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その2 父さんとウォーキング
私のお父さんはとにかく影響されやすい。
今日はなんたらウォーキングが脂肪燃焼にいいという番組をみて、ほこりをかぶっていたスニーカーを引っ張り出してきた。
夏休みだし暇だろ、と朝5時にたたき起こされ、私はしぶしぶおともをすることになった。
夜が明けて間もないから、お母さんと兄さんも眠そうに目をこすっている。
「どうだ。たまには家族みんなでさんぽするのも悪くないだろ」
スポ魂ドラマの見すぎだ。お母さんがお腹の肉をつまんで頷く。
「そうねぇ。わたしも健康診断引っ掛かりそうだし」
兄さんは付き合いきれない、と一人でずんずん先に行き、もう姿が見えない。私もやる気がでないから返事しない。
「いい若者がだらしない。さあ、あの夕日に向かって走れ!」
どこかで聞いたような台詞と共に、お父さんが土手を走り出す。
突っ込むべきだろうか。
お父さん、あれは朝日だ。