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【長編版】無能聖女の失敗ポーション〜働き口を探していたはずなのに、何故みんなに甘やかされているのでしょう?〜  作者: 矢口愛留
第四部 婚約編

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75. 告白、されちゃいました



 黄金の翼が、光の粒子となって消えていく。

 けれど、私を優しく抱きしめるギル様の腕は、変わらずあたたかく私を包み込んでいる。


「ギル、さま……」

「……突然抱きしめたりして、すまなかった。困らせてしまったな」

「い、いえ」


 ギル様は私の背中から手を離すと、眉尻を下げて甘く微笑んだ。

 抱きしめられたのは、これで二度目。けれど、嫌だとか、困ったとか、そんな風には感じない。むしろ――、


「えっと、ギル様、その、私」

「――それは、また後で。まずは、座り直そうか。すまない、取り乱して、順序がめちゃくちゃになってしまった」


 どぎまぎしながら返事を探していた私を手で制し、ギル様は元のソファーに腰を下ろした。

 私も、先ほどまで座っていたソファーに戻る。

 顔の熱は、全然引きそうにない。


「それで……三年前に、君と出会っていたというところまで、話したんだったな」


 すっかり冷めてしまった琥珀珈琲(アンバーコーヒー)を口元に運び、ギル様は話を元に戻した。

 彼の耳も、心なしか赤く染まったままだ。


「三年前、私は、転移魔法の研究に力を入れていたんだ。あの夜は、その実験の最終段階だった――」


 そうして、ギル様は、フォレ領からなぜか王都の神殿裏に転移したことと、大地の日の夜にしか長距離転移ができないことを話してくれた。


「私がちゃんと(・・・・)している曜日に、改めて君に会って、話をしたかったのだが……この三年、領内もなかなか安定しなくてね。大地の日から翌大地の日までの一週間とはいえ、公務でもなく私事で領地を離れるのは難しかった」


 そこでギル様が目をつけたのが、以前から日程が決まっていた、王太子殿下の成人式典だ。

 領地のポーション不足を解消するために、神殿のことも探りたかったというギル様は、一年以上もの間、準備に準備を重ね、王都への長期滞在を可能にしたという。


「だが、王都は私以外――転移魔法が使えない者には遠い。往復だけで一ヶ月、滞在期間も含めれば約三ヶ月……この地の状況を考えると、連れて行ける従者は、二人か三人が限度だった。そこで、最も信頼のおける二人の一方を領地に、もう一方を表向きでは自分の側仕え、裏では諜報の任を与えて、あとは御者を一人だけ連れて行くことにした」


 そうして領地を任せられたのがシニストラ卿、側仕えと諜報を任せられたのがジェーンだった。御者はトマスだ。


 だが、王都で合流したギル様とジェーンには、早速問題が生じていた。

 滞在予定だった王都別邸が、予想以上に荒れ果てていたのだ。


 ジェーンには諜報の任務もある上、当時は腰に爆弾を抱えてもいた。

 トマスには、王都外、フォレ領へ向かう道の途中にある別邸に滞在してもらい、別の業務を任せていた。


 そのためギル様は、王都別邸の清掃、補修のために、一時的に冒険者を雇うことにしたのだという。

 もちろん、屋敷内の魔道具を整備して徹底的に安全を確保し、遠視魔法で自ら監視する態勢も整えた上でだ。


「前にも言ったが、まさか私が探していた『琥珀色の聖女』が、自ら私の元に来てくれるとは、予想していなかったよ」

「ふふ、私もびっくりです。だって、ギル様の依頼が、神殿を出たその日、私が真っ先に出会った依頼だったんですよ?」

「ああ。三年前の転移といい、流石に私も、何か不思議な力が働いているのかもしれないと感じたな」

「きっと、女神様のお導き、ですね」


 ギル様は頷き、目を細めて微笑んだ。


「遠視魔法が君にだけ見破られたのも、ティーナが神力――女神の魔力を感じることができる、不思議な能力を持っているからだろうな。君のその能力がどういう理屈なのかは、さっぱりわからないが」

「うーん……私もよくわからないです」


 黄金色の神力と、ギル様自身の持つ山吹色の魔力。そして、私の琥珀色の魔力……いずれも似た色だし、波長が近かったのだろうか?

 正しい理由は不明だが、まるで私も女神様の加護をいただいているみたいで、少し嬉しい。


「あ……そういえば、どうしてギル様は、二種類の魔力色をお持ちなんですか?」

「ああ。その理由を、今から話そうと思っていたんだ。――フォレ公爵は、代々、王族の中でも特別な存在でな」


 ギル様によると、フォレ公爵には、王族の中でも女神の力が最も強く受け継がれた人間が、代々拝命されるらしい。


「女神の力は、変わった性質を持っていてな。歴代のフォレ公爵は皆、自身の魔力と女神の神力、その両方を身体に宿している」

「なるほど……だから、ギル様は二種類の魔力を……。あ、もしかして、他の王族の方もそうなんですか?」

「……いや、これはフォレ公爵となる者だけに受け継がれる、特別な力。他の王族は、自身の魔力しか持たない」

「へええ、すごいですね」


 私は感心してしきりに頷いていたが、ギル様は僅かに眉を顰めている。

 また、部屋の扉を閉めたときと同じ、緊張した面持ちに変わっていた。


「……この先を話すには、君にも、色々なことを覚悟してもらう必要がある。だから、この話は、今日はここまでにしておこう。そのかわり――最後に一つ、伝えたいことがある」


 ギル様は、そこで言葉を切って、立ち上がった。

 彼は、私の前までゆったりと歩いてきて、その場で片膝をつく。


「クリスティーナ嬢。私は、君を愛している」

「――っ」


 私は、息を呑んで大きく目を見開いた。

 じわじわと、頬に熱がのぼってくる。

 ギル様は黄金色の瞳を潤ませ、緊張した面持ちで、私の手をうやうやしく持ち上げた。


「どうか、この私、ギルバート・フォレ・レモーネ・メリュジオンと――婚約してもらえないだろうか」


 ギル様のまっすぐな言葉に、私の鼓動が、うるさいぐらいに大きく跳ね始めた。



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