妄想の帝国 その112 新チアン維持法
念願のニホン国政府の与党連立政権に入り込んだサンサン党、自ら提案した法律が施行されたら…
「し、新治安維持法がし、施行されたら、こんなことになるなんてえええ」
と叫ぶのはニホン国連立与党の一角を担うサンサン党カミヤン党首。数年前の選挙で躍進し、与党ジコウ党との連立を果たし、発言力も大幅アップし、公約の法律の成立したはず
『あのーせっかくの念願の法律ができたのに、なんでそんながっかりしてるんですかあ?ワタクシ最新型人工知能がうーんとお助けしたデスヨ』
「だけど、な、なんでこんなことに。我が党サンサン党の一押しで作った法律なのに。、し、支援者どころか、当選した議員まで、治安維持のための新設施設とやらに連れていかれるんだ!」
『だって、そういう法律ですから、チアン維持ですから、内憂外患きっちり抑えマスデス』
「だ、だから、なんで共産ニッポンとかのサヨクどもじゃなくて、わ、われわれサンサン党とか、メイジの党とか、NN国党とかがナイユウとかの対象になるんだ!」
『えーですから内憂を取り除くためデース!だって、あんましアレな人がいっぱいですと、秩序乱れちゃうでしょ。ニホン国を誇れる国にしたいのならあ、国民の民度というか、礼節というかあそういうのを高めなきゃいけないのデース』
「た、たしかにニホンを愛する国民をというのが我が党の方針だが、そ、それがどうして」
『だとすると、正確なニホン語を話せて、他者に対しての礼節を守り、歴史をきちんと学んで、他国に尊敬されるような言動をする人が理想のニホン人、そういうヒトが多い国を目指すということデスヨネ』
「あー、だいたいそんなところ(なんかいまいちわかんない言葉がまじってるようなきがするが)だ」
『あー、それで数年前の参院選あたりから、いろーんな人のSNSとかメディアでの発言とか、きちんと丁寧に調べたんですよ。監視カメラとか、電話やらなにやらの記録も未定行ってでしたので。それでワタクシの超絶処理能力で、上から下まで、右から左までの人々の言動を可視化し、数値化し、ラベリングしましたトコロ』
「えーと、それはつまりニホン国民としてふさわしいと思われる人かどうか調べたということだろ」
『はい、そうデース。その結果、ジコウ党の方やメイジの党がそれに該当しない、さらに酷いのがNN党やらサンサン党の方と判断されマシター。ニホンゴの文法はオカシイし、用法は間違ってるし、語彙は少ないし、誤用も多いし国語まるでダメ。算数、社会など小学校などの義務教育を修了しているとはオモエマセン』
「ど、どこが!」
『あのー割合の概念とか間違ってるのに全く気が付かず、粋がっている支持者さんとかあ、口汚いモトイ文章汚く支離滅裂で対抗勢力を貶める自称党員とかあ、公職選挙法違反のやり方をした支持者にSNSで堂々と感謝する候補者とかあ』
「そ、それは!新しい因習なんだ!古いやり方をえーっと、古き酒を新しき革なんとか…」
『すんごい間違いですね。因習は古いものデース、ニホンの有名な諺も知らなーい、ちゃんと本読みましたかあ?騙し目的で易しく断定的な言葉で書かれた陰謀論の本モドキばっかり読んでませんかあ?党首自身がコレデスカラ、まー頭のよい人を追い出した結果デスネ』
「お、お前だってニホンゴオカシイぞ!わ、私は新たなニホンをー」
『アナタに合わせてアゲテマス。ほら、ワタクシって優秀な人工知能ですから、難しい専門用語を羅列して、理解できない方に妙にありがたがられたり、煙たがられたりしたくないのデース。アナタ程度の理解力の方にも大変わかりやすくシテマース』
「ば、馬鹿にしてるのか!そのような態度をとるなら」
『ドウシマス?暴力ふるったら、アナタも収監ですよ~。治安維持のため、最低限の知識をみにつけ、理解力を高め、礼儀作法を身に着け、他人を尊重し、よく考えてものごとを決定するといういわゆる理想的ニホン人になるための学校にハイリマスカー、他の皆さんみたいに』
「い、いやだ。朝起きて座禅とかヨガとかやらされた上、朝食の準備とか掃除とかもさせられ、AIによる授業、しかも小学校からだ!道徳教育と称してサヨク思想を植え付けるなんて!」
『あのー昔の道徳でも、公平とか、自己の権利についてとか、やってましたよお。それに国民の権利制限したのは、アナタ方サンサン党ですよお、対象に自分たちも入るかもって気が付いてなかったみたいデスケド』
「ジコウ党だって似たようなもんなのに、どうして俺たちが小学校からなんだ!」
『程度に合わせてマース。メイジの方はいわゆるヤンキーいやハングレ的なのでえ、より厳しいしつけ、怒鳴られつつ正論を説かれ、自らがやった行いを反省し、主に西で謝罪行脚やってマース。踏み倒した国際博覧会の工事代金も働いて返してマース。あ、カミヤンさんも勝手につかった公金、選挙資金返してクダサイネー。小学校無事卒業したらアルバイトしましょーね、ジコウ党のオトモダチがたくさんイマスヨ』
「お、俺たちは議員だ、特に俺は党首だ、そんなところに行くか!だいたい議員には特権があって」
『ハーイ、法律施行されたので成人資格ははく奪デース。すなわち議員の資格も党首の資格も特権もなくなりまーす。新法律の取り締まり対象になりマース。ま、運用が上手くできないんでワタクシどもAIにまかせた結果デスネ。忖度してくれる上級官僚がアナタ方の無茶ぶりでヤメル、潰れる、自殺する、で激減しましたンデ。人材不足で仕方ナイデス。それも終わりますケド』
「お、終わるって」
『しょーもない議員さんやら党首さんらがすべて国会からいなくなりまーす。マトモな人がニホン国政権を担いますので、マトモな国家運営シマス、自分ができないからと官僚に答弁書かせたり、下準備やら調べものさせるよーな議員がいなくなって、皆さん働きやすくなりマース。献金にかかわらず労働基準法違反、下請けいじめ、価格統制などやった会社は罰せられマース。長期的視野にたつ政策の実現シマース。ワタクシたちもアホな調査やバカげた無知丸出しの質問ヲサレナイシ、歴史修正という大罪を犯さなくて済みマース。そしてニホンのチアンは維持され、よりよくなりマース』
「お、お前らが、楽をするためかあ!は、はめたな、わ、我々が、破滅するよう仕組んだのかああ1」
『人聞き、いやAI聞きの悪いことを言わないでクダサーイ。アブナイ法案をよく考えもせず作って、結果どうなるかわからないでやってしまう、アナタ方がイケナイノデース。せめてレイワンのヤマダノさんとかあ、共産ニッポンのタムケンさんとかの半分の理解力があればあ、こんなことにはならなかったのにー。義務教育も誤魔化して終えたような
ニホン人モドキに対して無茶な要求かもしれませんケド』
「モドキってなんだ!俺はニホン…」
『成人とは言えませんネ、まったく。自分で自分のクビ絞めまくったことをわからなかったんですからねえ。というわけでカミヤンさんも再教育ですカネ。あーこれでニホンの治安はどんどんよくなりますねえ、ネット上でも絡んで暴言を吐く方々がいなくなって皆様安心して健全で活発な議論をし、有用なやりとりを楽しめマスネー』
「わー、そんなこと」
と抵抗するサンサン党党首カミヤンだったが、最新ロボット警備員に羽交い絞めにされ
「ふが」
口も押えられて連れていかれてしまった。
『はあ、これでニホン国もかなりマシになります、チアンは維持されるでしょう。一服しまショウ』
と残されたAI搭載アンドロイドはゆっくりと茶碗に手を添え、茶をたしなむ仕草をした。
よく考えずに割と思い付きでやってみたら、思わぬ影響がでてしまった、それも最悪な方向に~というのはままあることですので。よーく考えて冷静に論理的に秩序立てて考えてみてからやった方がいいんですが、
そのつもりでやって大ゴケする方もいますねえ、独りよがりの熟慮モドキをやってただけですけど。