十一話 初出会い(2)
「うるさくて邪魔ですから」
ハヌルが横のソラに言った。ほんと冷たい言い方だった。
「別のところで行ってください」
ソラは涙が出そうだった。さっき唯との電話したことと思い出したくない記憶が思い出したせいで、感情のコントロールができなかった。
「あなたも私のことが嫌いですよね、私が誰だかわかっているから」
自分で言ったが、とても馬鹿みたな言葉だった。初対面の人にするような言葉ではなかった。だが、口が勝手に喋り続けた。
「返事はいらないです、どうせ、私のこと嫌いでしょ? 私も知ってますよ、だってみんな、私のこと大嫌いから」
ソラの声がだんだん大きくなった。目に涙が溜まって視界がぼやけた。
「家族も友たちも事務所の人も街の人たちもみんな、前では笑顔で接してくれるが、裏では私の悪口を言っているのよく知ってますよ。だから・・・頑張っているのに。また人の前に立つために、また人々に喜びを与えたくて精一杯頑張っているのに、なぜ、みんなわかってくれないんだ!」
ソラはもう自分が何を言っているのかわからなくなった。
「実はとっくに知っていたんです。私がいくら頑張っても無駄だと、人の感情というものはそう簡単に変わらないと。だから私がいくら頑張っても・・・」
その瞬間、ソラの目から熱いものが感じた。その熱いものは頬を伝ってそのままソラの膝に落ちた。そのあと、急に涙が溢れてきた。
ソラが慌てて顔を逸らした。
「ご、ごめんなさい。急にあんなこと言っちゃって」
ソラが涙を拭いながらそう言った。相変わらず涙は溢れていた、どうしても涙が止まらなかった。今まで溜まっていた感情が爆発したのだ。
「もし今泣いてるんですか」
ハヌルの声が聞こえてきた。ソラは「違います!」と不定した。ソラはハヌルにバレないように完全に背を向けて声を抑えて泣いた。
そんな中、いきなりハヌルが立ち上がるような音がした。あと、足音がした。やっと一人になれる、とソラは安心した。だが、その足音はだんだんソラに近づいた。足音はソラの前で止まった。
「역시 울고 있잖아요(やっぱり泣いてるじゃん)」
「えっ?」
急にハヌルがしゃがみ込んでソラを見上げた。黒髪に白い肌、白いロングスリーブを着ている男がソラの目に映った。「急に何ですか」とソラは言おうと口を開いた瞬間、突然白いものがソラの視界に入った。ソラはびっくりして目を瞑った。暖かい体温が頬から感じられた。ソラがゆっくり目を開いた。
「泣かないでください、みんながあなたのことを嫌いなわけではないから」
ソラの目には手を伸ばして涙を拭うハヌルの姿が映った。その姿にソラの心がドキドキした。
「少なくとも僕はあなたのこと嫌いじゃないですから」
「うそ・・・」
ソラが小さな声で呟いた。
「うそつかないでください。どうせ今も面倒臭い女だと思っていますよね? 初めて出会ったばかりの女がこんなみっともない姿を見せたから、そう思うのも当然です」
「いえ、そうは」
「結局、私のことを好きてくれる人なんてこの世には誰もいません」
ソラが目を落とした。さっきより涙が溢れてきた。もう疲れて涙を拭う力もなかった。ぼやけた視界で涙が落ちるのを見るのが精一杯だった。
ハヌルはそれでも静かに涙を拭ってくれた。
「じゃ、あなたは僕のことが嫌いですか」
ソラが静かに首を右左に振った。初めて出会ったばかりの人だ、そういう人を嫌いになるわけがなかった。
「僕もそうです。あなたがはいめて、僕も初めて出会ったあなたのことが嫌がるわけがないでしょう」
ハヌルが微笑んだ。ソラは本当かなと思った瞬間、自分の悪口記憶が脳裏によぎった。
「いいえ、違います。私はあなたと初対面だからですが、あなたは違うでしょう」
ソラが大声を上げた。
「どうせあなたも私が誰だかわかっているんですよね? 私に対する記事も読んだこと」
「ちょっ、ちょっと、お話し中申し訳ありませんが、あなたって誰でうか」
「はい?」
「もし有名人なんですか、もしそういうのなら気づかなくてすみません。僕、こっちの有名人を全然知らなくて」
ハヌルが頭を下げて謝った。その姿にソラは驚いて涙も止まった。
「ほ、ほんとに私のことを知らないんですか。私ですよ、愛田ソラ」
ソラが信じられないという顔で聞き返したが、ハヌルからの返事は「すみません、全然知らないんです」だった。
こういう反応は初めてだった。自分を知らない人を会うのはほぼ久しぶりだった。ずいぶん時間が経ったとしても、ほとんどの人はまだ愛田ソラという名前を覚えていた。昔、多くのドラマや映画に出演したし、事件もあったから。
「本当に私について全然知らないんですか」
「それが・・・はい」
「じゃあ、本当に私のこと嫌いではないんですよね?」
「はい」
久しぶりに自分のことを偏見を持たずにちゃんと向けてくれる人と出会った気分だった。
ソラがふふっと笑い声が漏らした。当然、自分のことを知っていると思った。だからきっと自分のことを嫌がるだと思ったのに。
「なんだ私、みっともないんだ」
勝手に誤解したことがとても恥ずかしかった。だが不思議にもなんとなく心が落ち着いた。また涙が溢れてきた。急に緊張が解けたせいか、それとも嬉ししくて涙が出るのかはわからなかった。
でも、この涙がさっきのような感情のせいで出るのではないことだけはわかった。
「うぇ、な、なんでまた」
ハヌルが慌ててまたソラの涙を拭ってくれた。
「僕がすみません、あと会う時にはあなたのことちゃんと調べますから、もう泣かないでください」
ハヌルは今ソラが自分のせいでソラが泣いていると思った。ソラがハヌルの言葉に少し微笑みながら首を横に振った。
「あ、あなたのせいじゃないですから、謝らないでください。こ、これはただ・・・」
ソラが泣きながら何かを話したが、ハヌルはまだあれを聞き取れるほど日本語が上手ではなかった。
こうして約十分後、やっと涙が止まったソラが言った。
「それより袖・・・」
ソラがハヌルの服の袖を指さした。さっきからずっと涙を拭った袖だった。
ハヌルが慌ててソラの顔から手を離した。
「あ、あ! ごめんなさい、今ティシュッシュがないので、とりあえず袖で拭ったんだですけど。あ、でもこれ昨日洗濯したの服だから」
ソラが慌てるハヌルの手を掴んだ。
「そうじゃなくて、服が汚れてしまったじゃないですか」
「はい?」
「私の涙を拭ったせいで、服が」
「ああ、これですか。全然大丈夫ですよ。また洗濯すればいいから」
ハヌルが大したことではないというように微笑んだ。
「そんなことより、もう良くなりましたか」
「はい、おかげさまで」
ソラの返事にハヌルが「よかった」と小さく呟いた。そのあと、立ち上がった。
「じゃあ、僕はお先に失礼します。また会えたら会いましょう」
とハヌルは言い、そのまま遠ざかった。
「え、ちょっ、待ってください。何かお礼でも」
ソラは慌ててハヌルを呼んでみたが無駄だった。結局、ハヌルにまともなお礼も言えなかった。
翌日、ソラはやっぱりこのまま別れるのはなんか違うと思い、ハヌルを会うために公園に向かった。
片手には紙袋を持っていた。昨日のことに対するお礼だった。
ソラは昨日と同じく公園の中に入り、すぐ昨日のベンチに向かった。やっぱりそこにはハヌルがいた。
「やっぱり今日もいますね。よかったです」
ソラがベンチに座っているハヌルに言った。ハヌルゆっくりソラを見上げた。
ハヌルと目が会った瞬間、緊張したせいか、急に胸がドキドキした。素早くこれだけ渡して家に帰ろうと思った。
「あ、昨日の方ですか。今日は昨日より良さそうですね」
「はい、おかげ様で。あとこれ」
ソラが紙袋をハヌルに突き出した。やっぱり近づけば近つくほど、心が落ち着かない。
ハヌルは訳のわからないものに首を捻った。
「これは?」
「有名のケーキ屋のチーズケーキです。昨日のお礼です」
「え? お礼ですか。いやいやいや、お礼はいらないです。僕が大したことをしたわけでもないし」
ハヌルが手を振りながら、ソラのお礼を断った。しかし、ソラは無理矢理にハヌルの横に紙袋を置いた。
「とにかく、昨日はありがとうございました」
ソラは一度頭を下げて感謝の言葉を伝え、すぐ帰ろうと後ろを向いた。足を動かそうとする瞬間、
「待ってください」
ハヌルがソラを呼びかけた。ソラはびっくりしてつい振り返ってしまった
「僕一人で食べるにはちょっと量が多いので、一緒に食べましょう」
ハヌルが笑顔でソラを誘った。
「いや、これはお礼としてあなたにあげるものだから」
「じゃ、もう僕のものだから勝手にします。僕はあなたと一緒に食べたいです、だから早くこっちに座ってください」
ハヌルが隣の席を叩いた。
「でも」
「大丈夫から、早く」
ハヌルがソラを催促した。ソラは断り続けるのも礼儀ではないと思って結局、ソラはやむを得ず、ハヌルの隣に座った。
ハミルが紙袋からケーキと使い捨てフォークを取り出した。ソラにフォーク一本を手渡し、ケーキを食べはじめた。
「そういえば、こう出会ったのもなんかの縁だと思うんですけど、お互い名乗りませんか」
ケーキを食べている最中、ハヌルが聞いた。これにソラはいいというように首を縦に振った。
「じゃあ、僕から僕は李ハヌルと申します」
「李ハヌル? 日本人ではないんですか」
「はい、韓国人です。それじゃ、今度はあなたの」
ハヌルが手を伸ばしてソラを示した。
「ああっ、はい。私は愛田ソラと申します」
「じゃ、ソラさんと呼びます」
「え?」
ソラは急に下の名前で呼ばれてびっくりした。
「ああ、そういえば、日本は下の名前より苗字で呼ぶのが一般的ですよね? すみません、韓国では普通人を下の名前で呼んで、すみません。あと愛田さんと呼っ」
「いや、ソラでいいです。私をソラで呼んでください」
「あ、はい。じゃ、ソラさんも僕をハヌルと呼んでもいいですよ」
「はい、じゃ、ハ・・・」
なんか下の名前で呼ぼうとすると、心が落ち着かなかった。
「私は李さんと呼びます」
「そうですか、ま、楽に呼んでください」
こうしてハヌルはソラをソラさんと、ソラはハヌルのことを李さんと呼ぶことにした。
「あと」
ハヌルが真剣な声で言った。
「経験者として一つ助言させていただきますと、昨日みたいに、そういうことがあると、自分を愛してくれる人と一緒にいると、役に立ちますよ」
ケーキを食べていたソラが顔を上げてハヌルをじっと見つめた。
なぜかさっきよりもっと心臓の鼓動が速くなった。心臓が激しく動悸した。
「もしあなたにそういう人がいないなら、僕がそういう人になってあげます」
ハヌルがケーキを口に運びながら言った。
あれを聞いたソラは思考と体が止まった。そして、その瞬間、ソラはこの感情の正体を気づいた。
『もし私、李さんのことを好きになっちゃったの?!』
感情の正体を気づいた瞬間、昨日のことが次々脳裏によぎった。ハヌルが自分を慰めたこと、涙を拭ってくれたことなど、昨日は正気じゃなかったので、あまり気にしなかったのに、今考えると心が落ち着かない。
「ま、経験者としてですけどね」
ハヌルがケーキを飲み込みながら、言った。だが今のソラの耳には聞こえなかった。
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