十話 初出会い(1)
ソラとハヌルが初めて出会った日の天気はとても良かった。気温もちょうど良かったし、一点の雲もない、青い空だった。
そして、ソラの気持ちも青だったた。
「流石に四年は長すぎたかな」
ソラが街を歩きながら小さく言った。
その日は、ある映画のオーディションに落ちた日だった。昔は結構知名度が高い役者だったが、四年を休んだソラには昔のような知名度がなかった。
もし人たちに見つかるかと思って、マスクと帽子で顔を隠したが、やはり誰も気づかなかった。むしろ、怪しい人になった気持ちだった。ソラがマスクと帽子を外した。
「これで、もう四十回目の脱落か」
また役者の仕事を始めようと決心した日からたくさんのオーディションを受けたが、全部落ちまくった。
ソらはオーディションの審査員に言われたことをじっくり噛み締めた。
ーー愛田さんの演技は古いですね、最近のトレンドに合わないですね
「私の演技、そんなに古いのかな?」
最後の演技が四年前だったから、古い演技だと言われても何とも言えなかった。そして、休んだ四年間、映画やドラマみたいなものと距離を置いたせいで、最近のトレンドに何も分からなかった。
「やはり演技の練習をもっと増やすべきかな」
また役者を始めようと決心した日から一日も欠かさず練習はしていたが、このままじゃダメな気がした。
ソラは両手を握りしめて睡眠を削って練習することに決心した。
「それじゃ、早く家に帰って練習しよう」
ソラが足を早めた。曲がり角をを曲がろうとした時、いきなり携帯が振動した。ソラが一旦止まってポケットから携帯を取り出した。
「誰が電話を・・・姉さん? どうして姉さんが私に電話を」
通話画面に唯の名前が表示されていた。なぜ今会社にいるお姉さんが電話をかけたのか分からないが、なんとなく不安な気持ちになった。一瞬、切ろうかと思ってたが、今電話を切っても、あと家で会うので意味がなかった。
結局、ソラは電話に出た。
「もしもし、あ、姉さん、こんな時間にどうしたの」
「ソラか、お前オーディションの結果は?」
唯の口調が冷たかった。ソラが困ったように手を額に当てた。さっきの不安な予感が当たったのだった。
「・・・ちたよ」
「は? 何だと?」
ソラが大きなため息をついた。
「落ちたよ」
「あ、そう?」
短い返事、唯からの反応はそれだけだった。ソラが目をぎゅっとつぶった。この後の台詞が予想がついた。そして、
「お前、もうやめろ」
その予想は間違ってなかった。
唯は家族の中で雄一ソラが役者の仕事をすることに反対する人だった。それはソラのためだった。昔のこともあるし、ソラももう大人だから夢よりはもう現実を受け入れて安定した仕事をしてほしいという姉さんの心配だった。
もちろん、ソラもそれを知っていた。全部自分のための心配であることをよく知っていた。一見冷たそうな姉さんだが、中は暖かい人であることをソラはよく知っていた。しかし、
「いやだ、もう一度やってみたい」
それにも関わらず、ソラは唯の言うことに従いたくなかった。
「お前、今回で四十四回目の脱落だよ。もう諦めろ」
「四十四回目じゃなく、四十回目だよ」
「今それが重要なの? とにかく役者はもう引退して他の職業探してみろ」
「やだ、私は役者という職業が好きなの」
ソラが歩道のど真ん中で大声を上げた。
「姉さん、もう一度」
「今まで受けたオーディション全部落ちたじゃん。次もどうせ落ちるに決まってる」
「いやっ! 全部落ちたわけでは・・・」
ソラが言葉を濁した。すると、携帯の向こうから唯のため息が聞こえた。
「ソラ、お前ももう大人だろ。そろそろ、将来の職業を真面目に考えないと」
「真面目に考えた結果が役者だもん!」
「最近、事務省から何の連絡もなかったじゃないの! あいつらもお前のこと諦めたんだよ!」
「違うよ。次はもっと私に似合う役を探してくれるってマーネ姉ちゃんが言ってたよ」
「だから、あいつらはもうお前のことがいらないって!」
唯が急に怒鳴り声を上げた。その後、携帯の向こうから、「すみません、すみません」という唯の声が聞こえた。
しばらくして、唯が落ち着いた声で言った。
「もうしっかりしろ。お前はもう大人だ、夢だけで生きていける子供じゃないんだ」
「さっきから、大人、大人、大人、小言はもうやめて」
「小言が言われたくないなら、別の仕事を探して」
唯の声がいつものより冷たく感じた。これは今、怒っているのだった。
二十一年間、唯と一緒に暮らしたソラはすぐに気がづいた。その時は、一歩下がるのが上策だ。だが、ソラはそうしなかった。
「やだ、私は絶対また役者をやるよ! 必ずやるよ」
「なんで、役者なんかを」
唯が携帯の向こうから頭を抱える姿が想像できた。
「お前、昔あんな目にあったのに、また役者なんかやりたいの? わたくしはお前の姉として絶対反対だよ」
「・・・・・・」
ソラが横断歩道のど真ん中に急に立ち止まった。さっきの唯の言葉のせいで、必死に忘れようとした記憶が、一番思い出したくない記憶が思い出してしまった。
「もう切るよ」
「ちょっ、ソソラ?」
ソラの口から出たと信じられないほど冷ややかな声だった。ソラはすぐ電話を切り、横断歩道を渡った。
ソラは俯いて早足に街を歩いた。人と目どころか、顔を見るのが怖かった。街の人が皆、自分を見ているような気分だ。街の人皆が自分の皆が悪口を言っているような気がした。だんだん、息が苦しくなった。
頭の中ではそんなわけないとわかっていた。だが、それでも人が怖い、人の視線が怖い。誰にも会いたくない、話したくない、人の形すら見たくない。
ソラは素早くマスクに帽子を被ったソラは早く家に帰りたいと思いつつ、歩みを早めた。
数十分後、やっと家の前まで辿り着いた。ソラが玄関のドアを開けるために震える手を伸ばした。ドアを開けろうをした瞬間、家の中から莉里と母さんの声が聞こえてきた。その声にソラの手が止まった。
「ここれじゃ、家に入れないんだ」
今、誰にも会いたくないって家族も含めてだった。結局、ソラはドアから後ろ向きに立ち、そのまま走り出した。
「どこでもいいから、誰もいない所に」
ソラが住宅街を走った。できるだけ人の視線を無視しつつ、どこか誰もいないところを探した。約三分後、ソラはある公園の入り口に立ち止まった。
人がほとんど来ない公園として、この町で有名な所だった。理由はわからないが、今のソラにはそういう細かいことを気にする余裕がなかった。
ソラは何の迷いもなく、すぐ公園に入った。
公園に人がいないのを確認したソラはだんだんスピードを減らした。そして、俯いたまま、公園の道なりに歩いた。そんな中、ベンチの端の部分が視界に入った。何の迷いもなくすぐベンチに座った。
「どうしてみんな私のこと嫌いなんだ!」
ソラが顔に両手を当てて大声を上げた。
「私は何もしてないのに、どうして、どうしてぇ!」
ソラが空を仰いで大声を上げた。
「本当に悪いことなどしてないのに、あれは全部誤解なのに、なぜ、みんな私を」
「あの」
その瞬間、きっと誰もいないはずの横から聞いたことない男の声が聞こえてきた。ソラはびっくりして固まった。
「もし愚痴るつもりなら、あっちへ行っていただけますか」
その声の持ち主をその時のソラはまだ知らなかった。この人のことが好きになるということはなおさら。だって、
「うるさくて邪魔ですから」
ハヌルの最初の一言は最低だったから。
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