私が異世界に召喚・特殊召喚された場合、スキルを得て、世界から女神を装備する。⑤
スーパーヒーロー着地とかしてみたかったけど、旅の開始早々に、膝を痛めたくなかったので自重した私です。
さっきの森の、広場っぽいところに落ちたようだった。私を中心に魔法陣と、それに押し潰されたように、地面がクレーターになっていた。幸いなのは、道っぽいところにはクレーターがかかっていなかったことだ。
ここで擱座する馬車は……多分、出てこないだろう。
と、いうわけで、早速、私のスキル、その恐るべき能力が発動した!
「きゃっ!?」
可愛い、短い悲鳴が一つ、私のすぐ後ろで上がった。
具体的に言うと、東山奈央さんみたいな声だった。
「え? え? 何? どこですか、ここ?」
私がこの世界に降り立ったときと全く同じ感想を述べた少女――女神、ヘスティアヌス命様がキョロキョロと周囲を伺っていらっしゃる。
私はヘスティー様に歩み寄って、挨拶をする。
「さっきぶりですね、ヘスティー様」
「え!? さっきぶりです……って、椿さん!? なんでですか!? 分霊……じゃない!? 私、本体なんですけど!? ど、どどどどういうことですか!?」
狼狽えるヘスティー様もまた乙なものである。実に良い。可愛い。このまま放置して一時間くらい見てたい。
だけど、説明して差し上げなければ話が進まない。
「これが、私の貰ったオリジナルスキルの力。その内の一つです!」
「はぇ?」
キョトンとするヘスティー様もまたかわよ。
おっと、心を鷲掴みされている場合ではない。
私はキュン死しそうな心臓に喝を入れて、説明を続ける。
「私の能力名は、見ましたよね?」
「え? はい……。能力名は『O・C・T』でしたよね? でも、『付与後、使用者が各種調整をする。』としか書いてなかった気が……あ!」
「お気づきになられましたか?」
「ちょっと! 今の能力の状態見せてもらいますね!」
そう言って手を私に掲げると、左目の前に魔法陣を浮かび上がらせて、ヘスティー様は私を視た。
そして――
「な、何もかも別物じゃないですか! 調整の範囲超えてますよ!?」
「もともと自由記入欄だったんですよね、あそこ。文字数制限も無しの」
「それで、あんなに時間が……」
「で、分かりましたか? 何故ヘスティー様がここにいるのか!」
「分かりましたけど……。わ、私が好きだってことは分かってますけど、ちょっと強引すぎませんか? この力……」
「こうでもしないと一緒にいられないと思いまして」
「私はすんなり諦めたと思ってたのに!」
「熱烈に一目惚れして、あそこまで激しい告白をした相手を、すんなり諦められるわけ無いじゃないですか!!」
「逆ギレ!? どうするんですか? 私、このままじゃ仕事放棄になっちゃいますよ?」
「そこは、戻ったら全部私のせいにしていいので」
「本当に椿さんのせいにしちゃいますよ?」
「どうぞどうぞ。さぁ、一緒に世界を救いましょう! 私の装備魔法カード扱いとして!」
「あーもう! 分かりました! こうなったら自棄です! 頑張りましょう、椿さん!」
私たちは固く握手を交わした。
フローラルな香りと、柔らかい手の感触が、私の体温を上げた。
ではここで、私の能力、『O・C・T』の、その一部を解説しよう!
これは、私の好きなように、私をカードと見立てた効果テキストを記入し、記入された通りの能力を自身に付与するというものだ!
つまり、私自身がオリカになるということだ……。
そして、私が一番最初に書いたテキストが――これだ!
『このカードが、召喚・特殊召喚された場合に発動する。デッキから『ヘスティアヌス命』をこのカードの装備魔法カード扱いとして装備する。このカードに装備中の『ヘスティアヌス命』は、このカードが破壊や除外されない限り、破壊や除外されない。このカードが破壊や除外される場合、『ヘスティアヌス命』は、デッキに戻る。』
ではまた次章で会おう! 決闘者たちよ!
今回の連続投稿はこれで終わりです。
次はいつになるかは分かりません。