私は、自分フィールドのモンスターを、装備魔法カード扱いで装備できる。その8
ボディラインが出る、ぴっちりとしたローブを着ていたセレアイラさんのスタイルは、改めて確認するまでもない、完成された美であることは分かっていた。
人前で衣服を脱ぐことそのものに抵抗を覚えていた彼女が、その服を脱ぐに至ったのには、女同士であることを理由に、ヘスティー様が「どうってことないです!」を連呼する作戦で、羞恥心の前後不覚を招いたことが勝因だったのだろう。これが神のゴリ押しかと、舌を巻いた私です。
そして今、私は、二つのスイカを見ている……。
お盆のお仏壇にだって、一つしかお供えしないのに、それを丸々二つも……。ありがてぇと拝んでしまいたいくらいだ。
まさか、ローブ越しに見えていたもの以上のものがお出になるとは……着痩せするとかそういう次元ではないが、ありがとうございます!
「椿さんも、脱がないと入れませんよ?」
慌ててセレアイラさんから視線を逸らし、見ていないフリをしながら、自分の貧相な体を晒すことに躊躇している私は、視界の端に映ったマッサージチェアにでも腰かけて時間を潰そうと考えながら、ヘスティー様の方を向いた。
「あの、ヘスティー様、やっぱり私――は!?」
黄金比という言葉がある。詳しくは各人で調べていただくとして、私の目の前には紛れもなく、それを体現した究極の美があった。
セレアイラさんのスイカとは違うが、しっかりと存在感を放つそれは、言うなれば和梨。それも結構大玉に生育するやつ。品種名は色々と権利が怪しいので、ここではあえて言わないが。
こちらは、お盆のお供えとしての数はちょうど良い。神様だからそこは過不足無くといったところだろうか。
ここまで言っておいてなんだが、私はなぜお盆のお供えで例えてしまっているのだろうか?
二人のスタイルに比べたら、私のそれなんて、お鈴の音が鳴るのに相応しいレベルだからと、無意識な自虐が比喩表現にまで現れているのだろうか?
はぁ、二人のスタイルを見てしまったら、自分の貧相さがより際立って、惨めになっていく。
何より、お二人の目を、こんな、食べ終わったアジの開きみたいな体を見せて汚したくないという想いが一層強くなってきた。
やっぱりここは、そこなマッサージチェアで、特に凝ってもいない体を揉み解すことにするか……って、あれ? なんか、足浮いてないか、私。
――地に足がついていない。物理的に。
「いつまでモジモジしてるんですか! 入りますよ、椿さん! ほら脱いで脱いで!」
ヘスティー様がいつの間にか背後に回って、私の脇に手を入れ、ひょいと持ち上げていらっしゃった!?
「私も手伝います」
「あ、お願いしまあす!」
そしてセレアイラさんが、手をワキワキさせながら真顔で近づいてくる!?
「ツバキさん、さっき私の体をじっくり見てたので、お返しさせてもらいますね」
バレてた!? いや、私だって視線ぐらい気づくもん、そりゃ気づいてますよね! 深淵覗いてたら深淵だって覗いてらあ!
でも、ちょっと待ってください二人とも!
「自分で……自分で脱げますからぁあ!」
そんな私の心からの叫びは無視されて、私は二人に服を剥かれたのでした。
ヘスティー様は前科二犯ですからね、これで。