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五話 ゲーム中毒

 今日もいつものように公園に男女二人がベンチに並んで座っている。全てがいつもと同じだった、一つだけ除けば。それは今日のハヌルは公園の風景じゃなく、自分の携帯をいじっていたことだった。


「ハヌルさん、珍しくスマホをいじってますね」


 意外な姿にソラが驚いた。今までソラは携帯をいじるハヌルの姿を見たことがない。それで、もしこの人携帯もないか、と思ったこともある。

 いつもぼんやりと風景を眺めたり、様々な話を交わしたので、今日のハヌルはちょっと不慣れだ。しかも、ソラの言葉に何の相槌を打ってない。


()さん〜、何してるんですか。私にも見せてください」


 ソラはどうしてもハヌルの関心を引くために、声を掛け続けた。だが、ハヌルはソラニ目もくれず、携帯から目を離さない。


()さん〜、()さん〜、()さん〜」


 ソラは何度もハヌルを呼んでみたが、やっぱり返事はなかった。

 結局、ソラはハヌルの携帯を奪った。


「あれ?! 突然誰がっ、・・・何だソラさんでしたか。いつからここにいたんですか」


 やっとハヌルは携帯から目を離し、ソラを見た。正確にはソラの手にある携帯を見ているんだけど。

 ソラはハヌルの問いに呆れすぎた。


「私はほぼ一時間前からずっとここにいたんですよ?!」

「しかし、誰かがくる気配は全然感じなかったですけど」


 ハヌルが怪訝な表情をする。本当に気づけなかった様子だ。その姿を見ると、ソラはなんとなく頭が痛くなった。

 確かにソラがハヌルの隣に座った時、ソラはハヌルと挨拶を交わした。いつもと違って、ソラから先に「おはいよございます」と挨拶した。だが、確かにハヌルから「はい、おはいよございます」と挨拶の返事を聞いた。


「それはそうだとして一体何をしていたんですか」


 ソラが手の携帯の方へ視線を移った。携帯の画面にはゲームみたいなものが実行していた。


「これまさかゲームですか」

「はい」

「じゃあ、このゲームのせいで、さっきからずっと私を無視したんですか」

「いや、無視したのではないです。本当にただ気づけなかっただけですよ」

「それがそれですよ。同じことなんですよ」

「ははい。すみません」


 ハヌルがしょんぼりして俯いた。ハヌルの反省するような姿に怒るのはここまでにしよう、とソラは思った


「ところで、これ何のゲームですか」


 ソラが携帯画面をあちこちをいじりながら聞いた。すると、ハヌルが驚いたようにぱっと頭を上げた。


「ソラさん、このゲーム知らないんですか。僕も知り合いの兄貴におすすめされて始めたばかりですけど、最近一番流行りのスマホゲームらしいです。ゲーム内でカードを引いて・・・」


 ハヌルが親切にゲームについて説明してあげた。親切すぎて余計なところまで詳しく説明した。

 ソラは途中からは何が何かさっぱり聞き取られなかった。それで最後には適当に相槌を打った。


「そうですか。私、全然知りませんでした」

「ま、まさかこのゲームまだ韓国だけで流行っているのかな」

「いや、それは多分違うと思います。ただ私がゲームにあまり興味ないので」

「え? ゲームに興味がないんですか?! 本当に?」


 ハヌルが信じられないという顔で何度も聞いた。だが、その度に返ってくる返事は「はい」だった。

 実際、ソラはスマホゲームに全然興味がなかった。スマホゲームについては無知だ。しかし、だからといってソラが完全にスマホゲームをしてないわけではなかった。ソラもたまにスマホでゲームはした。だが、それをスマホゲームと呼べるかどうかは曖昧だった。だってソラがやるゲームはたまに暇つぶしにするスマホチェスや数独、これが全部だった。

 それ以外には特にスマホでやることはない。スマホで友たちと連絡したり、ユーチューブ見たり、ネット・サーチやネットショッピング、オーディションの台本のファイルをダウンロードするだけだった


「ゲームに興味ないという人、僕、初めて見ました」


 ハヌルが真剣な顔で言った。


「私は結構いると思いますが。むしろ私は()さんがゲームやるのが驚きですよ」

「僕はゲーム好きですよ、そして僕の周りの奴らもみんなゲームが大好きんだし。しかも僕の知り合いの兄貴は結婚した後にもゲームをやりすぎて毎日妻さんに怒られる人もいますよ」

「本当最低ですね」


 ソラが眉を顰めた。


「もしかしてその兄貴って人、このゲームをおすすめした人ですか」

「おっ、はい、そうですよ」


 ハヌルが驚いたように目を見張る。


「私もその人一度会ってみたいですね、是非」


 と言うソラの声は穏やかだったが、とこか恐ろしかった。このゲームをハヌルに推進した人をただでは置かない勢いだ。


「とにかく、私といる時はゲームはしないで欲しいです」

「はい、ひと前でスマホばかりいじるのは良くないから、そうします」


 ソラは満足したように笑顔を浮かべた。

 しかしその翌日、


「おはいようございます、()さん」


 ソラはいつものように公園に来てハヌルに明るく挨拶した。しかし、


「・・・・・・」


 ハヌルは俯いているだけ、ソラの挨拶に何の反応もなかった。これにソラはなんかおかしいだと思って手を振ってみた。


「もしもしー、()さん? 私ですよ、私、愛田ソラです」

「・・・・・・」


 だが、やっぱりハヌルは何の反応がなかった。ソラ戸惑ってハヌルの肩を掴んだ。


()さん?! しっかりしてください。()ぃさん!」


 ソラが何度もハヌルの名前を呼んでみたが、ハヌルは静かだった。しばらく後、


「・・・・ううぅ」


 ハヌルがやっと目を覚めた。ハヌルは目を擦りながら、ソラと目を合わせた。


「あれ? ソラさん、いつ来たんですか。おはいようございます」


 ハヌルが目を半分閉じたままソラに挨拶した。とっても眠いそう。


「昨日よく眠れませんでしたか?」


 ソラが心配そうな顔で聞いた。


「いえ、よく寝たかどうかその前の問題です。実は昨日今日分のゲームをまとめてやったせいで、一睡もできなかったです」

「え? つまり徹夜したってことですか」

「はい、この公園に来るまで起きていました」


 ハヌルがほとんど目を閉じたまま言った。今にも寝入りそうな様子。

 その姿にソラが深いため息をついた。


「はぁ、今日はちゃんと寝なさい」

「はい、そうしまぁ・・・グゥ」


 話し中、ハヌルが眠ってしまった。結局、この日はハヌルと会話できなかった。

 そしてその翌日、ハヌルは昨日よりもっと元気そうな顔で座っていた。ソラはハヌルに駆けつけて挨拶したが、ハヌルからは何の反応もなかった。ハヌルの目は携帯に固定されていたのだ。

 初日から直すのは流石に無理だと思って、別に何も言わなかった。だが、その翌日にも、その翌日にも、その翌日にもハヌルはゲームばかりした。もちろん、ソラと会話を交わしたりしたが、普段ほどではなかった。結局一週間が経った今、


「今日もスマホばかりいじってるんですか」


 むかついたソラは結局ハヌルの携帯を奪った。すると、ハヌルの目線が携帯についていった。


「あれ? ソ、ソラさん?」


 ハヌルの目線がソラの顔に止まった。


「いつ来たんですか」

「さっきです」

「来たら来たと声をかけてくれば」

「しました」

「・・・・・・」


 ソラの短い返事にハヌルは何となく不安になった。自分を見下ろしているソラの目はとっても冷たかった。


「これ失礼かもしれませんが、もしかしてゲーム中毒ですか」

「・・・そうかもしれませんね」

「私が一昨日言ったんでしょう。私といる時はゲームしないで欲しいって」

「はい」

「ところで、どうして今もゲームしているんですか。しかも私の挨拶も無視して」

「実は昨晩ゲームの代わりに睡眠を選んで、その分を今ソラさんがくる前までやろうと思ったんです。だが、つい夢中しちゃって、ごめんなさい」


  ハヌルが頭を下げて謝った。その姿にソラがため息をついた。


「じゃあ、最初からゲームをやらなければいいじゃないですか」

「それは無理です。毎晩やることなくて、ゲームするのに、ゲームをやめるのは無理です。それじゃ退屈で耐えられませんよ」


 ハヌルが顔をぱっと上げてソラを見上げた。


「しかし、今まで私といる時はゲームしてなかったじゃないですか」

「その時はまだ日本で携帯開通をしてなかったので、携帯自体を持ち歩いてなかったです」

「じゃあ、今は」

「開通しましたよ。それもデータ無制限で」


 ハヌルが誇らしげに言った。


「ふむ、じゃあ」


 ソラがハヌルの携帯を触り始める。何かをタイピングするような指の動きに、ハヌルは首を捻った。

 しばらく後、笑顔でソラが携帯をハヌルの目の前に突き出した。そこにはある電話番号が入力されていた。


「これ私の電話番号です。毎晩やることないなら私が付き合ってあげるから、私と電話しましょう」


 ソラの提案にハヌルが面食らった。ソラはそういうハヌルを気にせずに話を続けた。


「この私がゲームなどよりずっと楽しくしてあげますから、私と電話しましょう」

「はい?」

「そしてこの切っ掛けにゲームをやめるのはどうですか。きっとそっちの方が絶対いいと思うんですけど」


 ソラがハヌルに携帯を返しながら言った。ハヌルはまだよく理解できなさそう。


「じゃあ、今晩電話お待ちしておりますよ」


 ソラがそういうハヌルを後にして先に帰った。

明日はクリスマスですね。皆さん、Happy Christmas。

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