行先
風が穴を通る。血が地面へ滴り落ち、俺の頬にも垂れる。覆い被さってるこの体が重い。人の重さ。未だ肌や髪の質感は変わらない。温もりを感じる。今にも動くんじゃないかと錯覚してしまう。それほど、突然で、一瞬の出来事だった。
「チッ…外されたか。…シャードから取り寄せたものが、1発の強さは十分だな。英雄隊の1人を殺せた。その実証できたからよしとするか」
誰かの声が聞こえる。シャード?あぁ、この地上に残ってるもう1つの国、シャード共和国のことだ。あっちは機械面が凄い。色々な銃が特に印象的だった。シャードから……取り寄せた………?取引でもしてたのだろうか。
殺された?誰が?取引も何も、知らない。
「……誰だ……お前は───」
「お前とは会ったことがあるだろう。……魔族四天王、ヘルベレス・ハルバード。これで満足か?」
相手が名乗る。四天王?何でいる?何で?は?隠れてた?弱った瞬間を狙って出てきた?ああ、だから俺があの時2人とも四天王のこと言わなかったのか。そりゃあ誰も言えるわけないか。ごめんな、変に疑って。
「黙れ……黙れ‼︎う"お"お"お"お"お"お"お"お"‼︎」
「遅い」
感情に任せてガリヤードが斬りかかったみたいだけど、簡単に避けられて銃口向けられた。
………もういい
「クソッ‼︎」
「ボロボロの体で追いつけると思うな」
茶番は終わりにする。
「さよならだ。ガリヤード・グレイブ」
ありがとう。アザレア。
(すまん…ケイソレイ…アザレア…‼︎)
その時
「ん?ぐはッ!?」
ヘルベレスは服を掴まれ、何かと振り向いた瞬間地面に叩きつけられた。あまりにも速いせいで、瞬間移動でもしたんじゃないかと錯覚してしまう。頬に痛みがあり、殴られたのだと理解する。
「クソ、何が───」
前向いた時…そこには、銃口を向けた魔王の姿。両目から黒い涙のようなものを流し、得体の知れぬ化け物のようだ。そして
「死ね」
魔王は引き金を引く。パンッという音をたて、ヘルベレスの脳天に風穴ができた。
「……」
残り4発。ヘルベレスの顔に放つ。穴ぼこになって、見るに耐えない姿になった。
「………」
銃を捨てる。
「ガリヤード、先に話すか?」
ケイソレイは落ち着いた声で喋る。だが、顔は見せなかった。今の顔は、見せられなかった。
「………特に辛いのは、お前の方だろ…?俺は、お前の後でいい…」
「………」
ガリヤードは
ケイソレイは何も言わず、ゆっくり、アザレアの下へ寄って座る。いつの間にか、仰向けに姿勢が整えられていた。
「まずは……」
アザレアのおでこに触れ、夢眸で体の傷を全て治した。
「よし………スゥー………ふぅー………」
ゆっくりと、深呼吸する。そして…重い口を開く。
「アザレア、久しぶり。といっても、1週間くらいしか経ってないだろうけど。前にさ、アザレアとガリヤードが来てくれたじゃん。んで、アザレアは抱きしめてくれて……あれ、めっちゃ嬉しかったんよね。あの時はごめんな。あの時だけはあのままでいたくて……ごめんて。許してなんて言やしねぇよ。…俺は、お前らの為にやってきたのにさ。何でこうなったんだか……全くだね。…あーもうだめだ、変な口調になってるし。なんやこれ。言いたいことまだいくらでもあるんだけど言語化できないし………まぁ、このくらいでいいか。長話はやめ。…言いたいこと、言うね。………」
一息入れ
「これまで…お疲れ様。色々やったけど、あの時からもずっと、大好き。これだけは疑わないで…欲しいかな。ごめんね。もう少しで会いにいくから。それまで、待っててね」
レオに戻る。
「………《夢眸》」
右手を開き、黒い何かが手のひらへ渦のように集まる。集まり、形となる。形成されたのは、顔全体を隠すタイプの仮面。それに、自分の頬に垂れていたアザレアの血を付ける。戒めとして。レオはその仮面を被った。
「………」
ぬいぐるみを抱えて立ち上がり、ガリヤードの方へ寄る。
「…葬儀とか任せた。俺は帰る」
レオはできるだけ素早く済ませて、帰り道を歩み始めた。
「ッ……」
ガリヤードは気付いた。声が震え、顎の辺りから澄んだ水滴が垂れていた。
泣いていた。
────
「はぁ……」
涙を拭おうと、目に触れようとする。だが
「あ………」
仮面に阻まれた。
「………1つ、難点だな」
再度、帰り道を歩み始めた。




