正義と力の使い道
「………」
「………」
ガリヤード含むシャード共和国の戦闘員全員、シャードの外で待機していた。
「…魔族の様子は?」
「未だ、山の奥から動かず…何か音はしますが、山が邪魔して何の音かも分からず……」
「…何をしてるんだ……」
情報担当曰く、こちらへ進軍していたはずの魔族が山の奥から一向に動いていないのだ。音もするが、山の奥にいるため何の音かも分からない。色々な情報が断定できない状況下で進軍することはできない。魔族側の罠という可能性もある。こちらから向かって、何が起こるか分からないのだ。故に、待機する他無かった。
「…」
(焦りは禁物だ。分かってはいるが……)
「…ケイソレイ………‼︎」
あの山にケイソレイは落ちた。その後どうなったかガリヤードは知らない。もしかしたら、魔族と独りで戦っているのかもしれない。その可能性は十分にある。それでも、行けない。情報の件もあるが、もしケイソレイが戦っていたとして、行けるのはガリヤード1人だろう。確かにガリヤードは強い。1人で何千体と倒せるだろう。…だが、相手の目的はシャード共和国という国だ。四天王がいるだろう。そうすると話が変わる。ガリヤードは間違い無く死ぬ。そうすれば、ケイソレイにより負担がかかる。
今のガリヤードには、ただ待つしかできなかった。
(頼む…無事でいてくれ……‼︎)
その時
─ドッ─
「ッ!?」
「ッ‼︎」
突然爆音が鳴り響く。あまりの大きさに、最初のドッという音が聞こえた後は耳鳴りへ変わった。一斉に耳を塞ぐ。爆風も襲ってきた。それと同時に土砂が飛んできた。あまりの事に膝をつく。ガリヤードはゆっくりと山の方を向く。
「ッ!?何…が…ッ!?」
山の上半分程が無くなっていた。そして、その奥には、空高くまで昇る赤い炎。ガリヤードは本で知っていた。人類同士で戦争していた時代に、1度使われた後にあまりにも非人道的という理由で使用を禁止された兵器。
「決戦兵器……!?」
決戦兵器。桁違いの爆発、一定時間ずっと燃え続ける大きな炎の柱、炎の柱がある間放出し続ける暴風、強力な毒の4つの脅威が合わさった爆弾のことだ。それを食らった者の惨状は予想がつくだろう。言葉にもしたくないようなものだ。魔族との戦争になってからもこの決戦兵器は使われていない………そう、ガリヤードは聞いていた。
「くっ……おい‼︎何で決戦兵器が使われてるんだッ‼︎」
「……」
「おい‼︎」
「…ふふふ……あははははは‼︎知らなかったんですか?貴方が…いえ、クルスが知らないだけですよ?」
「ッ‼︎なんだと…!?」
突然豹変し、真実を聞かされる。言い方的に、今は無い軍事国家ハレトスも使っていたのだろう。信じがたい事実だ。
「正直、あなた方のクルス王国が邪魔だったんですよ‼︎いつまでも状況を理解せず決戦兵器の使用を否定し続ける貴方の国が‼︎」
「決戦兵器の非人道さは理解してるだろう‼︎」
「ええ、十分に理解してますよ」
「なら」
「だから何だと言うんです!?非人道的というならそもそも戦争をするなというものでしょう‼︎非人道的なのは、死などを笑いネタにする人と、それで笑う人全員もではないですか‼︎キリ無いんですよ‼︎」
「ぐっ……だ、だが‼︎」
「だが何ですか!?薄っぺらい正義でも語りますか!?それは固定概念の産物にすぎません‼︎手段はどうだろうと、戦いで勝てばその方が支配者となり正義となる‼︎人類の歴史はそう紡がれてきた‼︎今更、私たちに倫理観マシマシの大層な正義なんて、掲げる資格なんて無いんですよ‼︎」
凄い勢いで畳み掛けられる。あまりの勢いに、ガリヤードに、対抗する術は無かった。
「ぐっ…クソ……‼︎」
その時
「「ッ!?」」
「風が消えた…?まだ続くはず…一体何が………ッ‼︎」
「なんだ…あれは……」
高く昇っていた炎の柱は、段々と凍っていっていた。そして、氷の柱へと変わっていた。
「あの決戦兵器を止めた…!?一体誰が………ッ‼︎まさかッ!?」
その時、氷の柱に円の形にヒビが入り凹む。近付く1つ影。急接近し、現れたのは
「貴様ッ‼︎」
「ケイソレイ…!?」
仮面の目から黒い涙を流す黒装束。本気のレオだ。
(──)
「ッ!?」
レオはすれ違う一瞬の内に、夢眸でガリヤードを治し、心淵でクルス王国へ送る。そして、待機していたシャードの戦闘員をスキルで全員殺した。それを済まし、奥の城へ向かった。
─約10秒後─
思いっきり飛び、城の最上階の壁を蹴り壊して入る。
「ッ!?」
「ケイソ──」
そこにはデルタ王とアーレルド…そして、ハルゼン。言い終わる前に、デルタとアーレルドを心淵でクルス王国へ送った。
「………フゥー………」
やっと止まる。これまで吐いてなかった息を吐く。今は冬だ。白い息が、仮面を通り出る。
「───」
ゆっくりと、ハルゼンの方を向き、刃を向けた。




