過去達。されど現在。
ガリヤード・グレイブ。まだ若いが、世界でも上位の実力者。2年前まではクルス王国の少数精鋭部隊『英雄隊』に所属しており、そこからは学校の先生もするようになった大物だ。そして、レオの数少ない理解者であり親友であり…育て親だった。
「お前がいるってことは…」
「ああ、俺はこのクラスの担任だ」
「てかあの名前で呼ぶのやめろ?ここ教室だぞ?」
「あ、すまん…」
「お前なぁ……」
「…そういえば左目はどうした?さっきから左目だけ瞑ってるけど」
「ああ…目にゴミが入って、さっき擦って出したんよ。その後毎回こうしてるだけ。少しすれば治る」
「ほ〜ん。とりあえず、そこが席だから。座って待っててくれ」
「あいよ」
レオはガリヤードとの話を終え、指定された席に座った。 また孤独への花束を発動し、独り席で少し音楽に乗り始めた。
「…」
(…来るんじゃなかったな。来た俺がバカだった)
相も変わらず、周りの生徒はレオの方を向いてコソコソと話している。
(よく飽きないな。いつもいつもいつもいつも……)
「はぁ………《MR》」
レオはスキル《MR》を発動した。MRは気持ちを切り替えれる能力だ(マラは煩悩を意味するが、それ以外にもいくつかこの名前を付けた理由がある)。
レオは気持ちを切り替え、意識を音楽へ向けた。少しレオへのイジメに反対するような意見が聞こえたが、気のせいだと思って無視した。
─数分後─
「よーし、時間だぞ。起きろー」
時間になり、ガリヤードがクラス全員に声をかける。それを聞いて孤独への花束を止めた。ちなみに、左目は既に開けていた。
「今から運動場行くから、番号順に並んでくれ」
「よいしょっと………ん?」
(あれ、そういえば周りの奴らこの間に何もしてこなかったな……何でだ?まぁいいか)
レオは気にせず列に並び、運動場へ向かった。
運動場に着いた(ちなみに、運動場といっても見た目はコロッセオだ。しっかり360°観客席もあるし、職員用に囲ってある観客席もある。構造がちょっとめんどくさく、ごく稀に迷う奴が出る)。生徒が揃うと、前の職員専用の観客席に校長が出てきて、話し始めた。
「皆さん、おはようございます。今日は良い天気に恵まれ、神様が皆さんを祝福してるみたいですね。まず…」
「…おもんな…」
ボソッと呟き、孤独への花束を発動して終わるまでやり過ごそう。そう思った時
「ッ‼︎後ろ──‼︎」
後ろから攻撃されるのに気付き、急いで振り返った。だが、そこにあったのは
「…」
「ッ…クソ…‼︎」
「……どうなってんの?」
レオを攻撃しようとした生徒の腕を、別の生徒が止めていた。
(…《MR》…)
「…とりあえず、殺そうとしたし……」
「は…?」
「おやすみィ‼︎」
レオは思いっきり顔を殴り、相手を気絶させた。
(あ、思った以上に飛んだ)
「…さてと……」
レオは攻撃を止めた生徒の顔を見た。
「……お前、同じ学校で同じクラスかよ」
「気づくの遅くない?」
「悪かったな」
生徒の名はアーレルド・クルス。クルスとある通り、このクルス王国の王子だ。2年前に関わる機会があり、その時からレオと仲が良い。最近は会っておらず、約1年ぶりの再会だ。
「とりま、助かったわ」
「まぁ、レオなら大丈夫だっただろうけどね」
「お前もそっちで呼ぶな」
「…あ」
そう話していると
「あ、アーレルド様!?危険です‼︎お下がりください‼︎」
校長が王子に気付いて焦った声で言う。その言葉で周りの生徒が王子の存在に気付き、ザワザワしだした。どうやら
「アーレルドって…王子様!?」
「え、じゃあアイツが近くにいるのって…」
「マズイだろ‼︎守れ守れ‼︎」
生徒や先生が動き出す。
「お前、ほんと人気凄いよな」
「そんなこと言ってる場合じゃ」
「周りの心配してろ」
「え?」
左目を閉じ、スキルを発動する。
「《真眼》」
「ッ‼︎…それって……」
レオの右目から、赤い炎が姿を出す。黒い渦を出し、そこから刀を取り出す。そして、刀を抜き
「ッ‼︎」
空を切った。すると、運動場全体の足元が一瞬光り
「え?」
「うわ!?」
突然、迫っていた先生生徒らが転ぶ。
「え、あれ?何したの…?」
「こいつらの足見てみろ」
「え?………ッ‼︎」
生徒らの足を見ると、深い切傷ができていた。全員に。
「だから立てなくなって……これを」
「俺がやった。悪いか?」
レオは悪気無さそうに言った。
「流石にこんな……」
「あっそ」
「あっそって…ケイソレ」
「黙れ」
突然キレた低い声で放つ。
「ッ!?」
「その名前を口にするな。あと、俺に関わるな。2度と」
「ッ………」
アーレルドは何か言葉を出そうとしたが、何も出てこなかった。
「急で悪いな。だが、お前との縁を切らせてもらう。じゃあな」
「ま、待って…!」
「…お前の前にいるのは、魔王だ」
「ッ‼︎………」
レオは飛び去った。
アーレルドは飛び付いてでも引き留めたかった。だが、待ってと言った後に放たれた言葉で、動くことが完全にできなくなってしまった。何があったのか。どうしてそんなふうになってしまったのか。もう何も考えれなくなった。無力感や孤独感に苛まれ、耐えきれず膝から崩れ落ち、泣いた。




