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その24 母さんと悪魔のささやき
お母さんは優柔不断だ。
良くも悪くも、これと言うひとつを決めるのに時間がかかる。
GW割引セールという名の悪魔の声に負け、私とお母さんはいろんなフレーバーがうりのアイス屋に入った。
「うーん……レモンとヨーグルト……それとも抹茶とチョコ」
予想に違わずお母さんがフレーバー一覧の書かれた立て看板の前にしゃがんで十五分が過ぎた。
「ねぇひとつ提案があるんだけど」
「……なに?」
嫌な予感がするが、とりあえず返事する。
「わたしはチーズケーキ味とティラミスを選ぶから、ラムレーズンとヨーグルトを注文してくれない?」
「やだよ」
仲良く分けあおうと言いつつ、“四つの味全部食べたい”という本音が見え見えだから、うんと言いたくない。
お母さんは諦められないようで、お父さんと兄さんに同じ提案をする。
ダイエットはどうしたの。という私の突っ込みを、お母さんは聞こえないふりした。




