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その29 母さんと便利グッズ
お母さんはキッチン雑貨が好きだ。
普段は優柔不断で夕食を決めるのすら悩むが、雑貨は欲しいと思ったとたん買っちゃうこともある。
「みてみて~。これ昼間テレビで特集してたの。これで今日からお料理が楽になるわ!」
私が学校から帰ると、お母さんが鼻唄まじりに戦利品をお披露目する。
擦るだけで根野菜の皮がむけるざらつきグローブ。
いよかんの皮に切れ目をいれるみかんカッター。
置場所に困らない自立型しゃもじ。
他もろもろ。
「あはは、すごいねー。超便利そー」
「そうでしょそうでしょ」
私が同意すると満足して、お母さんは買ったグッズをキッチン雑貨のかごにのせる。
たぶんこの戦利品も、一週間しないで飽きて埃をかぶる。
お父さんとお母さん、こんなところは似たもの夫婦なのだ。
私はオブジェと化しているハンディタイプのジュースメーカーを横目に、こっそりため息をついた




