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第2話 「決着」

 「わ、わたくしが男なんかにッ!」


 トリーシャはなんとか剣を押し返そうと力を込めてくるが、正直言って力比べで負ける気がしない。


 唇なんか悔しさでフルフルと小刻みに震えている。


 「ま、待って! 一度で良いから力を緩めてくれないかしら!」

 「も、もちろん……」

  

 上目遣いに頼み込んでくるトリーシャが気の毒になり、俺は言われた通り剣に込める力を抜いた。


 「はぁっ、はぁっ。あ、貴方、何者なのですか? どんな能力を授かれば男がこんな強くなれますの?」 


 肩で大きく息をしながら、トリーシャは立ち上がる。

 熱でほてった頬が赤く染まり、汗がじんわりと浮かんでいる。


 「別に大した能力では無いです」

 「嘘ッ! なら何故わたくしの『高速移動』の能力を防げたのですか!?」

 「それは──」


 トリーシャが疑問に思うのは当然だ。


 『男は女より弱い』

 これは神が定めた、絶対の掟。

 では何故、この世界の男女には圧倒的な格差があるのか。


 その答えは10歳になると教会から授かる、特殊能力にある。


 フェリアンナ大陸の人間は例外なく、10歳になると教会にて特殊能力が授けられる。

 

戦闘に特化したモノや商売に活用できるモノなどその効果は様々だが、重要なのはたとえ同じ能力でも男女では激しい差が産まれるという点だ。


 例えば同じ炎を操る能力に目覚めたとしよう。

 この場合、男は精々指先から小さな火花を出すくらいしかできない。


 反対に女の場合、訓練を積まない村娘でも人1人簡単に消し炭にできる。

 これが王都の上級騎士ともなれば、街1つ火の海に包む事も可能だろう。


 このように男女には明確な差が存在し、世界のパワーバランスは大きく女性優位に傾いているのだ。


 「もう良いですわ……。さっきのはただの奇跡。ならば今度こそ、貴方を貫いて差し上げます!」

 

 ギンッと大きく眼を見開いたトリーシャは、俺の周囲一体を高速で移動し始めた。

 

 「も、もうやめましょうトリーシャさん!」 


 俺の言葉は届かず、金色の閃光と化したトリーシャのレイピアは雷の如く俺へと迫った。


 ──そう、迫るのを俺は見えているのだ。


 ガキィン! ギィン!! 


 幾度も鋼がぶつかり合う。

 その度にトリーシャは速度を上げていく。こんどこそ、今度こそはと。

 

 その想いが募れば募るほど、俺は単調になっていく彼女の動きを容易く捌けるようになってしまっていた。


 そして次の瞬間。  


 「これで終わりだ! トリーシャ!!」

 「ッ────!!」


 迫り来る彼女のレイピアをかち上げると、その服を掴み地面へと仰向けに押し倒した。


 

 俺が馬乗りの状態で、鼻の先が触れ合いそうな距離で互いに息を切らす。

  

 ここで俺はようやく気づいた。

 トリーシャの瞳から涙が一筋流れるのを。


 俺は半ば無意識的に、その涙を優しく指で拭う。


 それがきっかけだったのだろうか、トリーシャはせきを切ったように大粒の涙を流して泣きじゃくりだした。


 「──ッ。ひぐっ。ううぅ〜。わたっ、わたくしを呼び捨てなんて、お、男の癖に生意気っ、ですわ! うわぁあん!」


 こうして高速移動の能力を持つ女騎士トリーシャは、世界で初めて男に敗北した女となった。

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