない程仲が良い。最近は虐待だのなんだのと家で色々あり、今は学校に行ったら父親が来る前例があるせいで学校には行けていなかった。そのせいで、アーレルドと会うのは久しぶりだ。
「あれ、2人って友達だったんだ」
「王子様と英雄様が友達……凄いな」
「うって変わって、随分と楽しそうじゃん」
英雄隊は2人の関係と楽しく話すその様子を見て、驚くと共に少し安心した。
「そういえば…友達であったな…」
デルタ王は2人の関係に傷が入っておらず、安堵した。
「ケイソレイ。最近会ってなかったが、元気だったか?」
「ん?ああ……はは。相も変わらず、英雄隊と馬鹿騒ぎしてるよ。ほんと、みんなのドッキリが多かったりでもう………うるさくて参っちゃうよ」
「はっはっは。元気であれば結構。アーレルドとも友達でいてくれてるようだな」
「そりゃあね。ご存知の通り、全く飽きねぇよ」
「「はっはっはっはっは‼︎」」
「お父さんまで笑わないでよ…!?」
英雄隊のように、デルタ王にもケイソレイは世話になったことがある。それで波長が合い、仲も良くなった。
大人と子供などの立場を気にせず、笑い合った。
────
「………《感樹の花弁》」
背を向き、リラードは、手のひらの花弁を見る。
【いいのか?この接し方でいいのか?最近会ってなかった俺が前と同じように、仲良く接していいのか?】
【この2人はアイツから匿ってくれたり、お泊まりさせてくれたり………なのに、俺は何1つしていない。こんなんでいいはずは無い…】
【今話して大丈夫なのか?危険な任務中だぞ?いつも通りってリラードは言ってたけど、これは駄目なのでは?…かといって、今やめたら嫌われたと勘違いさせそうで……いや、これは言い訳なのかも…】そもそも、いつも通りの日常が壊れてるから何をいつも通りってするかも分かんなくなって………】
脳内に幾つか声が聞こえてくる。全て、同じ声だ。
(………)
花弁をそっと握り締め、ケイソレイの方を向く。
「ケイソレイ」
「ん?」
「それでいいよ」
「ッ────」
少し目を瞑り、そして開き
「とりあえず…ね」
「うん、分かった」
返事をして、アーレルドの方へ戻った。複雑だが、若干は軽くなった。
「…」
(もっと…頑張らないとな。俺にも、背負わせてくれるように)




