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【長編版】無能聖女の失敗ポーション〜働き口を探していたはずなのに、何故みんなに甘やかされているのでしょう?〜  作者: 矢口愛留
第三部 フォレ領編

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67. 決着がついたようです



 リアが、戦況の変化を予告した直後。


「――グルゥァアアアッ!」


 巨大獣(ベヒーモス)の上げた、怒気のこもった強烈な咆哮が、空気を、大地を震わせる。


「っうし、そこだァァーーーッ!!」

「待て、今はダメだ! 下がれ!」


 多くの騎士が遠くから攻撃を浴びせかけている中、先頭に立って近距離で戦っていた、二人の騎士。

 そのうちの一人が、これをチャンスと見たらしい。


 もう一方の騎士――姿は砂煙ではっきりとは見えないが、声からして、ギル様のようだ――の制止を無視して、巨大獣(ベヒーモス)の懐に飛び込んでいく。

 四足で立つ魔物の顔の真下まで来ると、彼は思い切り空中に跳躍し、青白く光り輝く大剣を、両手で振り抜いた。


「――星天豪雷剣(ライトニングブレード)ッ!!」


 青白い電撃魔法を剣身に纏い。

 巨大獣(ベヒーモス)の頸部を狙って、大剣が斜めに振り抜かれる。

 その豪雷の輝きたるや、まるで天から星が降り注いでいるかのようだった。


「ま、眩しい! なに!?」


 戦場が光に包まれ、私は反射的に瞼を閉じる。


「副団長の必殺技ね。相変わらず派手すぎるわ」

「威力も絶大だぜ! あれが決まってれば、勝ち確じゃないか?」

「しかし、あの硬い装甲だぞ」


 光に驚いたのは私だけで、他の人たちは慣れているらしく落ち着いていた。

 しばらくして、ようやく光が収まってゆく。


「光が落ち着いてきたわね」

「どうなった? やったのか?」

「っ、あれは――」


 副団長の放った雷光が収まり、砂煙も消えて、視界は妙に晴れ渡っている。

 大きな咆吼が、遅れて聞こえてきた。


「――っ! あれでも駄目か!」


 結論から言うと、副団長の一撃では、巨大獣(ベヒーモス)を倒せなかったようだ。

 私の近くから、どよめきが上がる。


「ねえ、巨大獣(ベヒーモス)の首元に、剣が刺さったままよ!」

「おい、一体どうなってるんだ? 副団長はどこだ!?」


 巨大獣(ベヒーモス)は、首元を斬られたのが痛かったのか不快だったのか――光が収まったときには、片方の腕を振り上げている状態だった。


「あっ、あそこ! 閣下と副団長じゃないか!?」


 騎士の一人が指さした先を見ると、副団長を腕に抱え、山吹色の光をまとって空中を舞っているギル様の姿があった。

 先ほど大剣を巨大獣(ベヒーモス)に突き刺した副団長は、気を失ってしまったらしい。


「本当だわ! 振り上げられた腕を、風魔法で回避したのね」

「だが……副団長は?」


 ギル様はそのまま風魔法を操り、副団長をゆっくりと地面に降ろす。そして、その場で声を張り上げた。


「――攻撃中止! 誰か、副団長を頼む!」


 その声に応じて、それまで中距離から魔法を撃っていた騎士たちが、副団長を回収しに行く。

 ギル様は再び空中に舞い上がると、先ほどまでとは打って変わって、高速で飛翔し始めた。

 ただの風魔法では到底出し得ない飛翔速度だが――、


「え……?」


 信じがたいことに。

 私には、ギル様の背中に、光り輝く大きな翼が生えているように見えた。


「――なんて綺麗なの」


 私は、戦闘中にもかかわらず、ほうと感嘆のため息をついた。

 ギル様の背中に輝く両翼は、ギル様の瞳と同じ、美しくまばゆい黄金色だ。

 鳥の羽というよりも、鱗で覆われたかのような、艶々とした滑らかな翼である。


 けれど、不思議と不気味さは感じられない。むしろそれは、流麗で無駄のない、完璧な美を感じさせた。


 たっぷりとした翼を大きく広げている様は、とても神々しくて――私は、建国神話に出てくる女神様の翼も、こんな風だったのかもしれないと想像を巡らせる。


「信じられない……高密度の魔力を背中から噴出させて、自由に操ってるのね。精度も、魔力量も、人間業じゃない……あたし、今、初めて公爵様をちょっと怖いって思ってる」

「怖い……?」


 私のすぐそばで、リアはわずかに震えている。

 小さく震え続けるリアの肩に、アンディがなだめるように手を置いた。


「なあ、背中からの魔力の噴出ってのはよくわかんねえけど、あの高速飛行は、風魔法とは違う魔法なのか?」

「え、アンディは、あの綺麗な翼が見えないの?」

「ん? ああ、オレには何も見えねえけど……」


 アンディはギル様の方を凝視しているが、あれほどキラキラと目立っている黄金の翼が、彼には見えていないらしい。

 私は首を傾げたが、私よりも驚いていたのはリアの方だった。


「……ティーナ、もしかして、スキルも魔法も使わないで、あの魔力塊が普通に、翼の形に見えてるの?」

「え、それはどういう――」

「――おい、見ろよ! ギルさんが!」


 私がリアにその意味を尋ねようとしたところで、アンディや騎士たちが声をあげた。

 ギル様の方を見ると、巨大獣(ベヒーモス)の首に刺さっていた大剣を両手で握り、大木よりも太い巨大獣(ベヒーモス)の首に、さらにグイグイと押し込んでいるところだった。

 大剣は先ほどとは異なり、真っ赤に赤熱している。炎熱系の魔法を流し込んでいるのだろう。


「グルゥアアアアーーーッ!!」


 巨大獣(ベヒーモス)はさらに暴れ狂い、腕をぶんぶんと振り回していた。


「危ないっ……!」


 太い腕がギル様に当たる寸前で、彼は黄金色の翼をばさりと翻す。

 ギル様をはたき落とそうと振り上げた巨大獣(ベヒーモス)の腕は、ギル様には当たることなく、自分の首元に思い切りぶつかった。

 振り上げた自身の豪腕が、首に刺さっている大剣をさらに深く押し込んでいく。


 そうして巨大獣(ベヒーモス)は、自らの怪力によって自らに致命傷を与え、地面に倒れ伏したのだった。


「……勝った……! 勝ったぞ!」

「うおおおお! 我々の勝利だ!」


 ふ、とギル様の背中の翼が、光の粒子となって消えてゆく。

 風魔法の浮遊力も消え去り、スローモーションのようにギル様が地面に落下していくのが見えた。


「――ギル様っ!!」


 私が悲鳴を上げると、ローブの胸元で輝いていた黄金色の飾り石が、突然強い光を放ち始めた。

 黄金色――いや、強烈な山吹色の光の奔流が、私を眩く包み込んでゆく。


 強い魔力と同時に、私の中に何かが流れ込んでくる。

 それはあたたかくて力強くて、とてもまっすぐな――。


 私の意識は、そこでふっと途切れたのだった。


 ギル様とティーナがどうなったのか、気になるところだとは思いますが、ここで第三部「フォレ領編」は完結です……!

 この後は、ギルバート視点のお話を二話ほど挟み、第四部「婚約編」となります(章題でネタバレするスタイル)

 引き続きお楽しみいただけましたら幸いです♪

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