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その11 母さんとガーデニング
私のお母さんは、最近ガーデニングにこっている。
ガーデニング入門書と花の苗を買い漁り、さして広くもない家の庭は鉢植えと地植えの植物でジャングルと化している。
「お母さん、これなに?」
「それはローズマリーよ」
「じゃあこっちは?」
「それは三つ葉。そっちのはフェンネル」
日曜日に草取りの手伝いをして、雑草と間違えて抜かないようお母さんに確認する。
お母さんに聞けば、泥んこの軍手で額の汗をふきながら答える。
私は言われたものを抜かないよう気を付けながら、雑草を抜くのに専念する。
それにしても気のせいだろうか。ハーブしかない。買い物に付き合ったとき買っていた花はいずこ。
「お母さん、前買った花の苗は?」
「ああ、あれ? 枯れちゃった。ハーブならご飯に使えるし便利よね。庭で採れれば安上がり」
気のせいじゃなかった。
やけに花が少ないと思ったら、花壇が菜園に変わっていた。