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装備できる。その13 セレアイラ視点②

 な、何を……言っているの?

 神殿長が、神官を廃止させた? 神官だったのに……?

 あれ? 神殿長が神官だったのなら、勇者召喚に神官が必要って知ってるはずで……でも、その廃止を訴えたのが神殿長で……え?

 頭が混乱してきた。なんで? 動機が分からない。そんなことやる理由なんてこれっぽっちも無いはずなのに……。


 私が混乱で頭をかき乱していると、神殿長はまた愉快そうに笑った。


「神官だったのに、何故そんなことを? そう思っているのでしょう。理解できます。私も貴女の立場だったら、きっとそうなるでしょうね。いやぁ、貴女の百面相が面白くて、つい、余計なことまで話してしまいました。では――死んでもらいましょうか」

「――ええ!? 死、死んで……って……え? 私、何も聞いてないです! さっき、それでいいって……そういうことにするって……」

「ええはい。そうですね。ですが、ほら、私が神官を廃止させるように仕向けたって、貴女は聞いてしまいましたから」


 それは、神殿長が勝手に話したんじゃないか! こんなの――

「理不尽です! 神殿長が自分から話したことで私が死ぬなんて!」

「なぜです?」 

「なぜ……って?」


 さも当然のように、キョトンとした顔で神殿長は(のたま)った。私はその言葉に絶句して、何を言おうとしていたのかを、ど忘れしてしまった。

 神殿長は続ける。

「貴女たち神子魔術師は、教会の所有物です。それがどんな扱いを受けようと、貴方方自身がどうこう言える立場にはありません。特別扱いされていた貴女は知らなかったようですがね。用済みとなった今なら、その身を以て知ることになるというのも、道理というものでしょう」

「そんな……」

「あー、それと……さっき、私が何を話していたのか聞こえなかったと仰いましたが、あれ、嘘ですよね」

「え?」

「私の目は特別でしてね、魔力を通すと、嘘を言った人間が光って見えるのです。貴女――バチバチに輝いていましたよ?」

「え、えっと……」

「はははは! あの会話を聞かれていた。私と魔王様との繋がりを知ってしまった。そして、私が神官を廃止させたことを知ってしまった。――殺すには充分な理由ですね」


 指折り数えて私の罪状を列挙すると、不気味な笑顔でそう言った。


「残念ですよ、セレアイラ。何もせず、眠って夜を過ごしていれば、もう少し長生きできたものを」

「もう……少し?」

「ええ。当然でしょう。力を持った魔術師を野に放つわけにはいかない。だからといって飼い殺すのも面倒です。では、処理してしまうのが一番良い。先に出ていった皆と同じように、ね」


 こんな形で、出て行ったと思っていたみんながどうなったかを知ることになるなんて、思いもしなかった。

 少なくとも、生きているとは思っていた。それが……。

 

「そんな……みんな……」

「いやはや、勘の鋭い者も結構いたものです。しかし、頭の使い方がまだまだ馬鹿なお子様でした。それが運の尽き。下手な正義感と好奇心は猫をも殺すとはよく言うでしょうに」


 そして私も、これからその、馬鹿な子供の仲間入りをすることになるらしい……。


 ああ、ヘスティー様、ツバキさん、こんなことなら、最期に、あの広いベッドで一緒に眠っていたらよかったのに……。


 神殿長が詠唱を始める。短文で、簡潔で、ハッキリとした発音。何をしてくるのかもよく分かる。そして、その綺麗な詠唱から、威力の類推もできる。

 まだ私はここまで洗練した詠唱を(そら)んじられない。

 対抗魔法や防御魔法は間に合わない。間に合ったとしても、私程度の精度では、一撃防げるかどうか。


 ああ、悔しい。

 悔しいけど……悲しいけど……。


 ――すごく……。

 ――綺麗だ。


「彼の罪人(つみびと)を焼き清め尽くし給え。慈悲を――『断罪の火刑フレイム・ジャッジメント』」


 荘厳にも聞こえるその響きが私を包み、炎となって、私を灰燼に帰そうと押し寄せてきた。


 でもこんなのやっぱり酷い……。

 あんまりだ。


「……死にたく、ないな……」




「間に、合ったぁあっ!!」


 炎の濁流の代わりに、私の耳に入ったその声は、聞き覚えのあるものだった。

 私の命の恩人の一人。

 私と同い年か少し下くらいの見た目と背丈。

 とても、大きくて頼もしいとは言えない、小さくて華奢な背中。

 ……でも、その小さな背中が、今の私には、とても――とても大きく、目に映った。


「ツバキ……さん……」

「もう大丈夫。……助けに来たよ、セレアイラさん!」


 ああ、どうしよう……。


 そのとき、私の胸の鼓動が、一際大きく叫びだした。

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