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その1 父さんと健康アイテム
過去、小説家になろうに置いていた賞編集です。
全話が400文字未満ほのぼのホームコメディなのでお気軽にどうぞ。
私のお父さんは影響されやすいひとだ。
染まりやすいというか、なんというか。
納豆がガン予防になるというテレビ番組を見れば、その日の夕食に早速納豆が登場する。
冷蔵庫も冷凍庫も、買い置きの納豆がみっちり詰め込まれる。
今年で還暦なのもあり、ビールっ腹を気にして健康をうたう番組に目がない。
そんなお父さんが、今日も今日とて新しい健康アイテムを見つけてきた。
「見てくれ、星野うどん屋のわき水だ。会社の関さんのおすすめなんだ。これを飲むともう水道水には戻れないだろ?」
「そうかもね」
お父さんのノリに慣れっこの私はそっけなく返す。
そんなことより宿題が先。高3だから健康水より勉強だ。
十八リットルのタンクを両手に下げて満足気だから、あえて口に出すまい。
(父さん。その健康にいい水でカップ麺を食べるのはどうかと思うよ)