十四話 撮影(1)
日曜日の十二時、ある番組のレポーターになったソラはサ撮影のために外に出ていた。まだ撮影の前だったので、ソラは折りたたみ椅子に座って待機していた。
「今日、私、うまくできるかな」
ソラが深いため息をついた。ほぼ四年ぶりにカメラの前に立つのだった。久しぶりにカメラの前に立つのを考えると緊張して落ち着かなかった。
ソラは深呼吸した。少しぐらいは楽になった気がした。
ソラが両手をギュッと握った。
「よーし、今日の撮影のために頑張ろう」
と気を引き締めた瞬間、スタッフが大声でソラの名前を呼んだ。
「もうすぐ撮影が始まるので、あそこで待機してください」
スタッフはソラの前に立ってカメラの前を指さした。ソラは「はい」と短く答え、すぐスタッフが示した所に向かった。
ソラはカメラの前に立って撮影監督とスタッフたちに「今日はよろしくお願いします」とお辞儀をした。
「じゃ、始めよう。その前に愛田さんはもうちょっと右に」
「あ、はい」
ソラが監督の言う通り一歩右に行った。監督は満足そうに親指を立てた。
「これ生配信じゃないから、緊張する必要はないよ。ミスしてもまた撮ればいいから、楽に、楽にして」
「はい、ありがとうございます」
「じゃ、撮影始まるよ」
監督がソラに始まりの合図を送った。すると、ソラは事前に覚えておいた台本のセリフをすらすら読み進めた。
「今日は最近ネットで話題になったおっぺラーメン屋に来てみました」
最初のセリフは問題なく、よく言った。監督も満足そうな笑顔を浮かべていた。
このまま勢いなら、問題なく済ませるそうだった。こう思うと、さっきの緊張感が消えた。
ソラは一段と楽になった気持ちで次のセリフを口にしようとした。
「このおっぺラーメン屋には特別なメニュっ」
「あれ? あの人、愛田ソラじゃねぇ?」
「ん? あー、ほんとだ、またテレビに出るのかな」
「昔、あんなことがあったのに、またテレビに出るんだな」
通行人たちの話し声がソラの耳に聞こえた。その瞬間、頭の中が真っ白くなって、次のセリフが思い出せなかった。
「す、すみません。もう一回やります」
ソラが監督とスタッフ達に頭を下げて謝った。
「じゃあ、最初から取り直します」
「はい、本当にすみませんでした」
結局、録画は再び最初から始ることになった。監督はまた始まりの合図をソラに送り、ソラは事前に覚えておいた台本を読み進めた。
だが、
「・・・・・・」
どういうわけか、言葉が出なかった。セリフを忘れたわけでもなかった。なのに、記憶のセリフが口に出なかった。正確には、声が出なかった。
さっきの通行人たちの会話を聞いた後、怖くなってきた。すると、昔のことを思い出した。
自分を罵るコメント、自分のことを記事にするために押しかけた記者たちとカメラのフラッシュ、こういうことが頭を乱した。
また人が怖くなってきた。前のカメラを見ると改めて気づいた、この番組を通じてまた多くの人が私を観るんだと。そう思うと、足に力が入らなかった。そのままソラは俯いてうずくまった。
「愛田さん?! 大丈夫?」
びっくりした監督とスタッフたちがソラの周りに集まってきた。多くの人たちに囲まれ、さっきより心臓の鼓動が速くなった。息も苦しくなった。
「ちょっと休んでまた続けます」
結局、監督はこのまま続行するのは無理だと判断し、大声で休憩を告げた。
ソラはさっき座ってた椅子に戻って俯いた。
「大丈夫なの?」
ソラのマネージャーの田中澪がソラに近づいていた。澪は手の紙子コップを手渡した。中にはお湯が入っていた。
「ありがとう、澪姉さん」
と言い、ソラは一口飲んだ。
「君、本当に大丈夫?」
「大丈夫・・・だと思う」
「もし無理そうなら、今でも言ってね。私が何とかするから」
「うん、わかった。でも、今はそんなことよりちょっと一人にさせてくれ」
「わかった」
澪がソラの願いとおり離れてくれた。こうしてやっと一人になったソラは深いため息をついた。
「やっぱり、まだカメラの前に立つのは無理か」
ソラがコップを見下ろしながら呟いた。
実は昔ハヌルと出会った前に、あるドラマのオディションに受かったことがあった。しかも、比重が大きい役だった。
だが、ソラはその役を断った。実際にカメラの前に立つと想像すると怖くて耐えられなかった。
でも、ハヌルと出会ってからは少し変わったと思った。それで、この番組のレポーターの頼まれた際、すぐ承諾したが、やっぱり無理だったようだ。念の為、昨日シみゅレーションまで何度もしてみたが無駄なことだった。
「今でも澪姉さんに、無理だと言うか」
ソラは悩んだ。もちろん、またカメラの前に立ちたかったが、勢いだけじゃ無理みたい。今は何をしても、カメラの前に立つことはできない。
カメラの前に立つと嫌なことで頭が乱すので、進行ができなかった。だから、残念だが、このレポーターはやめるしかなかった。
これは仕方ないことだった。わがまましても周りに迷惑かけるだけだった。今もこう被害を与えているのに、これ以上の迷惑をかけるわけにはいかなかったから。
心を固めたソラは澪を呼ぶために手を高く上げた。そして大声で澪の名前を呼ぼうとした瞬間、
「え? 今入れませんか」
おっぺラーメン屋の入り口からなんか聞き覚えのある声がソラの耳に聞こえてきた。おかしいね、と思ったソラは澪を呼ぶのは後にして、おっぺラーメン屋の入り口の方に顔を向けた。
声の持ち主の顔を見たソラはびっくりして目を見張った。
「えぇ? ええぇえ?! なんで。な、なんで、李さんが今ここに?」
その声の持ち主の正体は他でもないハヌルだった。
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あと、今インフルエンザにかかったので明日は休みます




